49:物理的にも勝てるかもしれない!
花畑に降り立った瞬間。
「すごい」という言葉が思わず出そうになり、それを飲み込む。
学園の敷地にあったネモフィラの花畑を見つけた時、「すごい」と感嘆していたら、オリエンタル美女が現れたからだ。
だから今回は。
「とても美しいわね。まるで花の湖の中に、いるみたいですわ」
なんとなく悪役令嬢っぽく言ってみた。
でも本当にここまで広い空間で咲いていると、湖みたいに思える。
「きゅうん」
花の香りを嗅ぐように、地面に鼻でふんふんしていた銀狼が、甘えるような声を出した。
なんだろうと思い、近づくと。
再び地面に顔を戻し、私を見る。
「?」
私が手を差し出すと……。
口にくわえていたものを、手の平に落とした。
白いクリスタルの欠片だ!
「すごい! なんだか宝探しをコンプリートしたみたいね」
嬉しくなり、前日に手に入れていたクリスタルの欠片を取り出す。
氷の洞窟で拾った碧いクリスタルの欠片。
大瀑布で拾った透明なクリスタルの欠片。
溶岩の側で拾った赤いクリスタルの欠片。
ネモフィラの花畑の白いクリスタルの欠片。
どれも太陽の光を受け、キラキラ輝いている。
あれ……?
クリスタルの欠片の中に、何か文字が見える。
一つずつ太陽にかざし、息を飲む。
「まさか、これって……」
マジパラのオープニングムービーを思い出す。
王立イエローウィン魔法学園があるメリア魔法国は、4体の聖獣により守られている。
王都に危機がある時、聖獣が現れ、国を守る。
でも今は平和な時代。
王都には美しい花が咲き誇り、新入生たちが
入学式の開始を、今か今かと待ちわびている――。
そう、このオープニングの、4体の聖獣が登場するシーン。
このシーンで、文字が浮かぶクリスタルと、聖獣の姿が紹介されるのだ。
碧いクリスタルには「氷」の文字と氷獣。
透明なクリスタルには「風」の文字と風獣。
赤いクリスタルには「炎」の文字と炎獣。
白いクリスタルには「雷」の文字と雷獣。
そしてこのクリスタルがあれば、四聖獣を召喚できる……!
「クリス、すごい! このクリスタルはね……」
私が興奮気味に説明するのを、銀狼は黙って聞いている。
頭の上に鎮座するハヤブサも、静かに聞いてくれている。
私の肩に移動したアマガエルも、鳴くことなく聞いてくれていた。
「もしも、もしもよ。四聖獣を召喚できたら、あのオリエンタル美女に、物理的にも勝てるかもしれない!」
私は制服のシャツをめくる。
前腕には、ノヴァ伯爵家のフォックスの紋章が刻印されている。
本当は……守護霊獣がいると、この紋章にその姿が一緒に刻まれる。でも私に守護霊獣はいないため、紋章の絵柄はフォックスのみだ。
たかが紋章。気にしない、気にしない。
気持ちを前向きに、ウィルがやっていた召喚の様子を思い出す。
決して守護霊獣の召喚の時は思い出さない。
成功体験につながりそうな記憶を呼び覚ます。
「ニーナ・コンスタンティ・ノヴァが真名を賭して命じる」
足元に召喚のための円陣が現れる。
私は銀狼が渡してくれた、白いクリスタルを手に詠唱する。
「召喚術式展開 雷獣 <雷轟電撃>」
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「超優秀な守護霊獣だった!?」を公開します。
ニーナの挑戦が始まりました。
それでは明日もよろしくお願いいたします。
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