42:ジンクス
翌日の朝食の席で、ウィンスレット辺境伯から早速、晩餐会と舞踏会の予定が発表された。
その結果。
フランシス王太子……ユーリアと対峙することになるのは、明後日のディクソン公爵家での晩餐会だった。それが分かったので、朝食の後はすぐにクリスに部屋に来てもらい、グレッグに連絡をとることにした。
グレッグと話し、アフタヌーンティーをしながら、ユーリアの件について話すことが決まった。利用するお店はアクア・ラウンジという期間限定のお店。そう、クリスの研究の支持者の一人、アニカ・ラウクのブルンデルク初出店のお店だ。
まさに姉御肌なアニカは、私達のために、離れの個室を用意してくれることになった。直接、その個室へ集合で、クリスと私は早めにそこへ向かい、魔法を展開するつもりだ。オリヴァーに盗聴されないために。
「ではニーナ、15分後に、エントランスでね」
クリスには朝食後すぐに部屋に来てもらっていた。
この後の予定は、まず身支度を整える。それから百貨店に向かい、軽く昼食をとり、アニカの店へ向かうことになっている。そして集合はいつも通りエントランスということで、クリスは一旦自室へ戻った。
一方の私は。
準備を整え、姿見で最終確認。
シャーベットグリーンのドレスは、トップスがレースとリボン刺繍でライラクック色の花が散りばめられている。スカートを覆うチュールの一部にもリボン刺繍の小花とビジューが飾られていた。
髪にはクリスからプレゼントされたチェストツリーの花をモチーフにしたカチューシャをつけている。
ミルキーを肩にのせ、日傘とカバンを手に、ケイトに見送られ、部屋から出た。エントランスに迎えに来てくれたクリスにエスコートされ、馬車に乗り込んだ。
今日のクリスは……驚いた。シャーベットグリーンの麻のシャツに、落ち着いた濃い紫のズボン。まさか私のドレス生地と同じ色のシャツを着ていると思わず、驚いてしまう。当然、この一致をクリスに話すと……。
ビックリした。エントランスで待っていたクリスは、私のドレスが見えた瞬間、シャツの色を魔法で変えていたのだ!
「せっかくだからね。ニーナとお揃いがいいなと思って」そう言って微笑む。
クリスとお揃いの色味の服を着る。それはライラック色の衣装を身にまとうぐらい嬉しい。ペアルックほどではないが、二人が親しい関係だと周囲へのアピールにもなる。いくら婚約指輪をつけていても。クリスに見惚れる女性は多いから。
それに何よりもホント、お揃いであることが単純に嬉しい!
ということで私は最高にご機嫌だ。
百貨店につくと何をお返しにするか、店頭の商品を見ながらクリスと二人、考える。せっかくだからブルンデルクの名産品がいいということで意見は一致する。マーブルおばさんのバームクーヘン、北方のブルンデルクならではの毛皮製品、高級織物、保湿力のあるハンドクリームなどいくつかあるが。
「やっぱりブルンデルクと言えば、メイシーンの陶磁器かしら? スワンシリーズは王都ではほとんど販売されてなくて、ブルンデルクに行かないと入手困難と言われているから」
「そうだね。僕が王都で見たことがあるのは、プレートばかり。このサービングディッシュは初めて見たよ。しかもレリーフ状に浮かび上がるスワンの嘴に色がついているのは初めてみた。湖にも蒼色がうっすら入っているのも、とても美しく感じるね」
クリスが見つめるサービングディッシュは、私には見慣れたもの。だが、そうか、王都では見かけないのか。そうであるならば。
「ではクリス、これにしましょう」
「うん。そうしよう」
店員さんに在庫を確認し、必要数が揃うことが分かった。ギフト用に簡易ラッピングを頼み、支払いを終え、屋敷に届けてもらうようお願いし、お店を出た。
百貨店はメインとなる入口から中へ入ると、そこはホールになっている。そのホールには、巨大なオルゴールが設置されていた。毎時0分ピッタリにオルゴールが曲を奏でることで有名なのだが。時計を見ずに、オルゴールの音楽が始まる瞬間にキスをできると、二人の愛は永遠になるというジンクスで知られていた。
さっきクリスが懐中時計で確認した時。
11時までもうすぐだった。
そこで私はそのジンクスのことをクリスに話す。
すると……。
「素敵なジンクスだね。そこのベンチに座って挑戦しよう、ニーナ」
ミルキーをのせた銀狼がクリスを見上げ、クリスはそこで待機と合図を出す。銀狼は心得たとばかりに白い木製のベンチのそばで丸くなる。クリスと私はその白い木製のベンチに座った。すると。クリスは私をすぐに抱き寄せる。
「クリス、ジンクスはオルゴールが鳴り始める瞬間よ」
「ニーナ、時計を見ないでそれは難易度が高い。でも今からキスをしていれば、絶対に外すことはない」
な、なんて斬新な!
でも、確かに、その通りだ。
というか。
もしかしたら。
このジンクスはこれが正解なのかもしれない。
だってその時がくるまでキスを繰り返す。
それはそれだけお互いが好きだからできること。
そんな二人の愛が永遠になるのは……当然だと思う。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は「ニーナと僕は永遠」を20時前後に公開します!


























































