2:夏の終わり
ブルンデルクを騒がせたフランシスとグレッグが王都へ戻り。
ウィル、ジェシカ、アンソニー、アミル、クリスと私の6人で、全力で夏を満喫し、夏季休暇も残り5日間となった時。アミルの部屋の望遠鏡で、少し夜更かしをして、皆で流星群を観察していた。
すると。
気づくとジェシカとアンソニーがソファに横並びで座ったまま、眠りに落ちていた。それはあまりにも唐突だったので、驚いていると。
アミルが突然、告げた。
「明日の午後、あの女、ユーリアがコンカドール魔術学園に顔を出す。フィッツ教頭と共に」
これにはウィル、クリス、そして私は驚いて目を丸くする。
「ジェシカとアンソニーはユーリアの件は知らないだろう? だからちょっと眠ってもらった」
アミルの言葉に納得する。
確かにユーリアの件はジェシカとアンソニーには話していない。二人に直接関わることではないし、何せユーリアの件には教会も絡んでいる。だから当事者でもない二人に話すことは控えようというクリスの判断に従い、ユーリアの件はジェシカとアンソニーには話していなかった。
「フィッツ教頭から今日の昼食の後に連絡がきたんだ。でも今日は午後、6人でパーティーに参加していただろう。なかなか話すチャンスがなくて。このタイミングで三人に話すことになった」
そう。今日の午後は、クリスの支持者であり、ブルンデルクで夏季限定店を展開していたメンバーとのお別れパーティーが開かれていたのだ。皆、2カ月の営業を終え、王都へ戻る。クリスとの別れを惜しむ彼らは、自分達でパーティーを主催し、私達を招待してくれたのだ。そこに6人で参加していた。
パーティーにはもう絶品料理とスイーツ、持ち帰りOKのフラワーアレンジメントやボトルシップも飾られ、みんな感動だった。
「フィッツ教頭からの呼び出し……ということは、例のユーリアの件だね」
クリスが落ち着いた様子で尋ねると、アミルはコクリと頷く。
「ユーリアを王都へ戻すんだろう。それで奪った魔力を戻す必要があるから。それで呼ばれた感じだ。……オレ一人でも別によかったけど、ニーナとクリスは……会っておきたいかな、と思って」
……! アミルが自分以外のメンバーに、こうやって気を配ることができる。ただそれだけでなんだか嬉しくなってしまう。半年も経たないのにアミルは人として確実に成長している。
「ニーナはどうなんだい? ユーリアに会いたい?」
クリスがライラック色の瞳で私を見る。
いつ見ても本当に美しい瞳。
「そうね。一応、もう卒業して私が王都に戻るまで会うことはないから……。最後に様子を確認したい気もするわ」
ウィルはブルンデルクにいるが、フランシスとグレッグ、ジェラルド、そしてオリヴァー他、ユーリアの『叛逆の力』が行使された男子は皆、王都にいる。ユーリアがちゃんと悔い改めているのか。再び、彼らに何かしないか。確認したい気持ちがあった。
一方、私の言葉を聞いたアミルはニヤリと笑う。
「そうなるかと思って、フィッツ教頭にはニーナ、クリス、ウィルが同席する許可はもらってある。ちなみにもうクリスにもウィルにも、ユーリアはちょっかいを出すことはないって。なんでもフィッツ教頭の『枢機卿の力』で、魅了の魔法やそれに類似する魔法をユーリアが行使しようとすると、それは即座にフィッツ教頭に伝わるし、彼女自身意識を失うらしい」
「それはすごいね。『枢機卿の力』は、僕達の魔法とは系統が違うとはいえ、そんなこともできるんだね」
クリスは感心し、「距離に関係なく、魔法の発動を感知するのは相当魔力を消費するから……」そんなことを呟きながら、どうしたらそんなことができるのかと分析している。ウィルも同じように考え込んでいた。
二人ともホント、勉強熱心だ。
私は二人のように分析できないので、代わりにアミルに尋ねる。
「アミル、じゃあ、私達3人も明日はコンカドール魔術学園に向かい、ユーリアに会えるということね」
「そうだよ、ニーナ。あの女がどれだけ更生したか、見てやろうぜ」
アミルが楽しそうに笑う。
ユーリアが更生……。
今、ユーリアがどんな感じなのか想像はつかないが、教会が動き、あのフィッツ教頭が再教育をしたのだ。きっと更生できていると思う。
「ジェシカやアンソニーはどうする? 明日の午後は、ニーナ考案の激うま菓子、水まんじゅうを作って、お茶会をする予定だったよな?」
ウィルの問いにクリスが答える。
「転校生が呼び出されたことにしようか。あと、ニーナは補習の件で話があるということでどうだろう? 明日の朝一番で二人に話そう」
確かにそれならジェシカもアンソニーも納得してくれそうだ。……しかし、「補習=私」のイメージが定着している。でも、夏季休暇明けからは大丈夫。卒業までちゃんと毎日学校に通う!
ひとまずクリスの案をウィルもアミルも私も快諾し、ジェシカとアンソニーの魔法は解除された。その後も15分程、流星群の観察を続け、明日もあるからと解散になった。
そしてクリスは自身の転移魔法で母屋までジェシカ、アンソニー、私のことを送ってくれた。
お読みいただき、ありがとうございます!
新エピソードは一味違う展開です。ぜひ最後までお楽しみください☆
なお、今回のエピソードの更新時間のご案内です。
平日は、7時後半~8時前半、週末・祝日は12時後半~13時前半で公開していきます。
前エピソードがチーター並の猛スピードで駆け抜けたので、本エピソードは毎日1話公開で、のんびりいきたいと思います。
ちなみに新エピソード公開までの間に新作が公開され、完結しました。
日曜日に初投稿→木曜日に12万文字超作品ですが完結!はやっ!
→6/24-6/26日間恋愛異世界転ランキング3位☆感謝感涙
→6/28週間恋愛異世界転生ランキング6位☆感謝感激
『完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
https://ncode.syosetu.com/n8930ig/
タイトルままで禁じ手である悪役令嬢からの婚約破棄宣告。
結果は……。
ページ下部に本作のイラストバナーがあります。
クリックORタップで目次ページに遷移可能です!
゜・。*☆*。・゜・。*☆*。・゜・。*☆*。・゜・。*☆
『もふもふ悪役令嬢の断罪が溺愛ルートなんて設定していません!』
https://ncode.syosetu.com/n1220ih/
攻略対象は全員、獣人族という乙女ゲームを企画した私。
あろうことか企画書段階のそのゲームの世界に、キャット(猫)族の悪役令嬢ミアとして、私は転生してしまう。
しかも覚醒したのは、まさかの断罪終了後。
でも、その断罪内容を考えたのは私です。
癒しをコンセプトにしたゲームだから、断罪内容も超かわいいから安心☆
例えば、ウルフ(狼)族の近衛騎士の団長から断罪される→マタタビを永年禁止。
フクロウ(梟)族の宰相の息子から断罪される→ねこじゃらしを永年禁止。
断頭台送りとか娼館送りとかナッシング!
あれ、でも、一つだけ。
パンチの効いた断罪内容があった気がするのです。
それは……「魔王へ嫁入り」。
え、まさか私の断罪内容って……。
世界で最も残忍・残虐・残酷で無慈悲な魔王と、結婚するしかないと気づいたのですが(ガタブル)。
全てが詰んだ後の断罪終了後シリーズ第四弾は、モフモフなキャット族の主人公と魔王のスローライフ。……のはずが、魔王との対面から事件勃発。ど、どうなるニャ~!?
癒しが欲しいなぁ~とクスッと笑いたいなぁ。
そんな気持ちから書いた作品でもあります。
よかったらご覧くださいませ☆

























































