特別編:ホリデーシーズンのお楽しみ~その2~
ホリデーシーズン二つ目のお楽しみ。
それはホリデー舞踏会!
ブルンデルク内のホテルでは、毎夜のようにこのホリデー舞踏会を開催している。そしてウィンスレット辺境伯家には、山のように招待状が届いていた。そしてこの日、参加したのは……。
ブルンデルクで超がつく有名ホテル「フルータホフ」! 働いているスタッフ、部屋の作り、アメニティ、サービス。そのどれをとっても五つ星であることは、間違いないホテルだ。
ホリデー舞踏会と言えば、男性は黒のテールコートが定番。代わりに小物で男性陣はオシャレを楽しむ。ウィルは深緑色のタイをつけ、アンソニーは白のタイにサファイアの飾りをつけている。アミルはルビー色のポケットチーフ、クリスはライラックの花モチーフのラペルピンをつけていた。
私もクリスにプレゼントされた、ライラックの花モチーフのペンダントとイヤリングをつけていたので、これはまさにお揃いコーデだ。
ちなみに今日の私のドレスは、白地のドレスのスカート部分に、ライラックの花が大胆にデザインされている。沢山のビジューも散りばめられ、とってもゴージャス! 身頃には繊細なレースでライラックの花が刺繍され、今日はもうクリスの瞳一色に染め上げられた気分だ。
一方のジェシカは、光沢のあるモスグリーンのサテン生地に、黒のフリルとリボンが飾られたシックで大人っぽいドレス。ウィルと並ぶと本当にお似合いで、素敵だった。
会場となっているホールは、目がチカチカするぐらい豪華絢爛。
天井、壁、床には黄金の装飾が髄所にあしらわれている。そしてクリスタルガラスが煌めくシャンデリアは大ぶりで、文句なしの存在感。そこに色とりどりのドレスを着た女性と、黒のテールコートの男性が沢山いて、実に華やかな雰囲気だ。
「ニーナ、ダンスを踊ろうか?」
クリスに誘われ、ダンスを踊りながらみんなの様子を確認すると。ジェシカはウィルと笑顔でダンスをしている。アンソニーは令嬢に囲まれ、ダンスどころではない。アミルは軽食スペースで食事を満喫中。
二曲連続でダンスを終えた後、大輪のバラが飾られた一画で休憩することにした。
「ニーナ、ここで待っていて。飲み物を取って来るよ」
「え、私も一緒に行くわ」
「大丈夫だよ」
優しく微笑むクリスにキュンとしながら「分かったわ」と大人しく待つことにした。すぐそばの窓から外を見ると、エントランスのスロープが見え、植え込みに飾られたホリデーシーズンの飾りがランタンに照らされ、キラキラと輝いている。夜はこれからとばかりに、沢山の馬車がスロープを上ってきていた。
「!」
窓ガラスに見知らぬ貴族の令息の姿が映る。
「レディ。お一人ですか。よければ、ぼくとダンスはいかがでしょうか?」
二重のたれ目で、なんだか男性フェロモン全開の、二十代前半と思わしき令息が、そこにいる。
「ごめんなさい。私はパートナーがいますので」
「でも今は一人ですよね?」
「それは飲み物を取りに行っているからです」
「ではそのパートナーが戻るまで、一曲いかがですか?」
「結構です」「そう言わずに」「いえ、踊りません」「一曲だけです」
フェロモン全開男は、私が既婚者であると言っても食い下がる。なんでも私のブロンドの直毛ストレートが珍しく、一目惚れしたという。髪フェチですか!?と辟易していると。
「本当に、美しい髪です」と、フェロモン全開男が私の髪をひと房手に取り、口づけをした。さすがにこれには頭に来たその時。
「僕の妻に、何か用ですか?」
クリス……!
振り返った令息は、自身より背が高く、テールコートをビシッと着こなし、非の打ち所がない完璧クリスを見てたじろぐ。しかもクリスは実に優雅に微笑んでいるが、その瞳は氷点下。相手を氷像に変えるぐらいの冷たい眼差しに、フェロモン全開男の顔は分かりやすくサーッと青ざめる。見ている私も心臓が凍えていた。ユーリアと対決した時以来で、クリスが大激怒している……!
「僕はクリストファー・ウィルヘルム・リーヴス、コンカドール魔術学園の3年生です。そして彼女は私の妻のニーナ。僕の最愛です。……あなたは初めて見る顔ですが、その紋章は、アルデンテ男爵家のものですよね。これ以上しつこくされるならアルデンテ男爵に正式に抗議させていただきますが」
氷剣のような冷え冷えとしたクリスの声音に、アルデンテ男爵家の令息は凍り付く。さらに額に玉のような汗をかき、口をぱくぱくさせていたが、なんとか言葉を絞り出した。
「だ、大魔法使い見習いのリ、リーヴス様……! 大変申し訳ありませんでした」
床に頭がつくかの勢いで、アルデンテ男爵家の令息が、体を折るようにして謝罪をする。対するクリスはさらに冷たく言い放つ。
「僕ではなく、妻に謝罪してください」「本当に申し訳ありませんでした!」
アルデンテ男爵家の令息は私にも深々と頭を下げ、謝罪の言葉を続けた。
「ニーナ、どうする? アルデンテ男爵家に正式に抗議するかい?」
「ううん。大丈夫。本人も二度と私にもクリスに近づかないと言っているわ。それにしつこく令嬢に声をかけないようにすると誓ったから」
「優しいね、ニーナは。……ではアルデンテ男爵家のご令息。今すぐここから立ち去っていただけますか」
クリスがピシャリと言うと、彼は脱兎のごとく勢いで「かしこまりました!」と叫び、ホールから出て行った。
その姿を見送ると、クリスは「ニーナを一人にした僕のミスだ。ごめんよ、ニーナ」と言うと、私をふわりと抱き寄せる。飲み物を一人で取りに行ったクリスは、沢山の令嬢に取り囲まれ、なかなか戻って来ることができなかったという。その点からも、私と離れたことを、とても後悔しているようだ。
「もうニーナのそばを離れない」と言ったクリスは、私の素肌が露出している肩に、自身の唇を押し当てる。柔らかく潤いのあるクリスの唇を肌が感知し、一気に心臓がドキドキし始めた。
「ク、クリス……!」
驚く私がクリスを制しようとすると。
伸ばした私の手をクリスはぎゅっと握りしめ、今度は「ちゅっ」と音を立て、鎖骨にキスをする。さらに握りしめた私の手の甲にも口づけをして、妖艶に輝くライラック色の瞳で私を見た。
その瞬間、完全に腰砕け。でもクリスはしっかり私を抱きとめる。「ニーナ」と甘々で私の名前を呼んだ後は……。ここが舞踏会の会場であることを忘れてしまったの!?という勢いで溺愛モードが発動され、首筋、頬、耳朶へとキスのシャワーを降らせる。
私は意識が吹き飛ぶ寸前! みんなに見られてしまうのでは!?などと言うこともできず、完全に力が抜け、クリスに身を任せることに。嫉妬したクリスは反動で溺愛モードになることを学習した、ホリデー舞踏会だった。
お読みいただき、ありがとうございます!
【ご報告と御礼~その2~】
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ぜひご覧くださいませ~
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→全7話

























































