56:天性の女たらしね。
勝負は瞬時についた。
しかも四聖獣の制圧の仕方は美しい。
敵である霊獣の体液が吹き飛ぶとか、体の一部がちぎれるとか、そんなことは一切ない。
まさに瞬殺。
スコルピオンは炎獣により、一瞬のうちに消し炭になった。
リンカルスは風獣により、鎌首をもちあげる間もなく窒息死した。
オサムシは氷獣により、召喚とほぼ同時に氷漬けにされた。
デスアダーは雷獣により、ジャンプと同時に雷撃を受け絶命した。
もはや聖獣を前に、相手にならない、という感じだ。
これでは何を召喚しても無駄だろう。
でもアンジェラは諦めない。
その後も何体もの霊獣を召喚し、その結果、アンジェラ自身の魔力の限界が近づいていた。
それはそうだろう。
いくら『奇跡の子』であっても、これだけの霊獣を召喚すれば……。
正直、図鑑が一冊できそうなぐらいだ。
クリスはさっき「転換魔法展開 大地のエネルギーを魔力へ変換」と詠唱していた。これは非常に高度で、使えるのは大魔法使いのみと言われる魔法だ。自然界に存在するエネルギーを魔力に変換し、自身に取り込むという、とんでもないスケールの魔法。
おそらく、『奇跡の子』であるアンジェラも、この魔法を使えると思う。でも既にこの辺りにあるエネルギーは、間違いなくクリスがすべて魔力に変換し、自身に取り込んでしまっている。
こうなるとアンジェラは、体を休め、魔力の回復を待つしかない。
「アンジェラ、すまない。『奇跡の子』としては、あなたが年上で先輩だ。だが僕はここに3年間閉じ込められていた。だからここは僕の本拠地も同然。君に勝ち目はない。運命を受け入れて欲しい。魔力剥奪を拒むなら、君は拘束され、ギリス王国へ戻すことになる。ギリス王国へ戻れば……。また君は権力者たちに振り回されることになる。それでいいのか?」
「いいわけないでしょ。でもね、あたしには魔力の強さしかない。それを取り上げられたら、終わるわ」
不貞腐れたように、アンジェラは腕組みをした。
「そんなことはないと思うが。魔力が強くても、魔法を使うためには、魔法について学ばなければならない。君は学校にも行かず、独学で多くの魔法を学んだ。魔力以外にも素晴らしい能力を持っていると思う」
アンジェラはニヤリと笑う。
「クリス、あんたは天性の女たらしね。愛するレディがいるとか言っておきながら、私を持ち上げるようなことを言う。そんなことしていたら、そちらのレディは、常に気が休まらないわね」
クリスは私の耳元に顔を近づけ、「ニーナ以外を愛することはないから。安心して」と当然のように甘く囁く。熱い息もかかり、正気を保つなんて……無理ゲーです! こんな風に囁かれれば、どんなことだって「はい、そうですね」としか返事できないのでは!?
「あんたらバカップル!? 緊張感がなさすぎ。人のことバカにしている!?」
私の耳元から顔をはなしたクリスは、アンジェラを見て微笑む。
「それは失礼した。それで、アンジェラ、魔力剥奪と拘束されて帰国、どちらを選ぶ?」
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本日は2話公開です。お楽しみください(^^♪

























































