50:超優秀な守護霊獣だった!?
マジパラの召喚場面も思い出し、かっこよく唱和してみたが……。
雷獣は現れない。
……まあ、そうだよね。私如きの魔力で召喚できるわけがない。
なにせ聖獣なのだ。
霊獣でさえ、召喚できない私ができるわけがない。
それでも。
諦めない。
「召喚術式展開 雷獣 <雷轟電撃>」
!!
アマガエルが足元の円陣に降り立つと……。
白く輝いていた円陣に、碧い輝きが加わった。
これって……。
魔術干渉!?
他人の守護霊獣が、私に魔術干渉なんて、できないはずでは!?
あ、でも、美女の守護霊獣である黒猫のキットゥは出来ていた。
まさか、アマガエル、超優秀な守護霊獣だった!?
「くうん」
銀狼が空を見上げる。
晴れ渡った青い空の一角に、グレーの雲が広がる。
え、もしや、召喚できる……!?
だが。
グレーの雲は、風に吹かれ雲散霧消してしまう。
でも、アマガエルが魔術干渉してくれたことで、召喚の兆しがあった。
もう一度、やってみよう!
再びクリスタルを手に呪文を唱える。
「召喚術式展開 雷獣 <雷轟電撃>」
「!!」
驚いた。
上空を飛んでいたハヤブサが急降下したと思ったら、円陣に着地した。
その瞬間、円陣は白い光、碧い光、琥珀色の光に輝く。
もうビックリ! ハヤブサも守護霊獣だったの!?
驚きつつ、空を見上げると。
グレーの雲が急速に広がっている。
さっきよりも広く大きい。
「あ!」
一瞬、稲光が見えた!
でも……。
これまた雲散霧消してしまう。
「もう一度、やってみよう!」
「ゲロゲロゲロ」「キッ、キッ、キッ」
銀狼も遠吠えで応援してくれた。
◇
気付くと、空に茜色が混じり始めている。
もうすぐ日没が近い。
結局。
何度も何度も試した。
雷獣では無理かと、他の聖獣も試した。
でも召喚は……できなかった。
それでも。
諦めない。まだ陽は沈んでいない。
「もう一度」
「きゅうん」
銀狼が、鼻を頬に押し付けてきた。
「ちょ、待って」
銀狼の頬に手を当て、押しとどめようとするが……。
私の制止を無視して、銀狼はぐいぐい鼻を押し付けてくる。
「も~、どうしたの!?」
「きゅうん」
急にこんなに甘えてくるなんて、本当にどうしたのだろう?
「もう、落ち着いて、これじゃ……」
あ、あぶない、後ろにひっくり返るところだった。
なんとかこらえたつもりが、「くぅん」と銀狼の鼻先に押され……。
ネモフィラの花畑の中に、尻もちをついてしまった。
その瞬間。
すっと力が抜けた。
そのまま大の字で、花畑に寝転がっていた。
「きゅうん」
銀狼は、寝ころぶ私の顔に鼻をすりつけてくる。
そうか。
もしかして。
最期のお別れをしたいのかな。
これだけやっても召喚がうまくいかないから。
オリエンタル美女が来たら、こんな風に甘えられないもんね。
3年前に18歳だったということは、今のクリスは21歳か。
そっか。
それなら……。
最期にキスぐらいしたいよね。
例え銀狼という姿であっても。
「クリス。私ね、実はここではない世界から転生してきたの。いわゆる生まれ変わり、ってやつね。前にいた世界では22歳で死んだから、キスなんてしたことがない。だからこれが正真正銘のファーストキス。うまくできないかもしれない。だから……というか、噛みついたりしないでね」
なんでこんなこと、明かしているのかな。
クリスには、最期に知ってもらいたかったのかな。
両腕を伸ばすと、銀狼は「きゅうん」と一声鳴いた。
そして……鼻ではなく、口を近づける。
うわぁ、口、おっきい。
まさかファーストキスがウルフになるなんて。驚き。
そのまま両手を大きな口に添え……。
その時、地平線に太陽が没した。
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