55:あたしを選びなさい!
「クリス、アンジェラを拘束できた!?」
「ニーナ、普通は魔法の発動には呪文の詠唱が必要だろう? でも『奇跡の子』はね、頭の中で念じても、魔法を展開できる」
「!?」
バリンと氷が砕ける音がした。
アンジェラの方を見ようとすると、クリスが再び目隠しをする。
「ふん。何よ、この甘い防御魔法は。その程度の魔力の女と結婚したって、たいした魔力の子供は産まれない! あたしを選びなさい、クリス! そうすれば最強の子供が産まれるのだから」
「アンジェラ、君がそんな思考になってしまったのは、悲しい過去が関係している。それには同情するよ、同じ『奇跡の子』として。もし僕も女性としてギリス王国で生まれていたら、君と同じ目に遭った可能性があるからね」
ゆっくりクリスが私の目から手を離す。
今のクリスの言葉に、今度はアンジェラの顔が真っ赤に変わっていた。
「あたしの過去を知った上で、それでも、その女を選ぶの……」
アンジェラの瞳は怒っているが、なんだか悲しくも感じる。
一体、この魔力も強い美女の身に、何があったのだろう……?
「すまない。君に会うよりずっと前から、僕の心はこのレディの虜だ」
!!
クリスは先程から、「僕が生涯愛すると決めた、たった一人の相手」とか「僕の心はこのレディの虜だ」とか、とんでもなく甘い言葉を口にしている。
どう考えてもシリアスな場面なのに、この場に立っているのが困難なぐらいメロメロになっていた。
「そう……。ならいらない。あんたも、その女も! 召喚術式展開 ス」
「アンジェラ、もう遅い」
詠唱を始めたアンジェラを、クリスが遮った。
「はあ?」
「アンジェラ、君は僕のレディの防御魔法に気をとられている間に、四聖獣の射程圏内に入ってしまった。攻撃、だけじゃない。分かるだろう? 四聖獣の力を。君なら」
クリスの言葉を聞いた瞬間、アンジェラの瞳が驚きで大きく見開かれる。
「まさか……、でも、それは」
「まずここ、黒い森は、メリア魔法国の領土だ。そして僕の肩にいるのは、国王陛下の守護霊獣だ。つまり、アンジェラ、君は他国の領土へ不法に立ち入っている。そして陛下の守護霊獣がここにいる時点で、君の魔力剥奪の許可は出ている」
えええええええ!
このハヤブサ、こ、国王陛下の守護霊獣!?
やけに毛並み……羽に艶があると思ったけど、まさか……。
そのことにも驚いたが。
四聖獣に魔力を奪う力があるなんて……知らなかった。
マジパラでも明かされていない設定。
それも当然か。
そもそも恋愛ゲームのマジパラで、魔力剥奪のようなシリアス展開はない。
「アンジェラ、君の過去を知らなければ、射程圏内に入ったと同時に四聖獣に攻撃を命じていた。でも君の過去を知っていたから、こうやって話している。魔力がなければ、もう無理強いさせられることはない。苦しみから解放される。魔力剥奪に応じるなら、剥奪後、魔力を持たない人間が暮らす国へ出国できるよう、手はずを整えよう。魔法とは縁のないただの人間として、やり直すといい」
「そんなお情けなんていらない」
吐き捨てるように叫んだアンジェラは……。
「召喚術式展開 スコルピオン <一撃必殺>」
「炎獣、スコルピオンを制圧せよ」
「召喚術式展開 リンカルス(毒蛇) <激毒壊死>」
「風獣、リンカルスを制圧せよ」
「召喚術式展開 オサムシ(甲虫) <断裂蹂躙>」
「氷獣、オサムシを制圧せよ」
「召喚術式展開 デスアダー(毒蛇) <速毒即死>」
「雷獣、デスアダーを制圧せよ」
聞くだけでも恐ろしい攻撃特性を持つ霊獣を、アンジェラが続々と召喚している。
サソリ、甲虫、毒蛇……どれも巨大で、見た目からして鳥肌が立つ姿だ。
しかしクリスは、アンジェラが召喚するそばから、四聖獣に攻撃指示を出していく。
そして……。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「天性の女たらしね。」を公開します。
ブチ切れた美女が暴走中!!
そして明日小さなサプライズ更新ありです。
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