25:二人の王子様
翌朝。
朝食を終え、身支度を整えていると、ジェシカが部屋にやってきた。
「ニーナ、聞いて! ウィリアムさまが私達と一緒の馬車で登校するそうよ。なんでも王室の馬車で登校すると、取り囲まれて大騒ぎになっちゃうからって。昨日なんて、馬車を取り囲まれてしまったから、ウィリアムさまは魔法で馬車から抜け出して、別の門から登校したそうよ」
「そうなのね。でも確かにそれは名案だわ。馬車は四人乗りだから、問題なくみんな乗れる」
ウィルがいる限り、アンソニーも落ち着いてくれるはずだ。
ちなみに昨日、ジェシカにウィルが一緒に帰らないかと声をかけた理由。
それは、ジェシカに声をかければ、私も一緒に帰ることになるのではと考えたかららしい。ウィルは実際、「どうせ同じ屋敷に向かって帰るんだ。よかったらジェシカのお兄さんや他に同じ方向に帰る者がいれば、一緒に乗せるよ」と提案したという。
でもまあ、ジェシカとしてはウィルと二人きりになれるチャンスだ。アンソニーや私に声をかけなかったのは仕方ない。ここはウィルの読みが甘かったと言わざるを得ない。
そんなことを思いながら、朝からはしゃぐジェシカと共に部屋を出る。
エントランスに向かうと、そこには……。
「やあ、みんな、おはよう」
制服姿のウィルが私達に手を振って笑顔を見せる。
改めてその姿を見て、ハンサムだなぁと思ってしまう。
アンソニーは王道の優しい感じの王子様。
ウィルはハンサムで逞しい王子様。
二人を見ると、そんな風に思えてしまう。
ウィルは正真正銘の王子様だが、日焼けしているし、精悍で、魔力も相当強い。それに例の彼に近づこうと武術もやっているから、何かあれば魔法騎士と同じぐらい動けるはずだ。
そんなことを思っていると、ジェシカの熱いため息が聞こえた。
「……はあ。ウィリアムさま、本当にハンサムで精悍よね。あの腕でお姫様抱っこをしていただきたいわ……」
うっとりしたジェシカはウィルに熱い視線を送った後。
「でも、筆頭魔法騎士のジェラルドさまも素敵。彼だけに許される白の軍服姿で騎乗されて、肩には守護霊獣のオオタカ。絵になるわ……。大人の男の魅力を感じますわね」
ジェシカの目線を追い、馬車の護衛についたジェラルドの姿をチラリと見る。
筆頭魔法騎士だけが着用を認められる白のマントと白の軍服。本物の騎士だから、体の鍛え具合が半端ない。軍服を着ていても分かる上腕の筋肉。そのそばにいるオオタカさえも、ジェラルド同様、凛々しく見える。
「二人とも、ウィリアムさまが既に馬車に乗っている。早く、乗って」
アンソニーに促され、ジェシカと私も慌てて馬車へと向かった。
◇
いつもなら、ジェシカが先に乗り、その後に私が乗って、ジェシカの隣に私が座る。でも、今日は既にウィルが馬車に乗っており、アンソニーはそのウィルの隣に座っている。このままジェシカが馬車に先に乗ると、ウィルの対面の席にジェシカは座ることになる。
「ニーナ、私、隣ならまだしも、正面なんてまだ無理。あの素敵な顔を正面で見続けるなんて無理だわ。だから先に乗って頂戴」
そう言われ、私が先に馬車に乗り、ウィルの対面の席に座る。その後にジェシカが乗り込むと、馬車が走り出した。
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