11:彼の目的は?
ウィンスレット辺境伯は、筆頭公爵家からの舞踏会への招待を受けてはどうかと私に提案している。
「承知いたしました。招待を受けたいと思います。クリスには後程話しておきます」
マジパラの攻略対象には近づきたくない。
これは大原則だ。
だが、ウィンスレット辺境伯が言う通り、ディクソン家は筆頭公爵家だ。その招待となれば無視することなんてできない。
しかし。
どうして春以降、音沙汰がなかったのに、急に舞踏会の招待なのだろう……? 避暑のため、ブルンデルクにやってきた。知り合いが少ないから私のことを思い出し、招待することにした……?
いや、それはないだろう。
筆頭公爵家ともなれば、ブルンデルクに住む上流貴族とは知り合いのはずだ。それに避暑で王都からやってきた貴族も沢山いる。当然、筆頭公爵家の知り合いの貴族もいるはず。わざわざ私を招待する必要性はないと思うのだが。
「ではニーナ、出席ということで、私からディクソン公爵家には連絡をいれておく」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
ウィンスレット辺境伯に返事をして朝食を終えると、ディクソン公爵家の招待状他を手に部屋へ戻った。今日はクリスの部屋に行くことになっている。ただ時間はあと1時間後。
クリスはきっと私より遅い時間に寝ているはずだ。そして離れにいるクリスは、食事は私達とは別々。だから寝坊しても大丈夫なように、会う時間を少し遅くしたのだ。
ということでまだたっぷり時間はある。まずは身支度を整え、ディクソン公爵家の招待状を開けることにした。
ケイトに手伝ってもらい、着替えはすぐに完了。
姿見で確認する。
トップスはブルーで、スカートの裾へ向かい、ライトブルーへ見事にグラデーションしている。胸元は銀糸の刺繍と白のレースで飾られていた。ウエストにはフリルのリボンがあり、いいアクセントになっている。
髪には、クリスが宝探しの時にプレゼントしてくれたチェストツリーの花をモチーフにしたカチューシャ。何もせずストレートヘアでおろした状態だ。さらに王都でクリスがプレゼントしてくれたライラックの花のネックレス。
何気にパンプスもライラック色で、今回はアクセサリーでクリスの瞳の色を取り入れた。これはジェシカのコーデ―を学び、実践してみた感じだ。
身支度は問題なしと。
姿見から離れ、応接室のソファへと向かう。
クリスが私のために作ってくれたオルゴールは、応接室のテーブルに飾ってある。せっかくなのでオルゴールを聞きながら、開封作業を行うことにした。ミルキーはオルゴールを不思議そうに眺めている。
ペーパーナイフを手に、まずはディクソン公爵家の招待状を開けた。
「……!」
招待状の中には折り畳まれた手紙が同封されていた。
開くとそこには……。
突然の舞踏会の招待となり、すまないというお詫び。どうしても直接会って伝えておきたいことがある。もし舞踏会で会えないならばお茶をしたいなどが書かれていた。手紙の最後にはグレッグの名前が書かれている。
直接会って伝えたいこと……?
一体なんだろう?
さすがに王都で窮地を救った際の御礼は終わっているはずだ。それ以降に接点もない。
もし。
グレッグが私の知るマジパラのグレッグまんまだったら。婚約者がいる私に手を出そうとしていると思ったりもするが。この世界のグレッグは、私の知るグレッグと真逆だ。軟派ではなく、硬派。ガチガチで真面目なのだ。よって直接会って伝えたいことは、きっと色恋沙汰とは無縁の話だろう。
色恋沙汰とは無縁。
いや、グレッグはユーリアと急接近していなかったか。
していると弟のセスは言っていた。
……。
まさか、ユーリアもブルンデルクに来ている……?
この舞踏会にも参加する……?
不穏な予感に全身から汗が拭き出す。
いや、まだユーリアがブルンデルクに来ているとは決まっていない。
一旦、落ち着こう。
手紙を置き、招待内容を確認する。
舞踏会は明後日だ。
明日はクリスとオペラを見に行くことになっている。
明後日であることに安堵した。
さて。
この明後日の舞踏会に、ユーリアは参加するのか。
ブルンデルクにいるのか。
これを知る方法は……一つしかない。
クリスとの婚約を祝ってくれた。
すぐに気持ちが切り替わらなくても。
私と一緒に暮らすことはできないと理解しているだろう。
それに。
今は絵葉書のやりとりを一カ月に一回の頻度でしている。
王都から届く絵葉書に私に執着する様子は感じられない。
だから。
大丈夫だろう。
意を決して受話器を取る。
「ニーナお姉様! おはようございます。絵葉書が届いた日から23日ぶりですね」
「え、そうなの!?」と言いかけて、それは飲み込む。
そんなことを聞いたら、「23日と15時間49分ぶりです」とかって、しれっと言われる気がしたからだ。
「そうね。セス、元気にしていた? もう夏季休暇は始まったのかしら?」
「もちろん、元気です! 身長がまた伸びましたよ。それに勿論、夏季休暇は始まっています」
良かった。普通に健全な世間話ができている。
「身長が伸びたのね。セスはまだ成長期なのよ。ところでセス……」
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続きは明日の11時台に『会いたくて恋焦がれて』を更新します~
Episode4、開始2日目ですが、もう11話公開されています。
悪役令嬢完璧回避史上、最速スピード!

























































