1:プロローグ
夏季休暇が終わってしまった。
学生生活最後の夏季休暇。
いろいろなことがあったなぁ。
休暇が始まってすぐは、みんなと宝探しに行き、砂漠の民のアサシン(暗殺者)に襲撃された。でもそれはクリスとアミルが撃退し、アサシンとは和解できた。宝探しが終わった後は……ウィル、ジェシカ、アンソニーが王都へ向かい、私はクリスと二人きりの夏季休暇を過ごすことになった。
チョコレートキスの魔法。手作りのオルゴール。でもブルンデルクに突然、王都にいるはずのグレッグが現れ、舞踏会へ招待され……。そこでマジパラのヒロイン、ユーリアのとんでもない力について知ることになった。さらにはユーリアがクリスの心を手に入れようとしていると分かり……。
あの時はもう、本当にどうなるかと思った。ユーリアが手に入れていた力は絶対。クリスでさえ抗うことができないもの。それをどう切り抜けるのかと思ったら……。
クリスはただ魔力が強く、幅広い魔法を使えるだけではない。戦術に長け、戦略を練り、自分に不利な局面も逆転させてしまう。クリスを凌駕するかもしれない魔力を持つアミルにも。回避不可能な力を行使できたユーリアにも。クリスは負けることなく乗り越えてきた。
本当にクリスはすごいと思う。
ユーリアの脅威が去った後は、もう夏季休暇も終わると気を抜いていたけれど。まさかのカロランの剣の発見。でもこの剣のおかげで、東の国へ行くことになるとは思わなかった。魔法を使える国との国交を再開し、これからの東の国を担う二人の若き獅子とも出会えた。私には前世を思わせる東の国はとても懐かしく感じたし、何より着物や浴衣姿のクリスを見ることが出来たのは……。
たまらなかった……!
そして。
本当に2カ月の夏季休暇は終わり、新学期が始まったのだけど……。
コンカドール魔術学園は、「いきなり」が大好きな学校。だって新入生は入学していきなり春キャンプに行くのだ。まだ顔も名前も一致しない学生同士、寝食を共にすることで一気に仲良くなろう!という方針。
新学期でもその「いきなり」精神が発揮される。
夏季休暇を振り返る暇を与えてくれない。新学期がスタートするなり、いきなり、学校を上げての魔術祭が始まるのだ。
魔法祭。
これは「祭」という言葉がふさわしいのかどうか。でもお祭り騒ぎになることは間違いない。魔法を競い、披露し、感動する場が「魔法祭」なのだ。
「魔法を競う」は、2年生を中心に行われる。三人一組によるトーナメント方式で、教師によって出題された課題を制限時間内にいち早くクリアしたチームが勝ち昇って行くというもの。
「魔法を披露する」は、3年生が受け持つ。これはもう、1人持ち時間3分の中で、ステージに登場し、自身の得意とする魔法を披露するのだ。3年生にとっては、学園で学んだ魔法を披露する集大成のような場とも言える。
「魔法に感動する」は、1年生の役割。入学してまだ間もない。魔法だって覚えたて。上級生たちの魔法を見て、感動し、「自分もあんな魔法を使えるようになりたい!」というモチベーションアップにつなげることが重要なのだ。
ということで新学期が始まると、いきなり授業を受けつつ、放課後はこの魔法祭に向けての準備となる。魔法祭は一般解放されており、生徒の親は勿論、近隣の住民も足を運ぶ。許可を得た飲食店の屋台も並ぶため、そこはもう、お祭りっぽさ満点だ。
「ニーナはどんな魔法を披露するの?」
白いシャツと紺のネクタイ、水色と黒のチェック柄のセンタープレスされたズボン姿のクリスが私に尋ねた。
放課後の教室では、魔法祭に向け、何の魔法を披露するか、みんな考えている。既に披露する魔法が決まっている生徒は、グラウンドやホールへ移動し、練習を始めていた。
「それが……何がいいか迷っているの。せっかくみんなの前で披露するのだから、あっと驚くものがいいと思うのだけど……。そうなると何か召喚することも考えたわ。でも、召喚と言えばウィルでしょう……」
ウィルは王族の中では随一の魔力を持ち、王族だからこそ召喚できる霊獣も多い。いきなりステージでウィルがフェニックスを召喚したら、もうそれ以上の衝撃を与える召喚をできる生徒なんていないと思うのだ。
「ウィルの召喚で皆が圧倒された後、私が呑気にマーブルおばさんのお店のメイプルバームクーヘンを召喚して笑いをとる……というのもの一つの手だけど……」
考え込む私にクリスはこんな提案をしてくれた。
「ねえ、ニーナ。先生に聞いたところ、『魔法披露』の場では、共演が認められていると聞いたよ。三人一組までならチームを組んで、魔法を披露することが認められるって。持ち時間は一人の時より少し減ってしまうけど、ニーナとメグと僕の三人で、共演をするのはどうだい?」
「なるほど!」「え、私ですか!?」
私は納得し、隣の席に座っていたメグが驚いている。
「メグ、一緒にやりましょう」
「え、でも私、二人みたいに魔力が強くないから……」
「大丈夫だよ。共演だからそこは助け合って魔法を披露するから」
クリスの笑顔にメグは「なるほど」と頷く。
「三人だと持ち時間は7分。7分あれば、寸劇だってできちゃうわ! それに一人より緊張しないで済むと思うの。三人で共演しましょうよ、メグ!」
「それは……確かにそうよね。一人だったらガチガチになりそう」
こうしてクリス、メグ、私の三人は、共演することが決定した。そして魔法祭に向け、どんな共演にするか、考えることになった。
お読みいただき、ありがとうございます!
Episode6始まりました~。
物語の方は夏休みが終了ですが
現実はまだまだ夏本番。
連日暑い日が続いています。
皆さん、熱中症にはくれぐれもご注意を!
そしてゲリラ豪雨にも気を付けてくださいませ~
Episode6は13時~14時で更新していこうと思います。
更新時間の希望があればお知らせくださいませ~
【完結のお知らせ】
>>一気読み派の皆さまへ<<
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた
~回避成功編~ 』
https://ncode.syosetu.com/n0370ih/
今朝の日間恋愛異世界転ランキング13位☆感謝
感想もいただけて感涙!
乙女ゲーの悪役令嬢に転生してしまった私は。
ゲームの抑止力に打ち勝てない!
ならばと最後の禁じ手を行使する。
つまり、断罪の場で公爵家の次期当主に自分から婚約破棄を宣言したところ。
まさかの断罪回避に成功! これからは自由の身、推し活に励むことを誓うが……。
断罪回避成功かと思いきや!こんな展開が待っているなんて聞いていません!
断罪の場で自ら婚約破棄宣告シリーズ第三弾、今、開幕!
ページ下部にリンクバナーがあります!
クリックORタップで目次ページに飛びます。
ハッピーエンドの読み切り
ぜひご覧くださいヾ(≧▽≦)ノ

























































