34:残念ながらニーナの案に3つの反論をする
「ここを抜ければネモフィラの花畑だ」
ガーデニアに見惚れ、思わず立ち止まっていた。
だがウィルに声をかけられ、再び歩き出す。
歩き出すと同時に、彼がギリス王国に囚われている件について触れつつ、私の考えた推理を話してみることにした。
「ギリス王国に囚われたなら、その、私の記憶を消している暇なんてないですよね? でも実際には私の記憶は消えていて……。もしかしたら、彼は私にプロポーズして、自分の婚約者になって欲しいと伝えた。でも私がそれを断った。だから彼は私から自分の記憶を消そうとした。そこになにか邪魔が入ったか、私が逃げ出したか。それで記憶は中途半端に消すことになった。そして傷心の彼は姿を消した。もしかするとギリス王国に隠れた、とか」
私の話を聞いたウィルは、一瞬ポカンとして笑いだした。
「それはなかなか説得力があるな。うん。ニーナらしい。確かに君に断られたら……彼はショックだろうな」
だがひとしきり笑い終えると、ウィルは……。
「残念ながらニーナの案に3つの反論をする。まず一つ目。彼ほどの魔力の持ち主なら、遠隔からでも記憶を消せる。次にニーナが彼を拒む件だけど……。ないと思う。彼の虜になることはできても、嫌うなんてこと……無理だと思う。僕がもし女子だったら、彼と結婚したいと思う。それぐらい彼は人として魅力的だ」
ウィルは彼のことを思い出しているのか、目を細める。
「最後に、いくら傷心であろうと、彼は約束を反故にはしない。仮にニーナに振られたとしたら……。それは約束を果たそうとしたが、果たす必要がなくなったことになる。だったら彼は王宮に戻るはずだ」
そこで言葉を切ると、ウィルが私を見た。
「そしてこれはダメ押しの蛇足。魔力は遺伝する。だから僕らのDNAは必然的に強い魔力の持ち主に惹かれてしまう。それは抗いがたい真実だ。よって本能的に彼に惹かれても、拒むということは……ないと思うな」
ウィルがそう言った時。
ザッと風が吹き抜けた。
少しだけ冷たい、けれど新緑の季節の到来を思わせる風。
そして眼前には……ネモフィラの花畑が広がっている。
「すごい……」
この言葉しか出ない。
夢の中では何度も見た景色だが、実際に目の前で展開されると、そのスケール、開放感、美しさは圧倒的だ。
「ニーナ、正解だ。この花畑には彼の魔力の痕跡が確かにある。この花畑でニーナは彼と会った。それは間違いない」
魔力検知をしていたウィルが私に教えてくれた。
そうか。
ここで私は彼と……。
こんな場所で「僕が大人になったら、君を迎えに行く」なんて言われたら……。
って、8歳で言われたのよね!?
いや中身は大学4年生なわけで。
……相当、キュンキュンしただろうな。
どうしてその時の記憶がないのだろう……。
なぜ記憶を消す必要があったのだろう?
「まあ、なんて僥倖♡ 全員間違いなく高魔力。しかも顔も◎、肉体も◎、武術も◎。よりみどりね~。どの子をお持ち帰りしようかしら?」
突然の声に、その場にいた全員が凍り付いた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「僕が死ねば全て終わる。逃げきれば勝ち」を公開します。
ハラハラドキドキの展開が始まります。
そして明日はお楽しみ企画も用意しています。
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