6:急ぎ『witchcraft』へ
ウィルの話を聞いたアミルは、あっけらかんとした反応を返した。
「へえー、そうなのか。フィッツ教頭、役に立つ情報を教えてくれたじゃないか。探す手間も省けた。その異国の人間を捕まえて、奪えばいいのだろう?」
「物騒なことを言うな、アミル。交渉して、買い取るんだよ!」
ウィルがアミルをたしなめたところで、『witchcraft』の店主・カールトンが現れた。
「これは、これは。ウィリアム第三王子さま、ようこそいらっしゃいました。今日は、アンソニー様はいらっしゃらないのですね」
「こんにちは、カールトンさん。こちらはギリス王国の第六王子のアミル、彼は大魔法使い見習いのクリス、そしてその婚約者のニーナ伯爵令嬢だ」
『witchcraft』の店主・カールトンの目が輝いたのは、ウィルからクリスの名を聞いた瞬間だ。魔術書や魔法のアイテムを扱うお店の店主だからだろう。当然と言えば、当然の反応だった。
「大魔法使い見習い……あのクリストファー様ですね! お会いできて光栄です。私はこの『witchcraft』の店主・カールトンと申しまして……」
最初はニコニコと笑顔でカールトンの話を聞いていたクリスだった。でもカールトンは3分近く、クリスのファンであること、魔法に関するあれやこれやについて話している。これは止めなければ、延々と話し続けるのではと気づいたクリスは、やんわりストップをかけた。
そこですかさずウィルが口を開く。
「カールトンさん、実は重要な話があるのですが……」
ウィルはカロランの剣であることは伏せ、昨日、東の国の異国人が購入した剣は、王族に伝わる紛失した宝剣である可能性が高いと告げた。その上で、購入者を知りたいこと、連絡を取りたいと話すと……。
「な、なんと! そうだったのですね。その宝剣を購入された東の国の方は……サイタニ様という方ですが、剣を手に入れた後、フィアマールから船で母国へ戻るとおっしゃられていました」
カールトンによると、サイタニは昨日の開店と同時にこのお店にやってきたという。自身は魔法の使い手ではなかったが、魔法について大変勉強熱心であり、詳しかった。その豊富な知識にカールトンは感動し、地下の特別な客を通す部屋に案内した。そこでサイタニは「強い魔力を感じる」と言い出したのだ。
その言葉にカールトンは、地下の保管庫で管理している宝剣のことを思い出す。売るつもりはなかったが、大変美しいもので、一見の価値がある品であることは確か。そこでサイタニに見せたところ……。
どうしても欲しい、母国へ持ち帰り、家宝にしたいと言い出した。ここでこの剣に出会えたのも一期一会と言い出し、拝み倒されたと言う。
「それでも売るつもりはなかったので、どうせ支払うことはできないだろうと高値を提示し、諦めてもらおうとしたところ……。『その額であれば払えないことはない』と言われてしまい。そこまでして欲しいのかと思い、ふっかけた値段ではなく、使われている金と宝石などの価値を考えた正規の値段で販売させていただきました。まさか王族に伝わる宝剣とは知らず……。何か罪に問われるのでしょうか」
カールトンは青ざめたが、ウィルが罪に問うつもりはないと落ち着かせた。そしてサイタニは既にフィアマールに向かったのかと尋ねると……。
「ええ。剣を購入された後、そのままフィアマールへ向かうとおっしゃられていました」
カールトンの答えを聞いたクリスは、すぐにウィルに伝える。
「フィアマールに馬車で向かった可能性は低い。車で向かったとなると……。昨日のうちに王都に到着し、そこで一泊しただろうね。メリア魔法国に来て、いきなりブルンデルクに向かったとは考えにくい。となると王都での観光やビジネスは既に済ませた後だろう。となると今日、王都に留まり何かすることはないだろうね。つまり今朝、フィアマールに向け、出発した。今日の夕方にはフィアマールに到着し、そのまま港から船に乗り込む可能性は……高いだろう」
クリスの言葉に即反応したのはアミルだ。
「なら転移魔法でフィアマールへ先回りすればいいわけだろう?」
「確かにそうだが。アミル、僕達はサイタニついて、東の国から来た異国人という情報しか分からない。そしてフィアマールは海辺のリゾート地であるが、貿易港としても栄えている。多くの船が停泊しているし、近年、東の国との交易も増えているんだ。サイタニという人物が自らの船を持つなら見つけ出すことは容易だが、そうではないとなると……。東の国へ直行で向かう船に乗るかもしれないし、経由便を使うかもしれない。見つけ出すのは相応に時間がかかりそうだ」
考え込むウィルに助け舟を出したのはクリスだ。
「カロランの剣には、強い魔力が込められているんだよね、ウィル?」
「ああ、そうだよ、クリス。勝利祈願が込められた宝剣だ。恐らく使われているのは古代魔法だと思うが、鞘から抜いたぐらいではどうにもならないと思う。だが古代魔法に使われる呪文を知っていれば、込められた魔法の一つや二つは発動しそうだ」
そうだったのか。
マジパラのイベント時、カロランの剣については宝剣であり、戦の際に王族が持参するものとしか説明されていなかった。でも古の魔法が使われていたなんて……。
Good morning!
お読みいただき、ありがとうございます!
『witchcraft』の店主・カールトンもクリスのファン~♪
続きは明日『本当にクリスは頼もしい』を更新します。
引き続きよろしくお願いいたします。


























































