34:今日は私の誕生日
11月23日。
今日は私の誕生日。
誕生日であるが、期末考査のため、みんな勉強に追われている。そしてバースデーパーティーは別途行うことになっていた。それなのに朝からみんな、バースデーカードを渡してくれる! これは例年のことながら、感動してしまう。
朝食の席で渡してくれたのは、ウィンスレット辺境伯夫妻、ジェシカ、アンソニー。郵便で届いていた、王都にいる家族からのバースデーカードは、ウィンスレット辺境伯が渡してくれた。
そして学校へ行くための馬車に乗り込むと、ウィル、アミル、クリスがバースデーカードを渡してくれる。学校に着いてからも、メグ、ローガン、ヘクター、クラスメイトのみんなが、バースデーカードをくれた。
授業を終え、屋敷に戻る頃には……。鞄に入りきらなかったバースデーカードを、リボンで結わいて持って帰ることになった。屋敷に戻り、制服からドレスに着替える僅かな時間を使い、半分ぐらいのバースデーカードを開封し、メッセージを読んだ。
着替えを終えた後は、勉強部屋に集合し、宿題と期末考査に向けた勉強。そこに届けられたおやつは……なんとマーブルおばさんのバームクーヘンの特注品だ!
バームクーヘンにふわふわの生クリームがのせられ、そこに沢山のフルーツが盛り付けられている。それを綺麗にカットしたものが、出さされたのだ。これは勿論、私が誕生日だから用意されたスペシャルおやつだった。
バースデーパーティーはちゃんと後日やるのに、こうやって気を使ってくれるウィンスレット辺境伯夫妻には、心から感謝だ。
「バームクーヘンにふわふわの生クリームって……。ものすごく旨い! これ、食べることができたのはニーナおかげだよな? ニーナ、ありがとう!」
アミルはこの特注バームクーヘンに感動している。そしてその感動が極まり、私への御礼へとつながっていた。
そんな感じでおやつを楽しんだ後は……もうひたすら勉強漬け。
その勉強が終わり、夕食を終え、ようやくクリスに会える……!
今日は私の誕生日なのだから。
いつもの「あと5分だけ」ではなく「あと15分」をクリスに提案しようと思っていた。本当は奮発(?)し、あと30分を提案することも考えたが、クリスは真面目なので「ニーナ、気持ちは嬉しいけど、ちゃんと勉強した方がいいよね。卒業できないと困るから」と言い出しそうだ。よって少し控え目で15分。
とりあえずラズベリー色のワンピースの私は、ソファの前のローテーブルに、教科書やら魔法書を置き、クリスの到着を待つ。ミルキーはテーブルが本でいっぱいなので、今は私の膝の上にいる。クリスがきたら、銀狼のところへ移動だ。
クリスはまだ来ないだろうからと、残りのバースデーカードを読んでいた。すると扉がノックされる。いつもよりクリス、少し早いわね――そう思いながら、扉に向かう。
「ニーナさま、使用人一同の想いを込めて。ハッピーバースデー!」
ケイトの後ろには、メイド長のアン、バトラーのジル他、この屋敷に仕える使用人がずらりと揃っている。そして差し出されたトレンチには、二人分の紅茶、そして……フルーツの盛り合わせとチョコレートフォンデュ!
「ケーキはさすがにお腹いっぱいだと思いましたから、フルーツにしました。チョコレートも甘さ控えめにしてあります。ぜひクリストファー様とお楽しみください!」
「嬉しいわ、みんな、ありがとう!」
窓の前のテーブル席にトレンチを置いてもらった。
部屋にチョコレートの甘い香りが漂い、私の心臓は既にドキドキし始めている。
ケイト達が部屋から出て行くと、私はどうしたものかと思案する。このチョコレートキスの魔法はどうしたってこの香りがある限り、発動してしまう。魔法でこの香りを抑えることもできるが……。
あと15分を、先に15分にして、食べ終えてから勉強……という手もある。
でも……。
そんなことをしたら、止まらなくなる気もした。ここは魔法で、このチョコレートキスの魔法を抑えるしかないわね。
そう決意したまさにその時。
扉がノックされ、クリスが顔を出した。
「ニーナ!」
クリスはすぐにチョコレートの香りを察知し、瞳がキラキラ輝いている。これは……多分、私が密やかに今日の誕生日をクリスと二人きりで楽しもうと、ケイトに頼み用意してもらった……そう思っている可能性が高かった。
今、一気に気分が盛り上がったであろうクリスの気持ちに、水を差したくはない。
「クリス、勉強はもちろんするわ。でも今日は私の誕生日当日だから。勉強の前に少し、甘い物を、ね?」
クリスは私に駆け寄ると「勿論、勉強はしよう。でも今はこのフルーツを、チョコレートで楽しもう!」そう言って私をぎゅっと抱きしめる。
輝くような笑顔のクリスは、すぐに椅子に腰をおろし、フルーツを食べることを提案してくれた。その後、お互いにチョコレートをたっぷりつけたフルーツを食べさせ合い、そして……。
チョコレートキスの魔法が発動し、甘い時間が流れる。
銀狼とミルキーは、いつもの場所で眠っていた。
「もう、ニーナ。僕は理性が吹き飛びそうだけど、心を鬼にするよ。……勉強をしよう」
クリスは食べ終わったら即、トレンチを転移魔法で厨房へ運び、その後はちゃんと勉強につきあってくれる。
つきあってくれているが……。
お読みいただき、ありがとうございます!
ニーナ、おめでとう~☆彡
次回は明日『最高のご褒美』を更新します。
引き続きよろしくお願いいたします。

























































