特別編:ホリデーシーズンのお楽しみ~その1~
期末考査の返却が終わったら……。
もう後は待ちに待ったホリデーシーズンへ突入!
ホリデーシーズンに入ると、巨大噴水広場にはホリデーマーケットが出る。約一ヵ月間、お店はそこにあるし、この時期になると雪もちらつく。よってマーケットのお店は、三角屋根の丸太小屋で結構、しっかりしている。そこではニューイヤーの飾りなど雑貨は勿論、ホリデーシーズンで食べるスイーツ、日持ちするパウンドケーキ、焼き立てのソーセージ、大人が喜ぶホットワイン、子供はホットジンジャーエールで体を温める。
例年は週末に遊びに行くのだけど、今年はそんなことできない状態になっていた。なぜかって。夏休みに続き、なんとこのホリデーマーケットに、クリスの支持者達がお店を出店したから!
あのプルミエ・ブルタンもテイクアウト専門ショップとして登場し、王都で大人気のフラワーショップはリースを販売、王室御用達のチョコレート店はホリデーギフトチョコを用意して出店している。他にも東の国の食器をお店で採用するなど、新進気鋭のアニカが、婚姻届けを出したその日に泊まったクロンシュホテルとコラボし、ホテルでホリデーシーズン限定メニューを出していた。
ホリデーシーズンになると、みんなブルンデルクから王都へ行くのに。今年は王都から沢山の貴族がブルンデルクへ遊びに来ていた。おかげで週末はホリデーマーケットが大混雑。よって放課後、制服姿でホリデーマーケットへ繰り出したのだ!
時間的にもうおやつの時間なので、食べるのはおいしそうなスイーツ。
濃厚なアーモンドフィリングがたっぷり詰まった、発酵バターの風味豊かなパイ生地がたまらない「ホリーデー・ガレット」というケーキを購入。飲み物は勿論、ホットジンジャーエール!
ベンチにはウィルとジェシカ、アミルとアンソニー、クリスと私でそれぞれ二人ずつ座った。
「これは美味しいな。王都でもホリーデー・ガレットは沢山売っている。しかしここまでの味のものは、初めて食べたかもしれない」
ウィルが感動し、その様子を見たジェシカは可愛らしく笑顔で答える。
「夏は王都へ遊びに行くのですが、ホリデーシーズンはブルンデルクで過ごしたくなるのは、このホリーデー・ガレットが絶品だからかもしれません」
「なるほどな。ジェシカのその気持ち、よく分かるよ」
そこで笑いあった二人だけど……。
ウィルがジェシカの口の端についたパイ生地の欠片をとってあげて、その瞬間、見つめ合う二人は……。
もうこれは間違いない! 二人は相思相愛だと思う。でもお互いに照れ、ウィルは頭をかき、ジェシカは視線を膝にのせた守護霊のスノーボールに向けている。
なんだか初心でいいな~。
「アンソニー、こんなうまいケーキ、初めて食べた! ギリス王国にはこんなケーキはないぞ。それになんで通年販売しないんだ!?」
アミルがホリーデー・ガレットを食べた瞬間、そのルビー色の瞳を、キラキラと輝かせている。そのアミルに対し、アンソニーが丁寧に答えていた。
「この時期にしか食べられないという限定感が、美味しさのスパイスになっていると思います。パティシエもこの時期のために頑張りますし、食べる側もしっかりと味わい、食べることになるのです。その味はしっかり記憶され、次回への期待として残るではないかと。ゆえに美味しいのですが、一年で一度のお楽しみなのだと思います」
大変優等生な回答に、アミルが口をぽかーんと開けている。その様子をアミルのプラジュが目を細めて眺めている。平和なその姿に、頬が緩む。
「ニーナ」
クリスの声に我に返る。そしてクリスの方を見ると、私の口元にはホリーデー・ガレットが。
「クリス、このホリーデー・ガレット、私のも、クリスのも、同じ味よ?」
違う味の食べ物を、クリスと食べさせ合うことはよくしていた。でもホリーデー・ガレットの味は一種類だった。
「分かっているよ、ニーナ。でもね、僕がニーナに食べさせたいんだ」
アイスシルバー色のサラサラの前髪の下のライラック色の瞳が、甘えるように私を見ていた。
もう、クリスったら! みんないるのに、私に甘えたいのね。
可愛くてならないわ、と思いながら、クリスが私の口に運んでくれたホリーデー・ガレットをパクリと食べた。
私が食べるのをクリスはとろけそうな笑顔で見ている。
良かったわ。座っていて! 腰砕けでも問題なし!
勿論、私もクリスに食べさせてあげると……。
「ニーナが食べさせてくれると、味わいが増している気がするよ」
「そうなの!?」
「うん。ニーナの優しさが、ホリーデー・ガレットを忘れられない味にしてくれている」
もう、クリスってば~~~! みんながいるのに、今度は私が甘えたくなるじゃない!
抱きつきたい気持ちをこらえ「はい、クリス♡」と食べさせてあげていると。
「大魔法使い見習いのクリストファー様ですね!」
突然声をかけられ、ウィルとジェシカ、アミルとアンソニー、クリスと私は声の主を見る。そこにはブラウンの髪にヘーゼル色の瞳の青年が立っている。胸元に金糸で「ショコラ・イートン」と書かれた紺色のコックコートを着ているということは! これは王室御用達のチョコレート店のパティシエさんでは!?
「シェフ・パティシエのデレック・イートンさんから、クリストファー様を見つけたら渡すようにと言われていたのです。今日、いらっしゃるとお知らせいただいたので、お届けに来ました!」
見習いパティシエだというイアンは、クリスに紙袋を差し出した。
「わざわざありがとうございます」
立ち上がったクリスが紙袋を受け取ると「どうぞ、お楽しみください」と、イアンは頭を下げ、お店へと戻っていった。
「『ショコラ・イートン』のホリデーギフトチョコだよ。みんなで食べよう」
これにはジェシカ、アンソニー、アミル、そして私が「「「「わーい」」」」と狂喜乱舞。王族のウィルにはお馴染みだから、みんなの様子を優しく見守っている。
「ショコラ・イートン」は、王室御用達のチョコレート店で、今回、ホリデーギフトチョコをホリデーマーケットで販売しているものの。お店が開くと同時に大行列! 平日の朝から行列はできているということで、入手難易度がとても高い。
ウィンスレット辺境伯家には初日に三箱届けられたが、みんなで食べたので、あっという間に食べ終わってしまった。十二種類のチョコレートが一箱に入っているので、十二箱買わないと全種類は味わえない。ゆえに、こうやってまた食べるチャンスができたことは、嬉しくてたまらない!
そういうことでホリーデー・ガレットを食べ終えると、早速、ホリデーギフトチョコをみんなで食べたのだけど……。
た、大変!
クリスと私にはチョコレートキスの魔法があるのに!
「みんな、ニーナと僕でコーヒーを買ってくるから、少し待ってもらえるかな?」
ニコニコと微笑んだクリスはそう言うと、私と手をつなぎ、歩き出す。
ミルキーは私のロングケープの内ポケットの中でぬくぬくしている。銀狼はトコトコと私達の後についてきていた。
「ニーナ、『ショコラ・イートン』のホリデーギフトチョコ、美味しかった?」
「う、うん。美味しかった……」
「でも魔法も発動している?」
こくりと頷くと、クリスが切れ長のライラック色の瞳が煌めく。
「おいで、ニーナ」
巨大噴水広場の周囲は沢山のオークの木が植えられ、ホリデーシーズンの飾り付けがされている。沢山のランタンが灯され、小道を散歩しているカップル、ベンチでラブラブなカップルも多い。さりげなくそこに混ざり、大木の影に隠れ、クリスと甘い甘いキスを楽しんだ。
お読みいただき、ありがとうございます!
ホリデーシーズン向けのお話を2話公開しましたー!
約1か月間の活動をご報告。
【ご報告と御礼~その1~】
活動報告でもお知らせしましたが
ドリコムメディア大賞で2作品が一次選考を通過していました。
応援くださっている読者様
本当にありがとうございますヾ(≧▽≦)ノ
日頃の読者様の応援への感謝の気持ちを込め
新作も多数、公開しました!
ページ下部にイラストリンクバナー設置していますので
ご確認いただけると幸いです!
●最新作●
『絶体絶命の崖っぷち悪役令嬢
~断罪している場合ですか!?~』
https://ncode.syosetu.com/n2018io/
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ブックマいただけると嬉しいです☆彡
こちらはページ下部に
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見落としにご注意~
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【新章追加しました!】
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断罪終了後シリーズ第5弾は、まさかのあのヅラ魔法とコラボ!
しかも読者様が感想で寄せていた、あの魔法も遂に解禁!
読者様と共に進化し続けるヅラ魔法を、お楽しみください!
常連さんは「まさか!」と思うあの作品の新章。
心の準備ができた方はご覧くださいヾ(≧▽≦)ノ
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