23:レイククリスタル
「あの雲海みたいな中に浮かぶ、アクアブルーの湖と森が、レイククリスタル国立公園の一部だったのか! あの青々とした緑が紅葉している……。間違いなく、綺麗そうだ……。……オレ、途中抜け出してみんなに会いに行こうかな……」
「!? アミル、気持ちは分かるが、それはダメだ。我慢しろ。3年生になれば行けるから」
「え、でも。みんなとは行けない……」
アミルが珍しくしょんぼりするので、いつものように宥めるのではなく、ウィルが必死になぐさめている様子は、なんだか微笑ましい。
「クリスはレイククリスタルにも、クリスタル回収のために訪れているのよね? 国立公園にも足を運んだの?」
「クリスタルは山岳地帯のより標高の高いところにあったから、別のルートで山に向かったんだ。でもそっちのルートでは、美しい氷河湖を見ることが出来たよ。ミルキーブルーのまるで絵の具をとかしたような湖が広がっていてね。ニーナにも見せたいぐらいだよ。いつか二人で一緒に行こう」
「そんな美しい氷河湖があったのね。レイククリスタルは隣街なのに。私、ほとんど知識がないわ」
するとアンソニーはこんなことを教えてくれる。
「ニーナ、レイククリスタルではふかふかの毛皮の帽子が有名なんだよ。毛皮の円筒形の帽子でとても暖かい。クロンシュ連山があるから、レイククリスタルはギリス王国と国境を接していないけど、その分、街が北に広がっている。冬の寒さは、実はブルンデルクより厳しい。だからそのふかふか帽子が誕生したらしいよ」
するとジェシカがさらに帽子について教えてくれた。
「その帽子はブルンデルクでもたまに見かけるけど、とても高級なの。だから店頭に並ぶことはほとんどないわ。でもレイククリスタルではブルンデルクで買うよりうんと安く買えるそうよ。丁度、今の季節は、今シーズンの新作が出ているから、帽子屋には足を運ぶといいと思うわ」
二人がちゃんとレイククリスタルについて知っているのに!
これが初耳だなんて。
恥ずかしさで一杯だが、隣でクリスが「そんな帽子があるなんて知らなかったよ。明日は自由行動の時間があるから、帽子屋に行こう、ニーナ」と笑顔を見せてくれたので、なんとか気持ちを立て直す。
そんなことを話しているうちに学校に到着した。
校庭に続々と生徒が集まり、教師は点呼をとりながら、学生を整理している。あらかじめ割り振られているメンバーが揃うと、そのまま車に乗り、レイククリスタルへと向かう。宿泊予定のホテルは、車で1時間もかからずに到着となる。
「ニーナ、クリストファー様、おはようございます!」
メグが私を見つけ、手を振っている。
メグはピンクと黒のチェック柄のハイウエストのジャンパースカート、白いブラウスに衿元に黒いリボン。その上に黒のボレロ、そしてピンクのロングケープを身に着けていた。
つまりはブルンデルクより北に位置するレイククリスタルに向かうため、既に制服は冬服装備。それは私も一緒だった。クリスも紺のブレザーに、黒に近いグレーのマントを羽織っている。
「三人揃ったから、先生のところへ行こうか」
クリスに促され、教師のところへ行き、三人で乗る車のナンバーを教えてもらう。三人一組に運転手がつき、レイククリスタルへ向かうことになる。
運転手にトランクを預け、車に乗り込むとなった時、メグは自分が助手席に座ると申し出た。
「メグ、君はニーナと二人、後部席に座って。運転手は男性だしね」
メグとしては、私とクリスが婚約をしているのを知っているから、自分が助手席を当然と思ってくれていた。でもクリスはそうではない。その気遣いにメグは、後部座に私と並んで座るとこう評する。
「クリストファー様って本当に気配り上手。ニーナは幸せね、彼だったらいつだってニーナが笑顔でいられよう、最善を尽くしてくれそう」
「そうなの、そうなのよ、メグ! クリスはね……」
ついクリス賛歌を10分ぐらいしてしまい、我に返る。私の足元には銀狼がいる。膝の上にはミルキーもいた。銀狼とミルキーまでメグと一緒に、クリス賛歌を聞いていてくれたことに気が付く。
は、恥ずかしい。
話題を変えて、レイククリスタルの名物料理について話しだす。そう、国立公園や帽子についての知識はなかったが、食については……しっかり調査済みだった。
何より食の話題は誰とでも話しやすい。メグとも散々、レイククリスタルグルメとスイーツで盛り上がり、そして一度の休憩を挟み、ほどなくしてホテルへ到着した。
「ロビーへの集合時間は9時だから、遅れないようにね」
チェックインの手続きが終わると、クリスは私とメグを見送り、ローガンの到着を待つことになった。ホテルの部屋は二人一組。私はメグと同室で、クリスはローガンと同じ部屋だった。でもローガンはまだ到着していないので、クリスはそのままロビーで待つことにしたようだ。
トランクを部屋に置き、カーテンを開けると……。
「メグ、見て。周辺の山々が綺麗に紅葉しているわ」
「本当だわ……。あの山の麓にレイククリスタル国立公園があるのよね」
ホテルは五階建てで、メグと私がいる部屋は5階。4階は存在せず、4階にあたる部屋が5階となっている。
それなりの高さだから眺望は抜群。
美しい景色を眺めているとウエルカムティーとお茶菓子が届けられた。それを受け取り、窓の前のテーブルに置き、椅子に座る。
メグと二人、窓の景色を見ながらおしゃべりしているうちに、集合時間が近づいた。
お読みいただき、ありがとうございます!
いつか二人で一緒に♡
次回は明日『甘えたいが蓄積中』を更新します。
引き続きよろしくお願いいたします。
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