41:なんで!?
必ずまた戻って来る。
そう心の中で何度も繰り返す。
そして。
道へ出るため、歩みを進める。
もうあと一歩で道へ出られるという場所に来た時。
馬車が見えてきた。
馬車についた明かりが、ゆっくりこちらへと近づくのが見える。
こんな偶然があるだろうか?
私はチラッと後ろを振り返る。
銀狼も早く行けと促すように、立ち上がった。
すぐさま道へ飛び出した。
「え」
道へ飛び出したつもりだったが、私の体は森の中だ。
すぐ目の前に道は見えているのに。
あと一歩踏み出せば道に出られるのに。
その一歩を踏み出しているのに、道へ出ることができない。
なんで!?
そうこうしているうちに、馬車が少し離れた場所で止まった。
馬車から誰かが降りてくる。
「すみません! 助けてください!」
思いっきり叫ぶが、馬車から降りてきた人物は、こちらを見ようともしない。
「すみません、聞こえますか? ここです、ここ!」
シルクハットを被り、マントを着た男性は、懐から何かを取り出すと、森の方へ目掛けて投げた。
「ウォウォーーーーーーーーン」
銀狼が遠吠えのような甲高い鳴き声を発すると……。
男性はビクッと体を揺らし、一目散で馬車に乗り込んだ。
「待って、待ってください! ここにいるんです!」
馬車を追うように駆け出していた。
「お願い、行かないで!」
馬車が止まっていた位置あたりに着く頃には、馬車は遥か彼方に走り去っていた。
銀狼の声は届いていた。
でも私の声はあの男性には届いていない。
黒い森からは……逃げ出せないの……?
「ケロケロケロケロケロ」
突然の声に驚き、声のする方向を見ると。
決して明るくはないこの森の中でも、ひと際目立つ色のアマガエルがいる。
「もしかして、守護霊獣を捨てに来た……?」
草むらに鎮座する、私の手の平よりさらに小さいサイズのアマガエルの方を見る。
目が半分閉じていて、眠そうな顔をしている。
「こんな可愛いのに、捨てるなんてひどいね」
その瞬間。
アマガエルがジャンプしたと思ったら、私の肩に乗った。
「え、何、どうしたの!? 私と一緒にいたいの?」
返事代わりなのか、碧い色のアマガエルは「ケロケロケロケロ」と鳴き始めた。
「くぅん」
振り返ると、銀狼が私のそばにやってきていた。
私はその鼻先に手を伸ばした。
「ごめんね。助けを呼んで、ここに戻って来るつもりだったのに、私も出ることが出来なかった」
すると銀狼はなぐさめるように、鼻先を私の手にこすりつけた。
「! 待って。私は出られなかったのに、この子はこの森の中に入ってくることが出来た。出ることは出来るのかしら?」
私は肩からアマガエルをおろし、手の平にのせると、道の方へ向けた。
すると。
アマガエルがジャンプすると、普通に道へ着地していた。
「どうして!? この守護霊獣は出られるのに。……そっか。きっとクリスと私は、オリエンタル美女に何か魔法をかけられているのね。この森から出られないようにって」
「くぅん」
「仕方がない。こうなると帰る場所はあの縦穴しかないわね」
銀狼が申し訳なさそうに首を垂れる。
「あなたのせいじゃないから。気にしないで。帰りましょう」
「ケロケロケロケロ」
アマガエルが再び私の肩に戻ってきていた。
「え、あなたも私達と一緒にいたいの?」
「ケロケロ」
いたいのか。
でも確かに、この子はパートナーである人間に捨てられた。
行く場所なんてないだろうし、それどころかこんなところでウロウロしていたら……。
「ねえ、クリス、あなた守護霊獣を喰らうって街で噂されているけど、本当?」
銀狼はとんでもないという感じで首をふる。
「噂だったのね。……ねえ、でもこの森に今みたいに守護霊獣を捨てる人がいるのよね? この子以外の守護霊獣を知らない?」
「くうん」
頷いて、悲しそうに鳴いた。
知っているが、どこにいるかは分からないということか。
捨てられた守護霊獣は自由に動ける。
鳥類の守護霊獣だったら、とっくに遠くへ飛んでいっているだろう。
それ以外の霊獣であっても、黒い森は広い。
どこにでも行けるはず。
それにこの森に留まらず、もっと遠くへ移動する可能性だってある。
「では、新しい仲間も増えたということで、帰りますか」
「くうん」
「えっと、君は落ちると心配だから、ポケットの中ね」
「ケロケロ」
私はアマガエルをポケットにいれ、銀狼の背に乗ろうとしたのだが、その瞬間「ぐるるる」と音がした。
また何か新たな動物が、と思ったら、それは私のお腹の虫だった。
恥ずかしい……。
誤魔化すように咳払いをして、銀狼の背に乗った。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「大好きなのだという気持ちが伝わってきた」を公開します。
銀狼クリスの優しさが溢れます。
それでは明日もよろしくお願いいたします。
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