12:会いたくて恋焦がれて
聞きたかったことを切り出そうとしたところ、セスは……。
「ニーナお姉様。誰の情報が知りたいのですか? 王太子、ユーリア、筆頭公爵家のグレッグ。あ、でもグレッグはブルンデルクの別荘に向かったから、もうニーナお姉様も知っていますよね?」
……!
セスにはすべてバレている!?
「え、ええ、グレッグ様はブルンデルクにいるわ。そう、舞踏会に招待されたから」
「え……、なんで? なんでグレッグがニーナお姉様を舞踏会に誘うんですか? ニーナお姉様にはクリストファー様がいるんですよね? ニーナお姉様とグレッグってどういう関係なんですか?」
突然セスの声音が変り、絶句する。
クリスと私のことは……多分、認めてくれていると思う。
でも、クリス以外の男性が私にちょっかいを出すと……セスは許せないのかもしれない。
「セ、セス、落ち着いて頂戴。私はウィンスレット辺境伯家でお世話になっているから。ブルンデルクと言えば、ウィンスレット辺境伯家でしょ。当然、舞踏会にウィンスレット辺境伯家は招待されるわ。私はそのおまけよ、おまけ」
「……なるほど。そうですよね。婚約者がいるニーナお姉様に手を出すなんて、ありえないですからね。そうなると……王太子とユーリアの近況を知りたいのですね。ニーナお姉様?」
よかった。納得してもらえた。
しかも間違いない。
クリスを私の婚約者と認めてくれている。
「そうね。王太子様とユーリア様はどうしているのかしら? グレッグ様だけブルンデルクに来ているということは。王太子様とユーリア様はいよいよ婚約なのかしらね?」
「いえ、そうでもないようですよ。相変わらず、宙ぶらりんで。宙ぶらりんですが、二人して今はアクスブルクですよ。明後日、王都に戻るらしいですが。王太子がアクスブルクで公務があり、でもそれは一日で終わるらしいのですが、丁度、花火大会と宝石の見本市があるから遊びがてらユーリアはついていったみたいですよ。まあ、宝石の一つや二つ、おねだりでもするんじゃないですか」
さすがセス!
王太子の公務については皆、知っているだろう。だがユーリアを伴っているとか、花火大会や見本市に行くなんて、セスではないと得られない情報だろう。それにしてもアクスブルクに行っているのか。クリスが風獣のクリスタルを見つけるために足を運んだ地だ。
「セス、教えてくれてありがとう! グレッグ様がブルンデルクにいるから、てっきり二人も……と思ったけど、違うようね」
御礼を伝え、その後は。
オルゴールミュージアムに行ったことを話した。そしてお土産にオルゴールを買ったので、送った旨を伝え、電話切った。
電話を切ると。
心底安堵できた。
王太子とユーリアはブルンデルクにはいない。いるのはグレッグだけ。大丈夫。明後日の舞踏会に足を運んでも、ユーリアに会うことはない。
肩の力が抜けた私は、ウィンスレット辺境伯から受け取った残りの招待状を、次々と開封していく。すると。
ドアがノックされた。
あれ?
ケイトには私がクリスの部屋に向かってから掃除をお願いしていたのだけど。
そう思い、ドアを開けると。
「クリス!?」
「ニーナ!!」
ドアを開けるなりクリスに熱烈に抱きしめられ、驚き、当然だが一気にテンションが上がる。なにせ百年ぶりの再会という勢いで抱きしめるから。透明感のある清楚な香りに包まれ、もう瞬時に夢見心地だ。
「待ち合わせ時間より早いけど、ニーナに会いたくて……。我慢できずに尋ねてしまったよ。ニーナ、忙しい?」
私に会いたくて、居ても立っても居られず、会いに来てくれたの!?
その事実にどうしたって頬が緩む。会いたくて恋焦がれて、わざわざ部屋を尋ねてくれたのだ。こんなに嬉しいことはない。何よりもこんなに大好きアピールされたら……。もう何度目だろうか。女冥利に尽きます!
「忙しくなんかないわ。私も本当はクリスに会いたかったのよ。でもクリスは寝るのが遅いだろうと思って。寝坊しても大丈夫なように、会う時間を遅めに設定したの」
「気を遣ってくれたんだね。ありがとう、ニーナ。でも僕は睡眠より、ニーナといる方が元気になれるから……」
もう朝からラブラブ全開のクリスに、完全に骨抜きにされてしまう。今のクリスの周囲には♡マークが沢山飛び交っていそうだ。
このままラブラブしたいところだが。もう少ししたらケイトも部屋の掃除にやってくる。ひとまずクリスに舞踏会の招待状を見ていたことを伝え、ソファの前に広げていた招待状を束ねた。
「これを持ってクリスの部屋に行ってもいい?」
「もちろん」
そう言って微笑むクリスは。
実に爽やか。
白シャツにライトブルー×白×ライラックの縦縞ストライプ柄のジレジレ、ライトブルーのズボン。左手には宝探しの時にもつけていた細い革製のバングル。バングルには、ライラック色の宝石が埋め込まれている。
う~~~ん。
シンプルだけど映える。似合っている。
クリスは私が束ねた招待状を右手に持ち、左手で私と手をつなぐ。
足元に銀狼が寄り添う。ミルキーは私の肩にいた。
「荷物があるからね」とウィンクしたクリスは。
あっという間に自身の部屋へ転移魔法で移動する。普段はこんなに頻繁に、クリスは魔法を使わない。でもきっとアミル並に日常的に魔法を使えるだけの魔力を持っているのだろう。
部屋についたクリスは、テーブルに招待状の束を置き、私をソファに座らせると、自身も隣に腰を下ろす。銀狼はいつも通り、クリスの足元に鎮座し、ミルキーは私の肩から降り、銀狼のところへ向かう。本当に銀狼とミルキーはクリスと私みたいに仲良しだ。
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続きは12時頃に「私だけの王子様で騎士」を更新します~

























































