29:はあああああああ!?
「アンソニーの言動が謎解きになったのですか?」
「そう。アンソニーはあの時、眼鏡をはずし、素顔になったニーナを見て、頬が色づいた。あれは明らかに素顔のニーナに対する好意の現れだ。それなのに僕が素顔のニーナをどう思うか尋ねると、不機嫌そうに『子供の頃から一緒で、知っていますから』と答えた。でも僕が問い直すと、今度は作り笑いで、『ニーナの素顔に恋をしてしまう男子生徒が増えそうです』と口にした。この行動を目の当たりにした瞬間、分かってしまった」
「何が分かったのですか!?」
正直、今の説明だけでは、何が分かったのか、私はさっぱり分からない。
「アンソニーは子供の頃、初めてニーナを見た時、その可愛らしさに恋をした。でも君は程なくして遠視と分かり、眼鏡っ子になってしまった。その状況を、アンソニーはどう感じたのか。それは、悲しくもあり、嬉しい、だ」
「悲しくもあり、嬉しい……?」
「悲しい――その理由は、常に君の素顔を見られる状態ではなくなったからだ。では嬉しいは? 眼鏡のニーナ、僕は好きだよ。でもアンソニーの価値基準だと、素顔のニーナの方が可愛い。眼鏡のニーナは、素顔に比べるとその魅力が半減する。だから他の男子がニーナに近寄る心配がない。可愛らしいニーナを知るのは自分だけ。自分だけの可愛いニーナ。でも今日から素顔になったニーナは、男子の注目を集めるだろう。だから作り笑いで、君に好意を持つ男子が増えてしまうと、アンソニーは口にする事態になった」
それは……、想定していない分析だ。
まさか、と思う反面、ウィルには話していないアンソニーの言葉「みんなが知らないニーナの素顔。眼鏡をはずすとこんなに愛らしいのに」とまさに合致する。
「次に、魔力が抑えられ、ニーナは沢山苦労があったと思う。どんなことで苦労した?」
「それは……。魔法の実技の授業、試験、守護霊獣の召喚、それに……」
これは言うべきかどうか。
一瞬迷うが、冷静に考えればすぐ分かることだ。
「魔力の弱い令嬢の末路は悲惨です。魔力は遺伝するので、結婚するなら魔力の強い相手がいい、というのが常識。伯爵家という肩書があっても、守護霊獣の召喚すらできない令嬢には、嫁の貰い手がつきません。しかも伯爵家という肩書ゆえ、市井に交じり仕事を得ることも難しい。そうなると、修道院送りになりかねません。そんな未来を想像し、暗い気持ちになりました」
ウィルは私の言葉に「うん、うん」と頷く。そして。
「これで分かっただろう?」
「!? 何がですか!?」
「だから、彼が君に魔法をかけた目的。遠視にしたのも理由があった」
「増々分からないのですが……」
「彼が君と交わした約束、それはズバリ、『僕が大人になったら、君を迎えに行く』これ一択だ」
「はあああああああ!?」
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本日も2話公開です。お楽しみください(^^♪