5:魔法祭
あっという間に準備期間の日は過ぎて行き。今日はもう、魔法祭当日だ。
コンカドール魔術学園に向かう馬車の中は若干カオスになっている。
まず、アミルは爆睡。
魔法を駆使したたが、それでも活動できる時間は限られている。魔法祭の準備に追われたアミルはお疲れのようで、ぐっすり眠っている。
次に忙しそうにしているのはアンソニーだ。
自身の『魔法披露』の準備に加え、生徒会長として、魔法祭の運営にも関わっていた。今も何かの申請書類を真剣に眺めている。魔法祭のスタートは9時からだが、どうやらそこまでアンソニーの戦いは続きそうだ。
この二人に対し、なんだかいい雰囲気なのはウィルとジェシカ。
「このタイミングで私が魔法を発動ですよね?」
「そう。それに合わせて、僕も魔法を使うから」
「ふふ。これを見たら、みんな驚きますわね」
「ああ、ジェシカ。絶対に成功させよう」
二人はこんな感じで、『魔法披露』の共演について、馬車の中でも打ち合わせを続けている。
一方のクリスと私は。
「ねえ、クリス。私はここの時、五の陣形でいいのよね?」
「うん。それで大丈夫。僕は三の陣形にするから、ちゃんとニーナの魔法で抑えられるから、心配しなくていいよ」
こんな感じでウィルとジェシカのように最終確認をしている。
銀狼とプラジュ、ミルキーとスノーボール。馬車の中にいる守護霊獣たちは、「期末考査の時みたいにみんな真剣だな」と思っていそうだ。
そうこうしているうちに学校に到着した。
いつも通りの正門から敷地内に入ったが、正門はがらりと雰囲気が変わっている。アミルの魔法とクラスメイトが装飾を施した正門は、まるで城門のようになっていた。門の高さは普段の倍で、左右にはガーゴイルが配置されている。
実によくできたガーゴイルで目が動く。
歩いている人の目線にあわせ、目が動いているように見えるのだ!
その正門をくぐり、校舎までは左右に庭園が広がっているのだが、そこもいつもとは違う状態になっていた。ドアサイズの鏡がいくつも置かれており、そこには自分達の姿が映っている。でもほんの一瞬。そこに本来いるはずのないものが映りこむ仕掛けが施されていた。
それは黒猫だったり、コウモリだったり、巨大なドラゴンの翼の一部だったり。
実に凝っている。
アミルが爆睡するのも納得だし、今年の1年生はよく頑張ったと思ってしまう。
教室についてからは、ホームルームまでは『魔法披露』の打ち合わせになる。既に席にいたメグのところに集合し、段取りを確認した。
私達の出番は午後一番。
午前中は、『魔法披露』が行われるステージの手伝いになっている。アンソニー、ウィルとジェシカは、午前中に登壇。ステージの手伝いをすることで、彼らの『魔法披露』を見ることができるのは、ついていると思う。
「昼食を終えたら、すぐに魔法で着替え。着替えが終わったら、すぐにステージ脇へ向かう。でも今日は三人で行動するから、問題ないと思うよ」
クリスに言われ、メグも私も力強く頷く。
するとベルの音が聞こえ、皆席へと戻る。ホームルームはすぐに終わり、いよいよ魔法祭に向けて動き始めた。
『魔法披露』が行われるのは、1000名を収容できる巨大ホール……というかドームは、どんな魔法を使っても大丈夫なように、各種魔法が施されていた。ここでは生徒会長であるアンソニーによる、魔法祭の開会宣言が今、まさに始まった。
ニュースペーパーの記者が、その様子をカメラに収め、手にした羊皮紙にメモを走らせている。
同時に各門が解放され、一般客の入場もスタートしていた。
「行こうか」
クリスに促され、メグと私はステージの袖へと移動する。開会宣言を終えたアンソニーがまさに舞台袖でニュースペーパーの記者から取材を受けていた。
「一組目は……ヘザー&ジュリーの共演。ヘザーとジュリー、いるかな?」
舞台袖には、既に何名もの生徒が集まっている。彼らにステージへ出る合図を送るのが、私達三人の役割だ。
「はい! います」
クリスの問いに、お揃いのピンクのワンピースに着替えた生徒が手を挙げる。
「こちらへ来てください」
メグが待機位置まで二人を移動させる。
「二組目はソロ。ドロシー、いるかな?」
クリスの呼びかけに、「はーい、ここです!」と三つ編みの少女が元気よく手を挙げる。私がドロシーに駆け寄り、ヘザー&ジュリーの後ろへと案内した。そこに司会役の生徒も到着し、軽く打ち合わせを行う。袖から観客席を見ると、続々と席に人が埋まって行く。
1000名収容で、出入りは自由。満席で立ち見ということはないはずだが、開場してまだ十五分だが、人の入りは好調だ。飲食店のオープンが11時からなので、皆、『魔法披露』か『魔法競技』を見にいっているようだ。
「ニーナ、見てご覧。アミルがいるよ」
クリスに言われ、観客席に目を凝らすと、クラスメイトと一緒に並んで座り、おしゃべりしているアミルの姿が見える。アンソニー、ウィルとジェシカの『魔法披露』を見に来たのだろう。ついさっきまで爆睡していたと思えないぐらい、元気そうだ。
そうしているうちにもマイクテスト、音響の確認などが行われ――。
遂に、一組目の『魔法披露』が始まった。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日『アンソニーの「魔法披露」』を更新します。
いよいよ魔法祭が始まります!
引き続きよろしくお願いいたします。

























































