17:東の国
食堂に到着した瞬間。
「わあ」
食堂はとっても素敵な空間だ。
窓が大きく、そこからは朝陽が差し込み、白いテーブルクロスが眩しく感じる。既に沢山の人が着席しており、食欲をそそる香りが漂っている。
案内された席には、サイタニとがたいのいい着物姿の青年、スラリと長身の袴姿の男性が座っている。その対面にウィルとアミルが着席していた。クリスと私が着席すると、サイタニは二人の男性を紹介してくれた。
がたいのいい青年はサイタニの従者で名前はヤマダという。元力士ということで、肩幅も広く、腕もがっしりしている。スラリとした長身で、少し長い髪を後ろで一本に結わいた男性は、サイタニと一緒にメリア魔法国へ逃げのびた一人で、名はイシカワという。
魔法を使い、東の国に戻るなら、この二人を供として連れて行きたいとのことで、サイタニはこの朝食の席に二人を連れてきていた。
ヤマダは口数が少ないが、ニコニコとして愛嬌がある。皆の話にもしきりに相槌を打っていた。一方のイシカワは、自分からもよく話し、メリア魔法国で見聞したことに驚き、魔法のすごさに感動している。
ヤマダとイシカワとも食事をしながら打ち解けることができ、この二人を連れ、東の国に転移することで話はまとまった。
「では身支度を整え、十五分後に、クリスくんの部屋に集合でいいかな?」
サイタニに聞かれ、私達が頷くと、「ではそれで」と朝食は終了となった。
クリスと私の部屋に皆が集合すると。
二手に分かれ、東の国へと向かうことになった。
クリス、サイタニ、私。
アミル、ウィル、ヤマダ、イシカワ。
守護霊獣は姿を変えることが求められた。銀狼なんて見つかればすぐ狩られてしまうし、ミルキーもハムスターとは認知されず、ネズミがいると駆除されかねない。
その結果。
変身魔法で帽子やステッキなどに姿を変えさせることになった。可哀そうであるが仕方ない。
そして。
東の国のどこへ向かうかだが。
「新端停車場という鉄道駅が出来たから、そこに向かって欲しい。住所は……」
サイタニに言われ、クリスは何度かその住所を復唱し、「大丈夫そうだ」と応じると、転移のための特殊な円陣を出現させた。そう、あの花びらのような七色に輝く円陣を。
これを見ただけで、サイタニ、ヤマダ、イシカワの三人が「おおっ」と雄叫びを上げる。だがすぐにその輝きが増し、目を開けていられなくなり、サイタニは「こりゃあ、すごいことが起きちゅう!」と叫んだ。
そして。
「……! ここは!」
今度は私達が叫ぶ番だ。
驚いた。
想像以上に立派な石造りの建物が目に飛び込んでくる。大勢の着物姿の老若男女に紛れ、洋装の人の姿も目に付く。立派な鉄道駅のホームも見えていた。
「うわあ、げに東の国に帰ってきた! 魔法は最高や!」
サイタニが子供のようにはしゃぎ、そこにアミル達も到着し、イシカワもサイタニと同じく興奮し、無口なヤマダでさえ「すごい」と呟いている。
「これが鉄道駅か。壮麗な作りだな。東の国――ウキヨエという絵で見た感じとは全然違うな。これだったらメリア魔法国と大差ない文化レベルに思える」
感心するウィルに対し、アミルは周囲をキョロキョロと見て、感嘆の声をあげる。
「なんかみんな、布を巻き付けたような不思議な服を着ているな。それに女の髪型も初めて見る。それにしてもここは市場でもあるのか? すごい人だ」
「鉄道駅ということは、ここに汽車が到着するのかな?」
クリスは冷静に周囲の様子を伺っている。
「クリスくん、ウィルくん、アミルくん、ニーナ嬢。汽車があと十分もすると、到着するそうだ。そこのホームに来る。そこから見られるらしいから、見て見よう!」
興奮気味のサイタニに連れられ、ホームの近くへと移動する。私達と同じように、汽車を見ようとする人々で溢れかえっていた。
「ニーナ、人が多いから、手をつないでおこう」
クリスのさりげない優しさに胸がキュンとする。「ありがとう、クリス」とその手に自分の手を添えると。クリスがぎゅっと私の手を握りしめる。
ヤバ~イ! 手をつないだだけで、もうキュン死しそう。クリスの一挙手一投足に反応してしまうのは、もうどうにもできないのかしら?
「母ちゃん、見て。髪が黄金みたいだよ」
「まあ、本当に。綺麗だねぇ」
「その隣の男性もまぁ、なんて長身でハンサムさんだよ」
「翡翠みたいな綺麗なグリーンの瞳の人もいる」
「ひゃあ、ルビーみたいな目だよ、その隣の人は!」
気づくと沢山の東の国の人に取り囲まれている。
どうやら異国の人はまだまだ珍しいようで、私達はかなり目立っているようだ。
「見世物じゃないき。あまりジロジロ見なさんなや」
イシカワさんが軽くいなすと、皆、「はい、はい」と視線を一度は逸らす。でも再び、チラチラとコチラを見る。汽車を見ようと集まっている人達なのだ。好奇心も旺盛なのだろう。
自分としては。前世の記憶があるので、日本人としての感覚がある。だから見た目は日本人に見える東の国の人達から、こんな物珍しそうに見られるのは不思議だった。
「見えてきたぞ!」
お読みいただき、ありがとうございます!
さりげなく優しいクリス♡
続きは明日『実に雅』を更新します。
引き続きよろしくお願いいたします~

























































