7:ウィルとジェシカの『魔法披露』
ステージの中央にウィル、ジェシカ、セリーヌの三人が登場すると、すぐに三人はその場に座りこむ。そこで司会者が三人を紹介し、音楽が流れる。
ペール・ギュントの「朝」だ。
マジパラの世界にもこの名曲が存在していたのね!
すがすがしい朝の目覚めの曲にあわせ、三人が動き出す。
すると。
ウィルの幻影魔法で鳥が羽ばたき、音楽にあわせ、素敵な鳴き声を響かせる。同時に、ジェシカの魔法で、朝陽がステージに降り注ぐ。セリーヌの魔法で、ステージに色とりどりの花が咲き誇る。
すごい!
なんて素敵な朝の景色。
そう思っていたら、曲が変る。
これは……ヴィヴァルディの「秋」だわ。
ヴィヴァルディと言えば「春」が有名だけど。
この「秋」にも、「春」を彷彿させる軽やかさがある。何よりも物悲しいイメージの秋ではなく、心躍る秋を感じさせてくれる。
あ……!
ステージではセリーヌの召喚で、真っ赤に紅葉した木々が現れた。ウィルの幻影魔法で鹿の親子がステージを駆けまわっている。ジェシカの魔法で秋風が吹いたのだろう。真っ赤な紅葉が舞い散っている。
鮮やかな紅葉が実に美しく、走り回る鹿の親子も可愛らしい。
そう思っていると曲が変り、今度はドビュッシーの「月の光」。
ジェシカの魔法で雪が降り、ウィルの幻影魔法で真っ白なキツネがステージを駆ける。セリーヌの魔法で上空に月が現れた。勿論、本物の月ではない。光の魔法を使い、上手いこと月を表現している。
そこがステージであることを忘れるぐらい、とても幻想的。
なるほど。
三人は魔法で四季を表現しているのだと理解する。
「次はソロのショーン! その次もソロでパトリック」
クリスの声にメグがショーンを誘導する。私はパトリックをショーンの後ろに立たせた。
ステージでは音楽が変っている。
これはヴィヴァルディの「春」だわ!
まだ『魔法披露』は終わっていないが、既に拍手が起きている。急いでステージに目を向けると……。
まさに春爛漫。
アーモンドの花は桜の花に似ている。美しい花が咲き誇り、色とりどりの蝶が飛んでいる。さらに可愛らしい兎がステージ上をぴょんぴょん跳ねていた。しかもよく見ると、いつの間にかスノーボールが紛れている!
アーモンドの木には、アンソニーのイーグルも止まっていた。
ということは、アーモンドの木で忙しそうに動き回っているリスは、セリーヌの守護霊獣ね!
守護霊獣まで集合して、春の世界を表現しているなんてとっても素敵。春の優しい木漏れ日と共に、音楽が終わった。
またも、拍手喝采。
これは……本当にすごい。
魔法だけではなく、召喚も行われているし、守護霊獣も活躍している。使われている魔法も光の魔法、風の魔法、幻影魔法と幅広い。
まさに3年間学んだ集大成とも言える『魔法披露』で、観客もみんな、喜んでいる。
ウィル、ジェシカ、セリーヌの三人は、自身の守護霊獣を連れ、舞台からはけた。
この後、ソロでステージに立つのはなかなかキツイと思ったが。このショーンという生徒は……いきなり自身を変身魔法でゾウの姿に変えている。
どうやらウィル、ジェシカ、セリーヌの美しい四季を表現した『魔法披露』の後で、真っ当な魔法をやると自身が霞むと分かったのだろうか? いきなり、全く違う方向へ走ったようだ。
その目論見は大成功なようで、ステージにショーンが登場すると、観客は皆、驚いていた。驚き、でもそのゾウの完成度の高さには感嘆している。
その後、ショーンは持ち時間の3分を使い、キリン、カバ、ライオンなど珍しい動物の姿に変身し、ウィル達に負けないぐらいの拍手喝采を得ていた。
ショーンの後も、順調に3年生の『魔法披露』は進み、午前中のステージは無事終了。
みんなそれぞれの得意を生かし、魅力あふれる魔法を披露していた。
「ニーナ、メグ、お疲れ様。今のうちに昼食をとってしまおう」
クリスに言われ、ホールを出て、屋台へと向かう。
すると「ニーナ!」と、クラスメイトと一緒にいるアミルに声を掛けられた。
「これ、マーブルおばさんのお店の屋台で手に入れた。限定販売の揚げバームクーヘン。外は揚げたドーナツみたいにカリッとして、中はしっとりバームクーヘンだ。サイズはドーナツぐらいで食べやすいから。味は、チョコレート味。はい、3つ手に入れておいた」
そう言うとアミルは、紙袋を私に渡してくれた。
「ありがとう、アミル!」
私がマーブルおばさんのお店を大好きだと知って、購入しておいてくれたと分かり、嬉しくなる。
「ニーナ達の『魔法披露』、楽しみにしているからな」
アミルは私に手を振り、クラスメイトの処へと戻っていく。その背中を見送っていると、クリスが声をかけてくれる。
「アミルはすっかりクラスにも馴染んだね。バースデーパーティーも成功していたし、今も仲間と楽しそうにしている」
「うん。本当に良かったわ」
「ニーナ、クリストファー様、このホットサンドのお店、美味しそうですよ」
「いいわね、メグ! 並びましょう!」
午後の『魔法披露』に備え、腹ごしらえをすることになった。ホットサンドは勿論、アミルがプレゼントしてくれた揚げバームクーヘンも、美味しくいただくことができた。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日『いよいよ出番』を更新します。
ニーナ達もついに魔法を披露☆彡
引き続きよろしくお願いいたします。


























































