22:明けない夜はない。
中間考査に備えての勉強期間、そしてその最中。
本当によく集中して学習したと思う。
何せ楽しいイベントは早々に終わってしまった。
あとはもう、この中間考査を乗り越えるしかない。
これを乗り越えないと、次の楽しいイベントはやってこないのだ。
でもね、明けない夜はない。
そう。
そうなのです!
終わった!
ついに、中間考査も全部終わった!!!
とはいえ。
前回の期末考査の後は夏季休暇が控えていた。
でも中間考査の後に、大型休暇があるわけではない。
だがしかし!
スクールトリップがある。
コンカドール魔術学園のスクールトリップは、1年生の時に五泊六日、2年生の時に三泊四日、3年生の時に一泊二日で行われる。前世で言うところの修学旅行とイコールではないが、それに近いものが、三回もあるなんて嬉しくなってしまう。
学年が上がるにつれ、期間が短くなるのは……仕方ない。勉強がその分、忙しくなっているのだから。王立イエローウィン魔法学園のスクールトリップは3年生の一度のみなのだから、それと比べても文句なんて言うつもりはない。
しかも行き先が近場ということでレイククリスタルであるが……これに関しても文句はなく、むしろウエルカム!
なぜなら。
レイククリスタルの隣街であるブルンデルクは、夏の避暑地として有名。対するレイククリスタルは秋――紅葉の季節が大人気なのだ!
街名となっているレイククリスタルは、そのまんまの名を冠する湖がある。そしてその湖一帯が国立公園となっているのだが……。
このレイククリスタル国立公園には、大小合わせると5つの湖があり、7つの滝がある。最大の湖がレイククリスタルと呼ばれ、エメラルドグリーンの美しい湖であり、秋の紅葉の季節に訪れると、それはもう絶景らしい……というのも、私も画集で見ただけで、実物はまだ見たことがない。
さらにレイククリスタル国立公園は、山岳地帯に一部がかかっており、その山岳地帯にある湖レイクアクアでは霧が発生しやすい。この霧が発生している時のレイクアクアと紅葉のコラボレーションがまた、最高と言われている!
アクアブルーの湖に幻想的にかかる霧。その霧から除く、鮮やかな赤、オレンジ、黄色の紅葉。実にフォトジェニックなのだ!
つまり秋のレイククリスタルは、観光客に大人気で、宿を押さえるのも一苦労。それがスクールトリップで訪れることができるのだから。しかもブルンデルクからはアクセスしやすく、一泊二日であることに、なんの文句もない。
さらに魔法で、自身で召喚できるなら、余計な荷物を持参する必要はない。3年生ともなると、みんな魔法を相応に使えるから、前日に準備で追われることもなく、身軽に参加できるところもとても便利。
ということで今日。
そのスクールトリップに旅立つことになる。
アミルもこの日からスクールトリップだが、1年生だから五泊六日。私が1年生の時、このスクールトリップのために、トランクを二つも用意したが……。アミルは手ぶら。底なしとも言える魔力を誇り、そしてめきめきと魔法を覚えたアミルに召喚できないものは、もはやないのかもしれない。お土産だって転移魔法で自身の離れの部屋へ転移させてしまうのだろう。
一方の3年生のアミル以外のメンバーは。
クリスに頼めば手ぶらも夢ではないが、何もかもクリス頼みにするわけにはいかない。ということで平均的な荷物――つまりはトランク一つを持参する形となり、馬車の屋根には四つのトランクがのせられ、私のトランクだけ車内に置いてもらっている。代わりにプラジュがアミルの膝の上で丸くなっていた。馬車の屋根は荷物置きとして便利だが、限度がある結果こうなっている。
「アミル様のクラスは、王都で行き帰りに一泊ずつ、フィアマールに三泊なんですね。しかもフィアマールから近隣の島に日帰りでも行くと。カロランの剣探しでは観光はできなかったと聞いています。今回はじっくり観光ができるでしょうし、まだシーフードフェスティバルの期間なのですよね?」
スクールトリップ当日、いつもより早い時間に学園に集合し、そこから車で移動となる。今は学園に向かう馬車の中、アンソニーがアミルに声をかけた。
「そうなんだよ! ビールフェスティバルは五日間の開催だけど、シーフードフェスティバルは1カ月やるっていうから、ギリギリ間に合うんだ。オレ、魚料理好きだから、めっちゃ嬉しいよ。それにブルンデルクはすっかり昼間でも涼しいだろう? でもフィアマールは半袖でもOKって言うからさ。とても楽しみだよ」
アミルは砂漠暮らしが長いので、寒いより暑い方を好む。しかも意外なことに私達と暮らすようになってから、肉料理より魚料理を好きになっていた。そう言う意味ではアミルとフィアマールの相性はとてもいい。
「でも紅葉……それもいいよな。ブルンデルクの街中でも黄色や赤に色づいた木を見かけるけど、とても美しい。レイククリスタルの紅葉、綺麗そうだ……」
「アミル、離れのダイニングルームに飾られている絵画、あの絵のタイトルは『レイクアクアの霧の朝』だ。レイククリスタル国立公園の湖の一つを描いたものだよ」
ウィルの言葉に、アミルが驚きの表情になる。
お読みいただき、ありがとうございます!
皆さんはフィッシュORミート?どっち派でしょう?
次回は明日『明けない夜はない。』を更新します。
引き続きよろしくお願いいたします。


























































