40:お祝いの終幕
空が茜色に染まる頃。
お祝いの席はウィンスレット辺境伯の挨拶で締めくくられた。
10時過ぎから始まり、終わったのは16時前。
実に6時間近いお祝いの席だった。
でもいろいろ盛沢山だったので、不思議だが、本当に。
あっという間に終わってしまった気がする。
クリスと私は帰って行くクラスメイトを見送ることになった。
一人一人に挨拶をして、握手をして見送る。
クラスメイトの見送りが終わり、ケイト達使用人の見送りも終わった。
「クリス、ニーナ。次は王都で盛大に祝おう。本当はみんな、ブルンデルクに来たがったんだよ。でもそうなるともう、このレストランでは収まらない人数になってしまう。だから今日はみんなを代表して僕とアニカがお邪魔させてもらった。でもまだ祝い足りないからな。また、王都で」
レノー・ブルタンが笑顔でクリスとハグをし、私とはがっちり握手をした。続いてアニカも……。
「ニーナ! 本当になんて可愛いの! あなたが東の国で買ってきてくれた食器。お店で使わせてもらっているわ。もう大人気なのよ。ありがとうね。簪は今日、つけてきたわよ」
アニカのアップした髪には、私が贈ったとんぼ玉がついた簪が飾られている。
「クリス。ニーナのこと、ちゃんと幸せにしてね。仕事中毒なのもいいけど、一緒にいる時間も作るのよ。ニーナはきっと優しいから、クリスが構わなくても我慢するかもしれない。でもね、それをそのまま放置すると、いつか大爆発するから。気を付けてよ」
「無論です。僕の人生はニーナに捧げているも同然ですから。……魔法使い見習いとしての職務も真っ当しますが、基本はニーナ中心ですから」
そんな風に言うと、クリスは私を軽く抱き寄せる。本当はぎゅっと抱きしめたいが、軍服の各種飾りがそれを許さない。
アニカの後にはウィル達が、まとまって私達のところへ来てくれた。既に今朝、エントランスでお祝いの言葉をもらっている。だから今はクリスと私から、このお祝いの席を計画してくれたみんなに、順番に御礼の言葉を伝えた。
「みんな、本当に今日はありがとう。まさかこんなお祝いの席を用意してもらえているとは思わず、驚いたし嬉しかったよ。王都のみんなからのメッセージを手配したり、大変だっただろう?」
クリスがそう言うとアミルが「なんてことはないさ、クリス。オレがちょっと王都へ出張っただけだ」と答えると「ああ、本当に、アミルは王宮にさえ、神出鬼没で現れたから、大魔法使いメイズ様の防御魔法が発動して、大変だったんだからな」とウィルが頭を抱える。
「でもほら、王太子のメッセージが欲しいって言うから」「だからってアポなしで王宮に向かうなんて! 父上が……国王陛下が大目に見てくれなかったら、大変なことになっていたんだからな」とアミルとウィルが会話しているのを、アンソニーが宥める。
「まあ、こんな感じで、いろいろとありましたが、今日という日を無事迎えることができてよかったと思います。確かにお祝いの準備は大変でしたが、クリストファー様はいつもいろいろなことを一人で同時進行されていますから。そこを見習いつつ、でも今回は沢山の協力者がいたので、大丈夫でしたよ」
「アンソニー、本当にありがとう。今回は私の誕生日パーティーの翌日に、このお祝いの席だったでしょ。期末考査もあったわけで。それでここまでやってもらえるなんて……。感動したわ。感謝しているわ!」
私の言葉にアンソニーはホント、王子様な笑顔で「喜んでもらえてよかったよ」と言ってくれる。
「ニーナ、クリストファー様、今後もこんな私達ですが、仲良くしてくださいね。そしてまだ学生生活は残っていますから。何より、明日から期末考査の答案返却も始まります。これからもよろしくお願いします!」
ジェシカの締めの言葉に、現実を少し思い出す。
そうか、明日からまた制服で学校に通うのか。
婚姻届けを出したものの、ホント、何も変わらないのね。
そんな風に思いながら、みんなのことも見送った。
そして最後は……ウィンスレット辺境伯夫妻だ。
「私達にとってニーナは娘も同然だ。8歳のニーナがブルンデルクに来て10年。寝食を共にしてきたのだからな。だからニーナがこうやって大人になり、クリストファー様と婚姻関係を結んだことには……本当に……」
ここでまさかのウィンスレット辺境伯の男泣きに、ついに私の涙腺も決壊してしまう。クリスは私を落ち着かせ、ウィンスレット辺境伯夫人がウィンスレット辺境伯に深呼吸をさせた。
なんとか涙を抑えたウィンスレット辺境伯は、クリスに何かを手渡した。
「ニーナの両親からも許可をもらっている。二人はもう大人だ。そして婚姻届けも出しているからな。明日の朝は学校に間に合う時間に馬車をやるから、そこは安心するといい」
私は何のこと?と思い、ウィンスレット辺境伯を見るが、彼は再び泣き始めてしまい、ウィンスレット辺境伯夫人が「こんなにいかついのにね、泣き虫なのよ」と言いながら、二人は連れだってアーチをくぐり、メインエントランスへと向かってしまう。
なんだか「そして誰もいなくなった」状態になってしまったと思ったら、ホテルのスタッフに声をかけられた。
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次回は明日『わあ……!』を更新します。
何があるのかな……?
引き続きよろしくお願いいたします。
台風の影響を受けている地域の読者様。
お気をつけてください!


























































