21:3桁から4桁を突破するかも!?
あんこの代わりのフルーツの用意は終わった。次は。
「次は葛粉とお水とお砂糖を鍋に入れて火にかけて、かき混ぜるの」
私の言葉を聞いたクリスは早速、鍋を手に持ち、尋ねる。
「どれぐらいかき混ぜればいい、ニーナ?」
「全体が透明になるまでお願いしてもいいかしら」
「もちろん!」
料理も得意なクリスは、真夏の太陽を思わせる笑顔で頷くと、早速、鍋に葛粉、お水、砂糖を入れ、火にかける。手際よく、無駄なく、軽快にクリスは準備を進めてくれる。素晴らしいわ、私の未来の旦那様♡
クリスが混ぜてくれている間に。
小さめのガラスの容器をテーブルに並べる。
「ニーナ、透明になったよ」
「ありがとう、クリス! このガラスの容器に鍋の中身を入れてもらえる? 容器の三分の一ぐらいまで」
「OK」
クリスがガラス容器に生地をいれると私がフルーツをいれていく。
「ニーナ、もしかしてフルーツをいれたら、もう一度生地を足すの?」
「そう! フルーツが隠れるように、足して欲しいの」
「まかせて」と言ったクリスは手早く作業を進めてくれる。
フルーツを入れ終えた私は、氷室でとってきた氷で作った氷水をバッドにいれ、そこにガラス容器を置いていく。
「これで生地がいい感じに固まったら、完成よ」
「ガラス容器に入っているから、中のフルーツが透けて見えて、綺麗だね。マスカット(グリーン)、ぶどう(パープル)、チェリー(レッド)、桃(ホワイト)、オレンジ。見た目もとても鮮やかだ」
クリスが後片付けをしながら嬉しそうに目を細める。
ガラス容器を並べ終え、私も後片付けを手伝う。
「そう。見た目の涼しさで、暑さを忘れるためのスイーツよ。飲み物は緑茶を合わせたいけど、ここはアイスティーでいいと思う。冷えるのを待つ間に、アイスティーを作るわ」
こうして。
フルーツ水まんじゅうとアイスティーが完成した。
ガラスの容器から取り出したフルーツ入りの水まんじゅうは、本当に宝石みたいだ。彩りがあり、涼し気で。離れの中庭で剣術訓練をしていた魔法騎士に声をかけ、皆でティータイムとなった。テラスの日陰で、テーブルと椅子を並べ、そこでみんなで水まんじゅうを味わう。
銀狼とミルキーは夏空の下でも元気よく中庭を走り回っている。その様子を眺めながら、水まんじゅうを口に運ぶ。オレンジを入れた水まんじゅうは、少し酸味のあるオレンジとくずの甘い生地が抜群にあう。しかもとってもジューシー!
「これはゼリーとも違う、初めての食感。ほんのりと甘く、美味しいです」
水まんじゅう初挑戦の魔法騎士達は、口々にその食感に驚き、美味しいと目を輝かせる。
「マスカットやぶどうが入っていると、本当に食感も楽しめるね。果汁のみずみずしさも相まって、とても美味しく感じる。ニーナ、これは本当に夏にピッタリのスイーツだよ」
クリスも喜んでくれた。
こうやってみんなで水まんじゅうを楽しんでいると。
ここがマジパラの世界であることを忘れそうになる。
だって和菓子を楽しんでいるのだから。
「ニーナ、水まんじゅう、みんな喜んでくれてよかったね」
ティータイムを終え、魔法騎士は訓練を再開し、クリスと私は後片付けをしていた。クリスが食器を洗い、私が隣でそれを拭いている。
「本当。よかったわ。みんなの口に合うよう、フルーツをいれて正解ね」
「……フルーツ以外のレシピもあるの?」
「そうね。あんこ、っていう、小豆を甘くしたものが本当は私が好きなのだけど……。でもこの国の人の口には合わないと思うの」
豆はスイーツではなく、三度の食事で使うという認識が、西欧では根強い。だから西欧風のマジパラでもそうであろうと、あんこの代打でフルーツを投入していた。
そのことを思い出しながら答えたわけだが。
クリスは洗い物をする手を止め、ナプキンで手を拭いた。
まだ洗い物は終わっていない。
どうしたのだろう?と思いながらクリスを見る。
するとクリスは静かに口を開いた。
「ニーナ。どうしてこの国の人には合わない、なんて言い方になるの? やっぱりニーナは、僕の知らない世界と何かつながりがあるんだね」
しまった! クリスは勘がいいから。
前世での知識を活用する時は注意しないと!
「そ、そんな。前にもそんなことを言われたけど、ないから、そんな別の世界とつながっているなんて」
そう弁明するが。
クリスはぎゅっと私を抱きしめる。
その瞬間、大好きなクリスの香りに包まれた。
「ニーナに出会えたこと、僕は運命だと思っている。だから絶対に。離れないで」
「それは勿論! クリスも……」
「僕はずっとニーナのそばにいるよ」
間髪を入れず即答したクリスは。
自身の気持ちを示すように、ふわりと優しいキスをする。
ああ。
愛されていると実感です。
もう本当に。
夏季休暇、万歳!
二人きりだから、離れの厨房でキスだって出来るのだ。
みんなと一緒も勿論、楽しい。
でもこうやって二人きりなのは……最高!
何度目になるか分からないクリスの溺愛モードにデレデレになる。
そこでふと思う。
もしかすると。
もしかしますと!
いや、本当に。
夏季休暇の最中に、クリスとのキスは3桁から4桁を突破するかも!?
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は「僕のためにそうしてくれたの?」を16時前後に公開します~

























































