4:いつだって僕はニーナを抱きしめるよ
チョコレートファクトリーは、本当に甘くて甘くてとろけそうだった。チョコレートと一緒にしたキスに、完全に心を持って行かれた。休憩前はもっとクリスに甘えたいと思ったが、満たされた。というか……。もはやチョコレートを見たり、その香りを感じたりするだけで、そのキスを思い出し、メロメロになりそうだ。
今は既にチョコレートファクトリーを出て、オルゴールミュージアムへ移動してきたのだが。
まだなんだかチョコレートの香りを感じてしまい、ドキドキが続いている。ちょっとでもクリスに何かされたら、全身の力が抜けてしまいそうだった。
「ニーナ、見て、万華鏡オルゴールがあるよ」
「初めて見たわ。どうなっているの!?」
「オルゴールのネジを回すと、万華鏡を支える車輪が回り出す。この状態で万華鏡をのぞくと、オルゴールの音楽を聞きながら、次々と変化する映像を楽しめるんだよ。試してみる?」
私が頷くとクリスが係員に声をかけてくれる。
係員がオルゴールのネジを回してくれて、万華鏡をのぞくと……。
なんとも粋な演出だ。
可愛らしい曲に、天然石や鳥の羽が生み出す幻想的な万華鏡の映像は、よく合っている。とてもロマンチック。すっかり気に入ってしまった。
「ねぇ、クリス……」
嬉しくて顔を上げた瞬間。
まさかそんなにクリスの顔が近い位置にあると思わず、心臓が大きく反応してしまう。あの美貌を至近距離で見るのは危険。それでなくてもチョコレートファクトリーの余韻で、ドキドキしているのだから。ホント、危うく腰を抜かすところだった。
「僕も見てもいい? ニーナ」
「も、もちろん……」
万華鏡をのぞくクリスの横顔。
なんて美しいのだろう。
オルゴールミュージアムの淡いライトの下。
アイスシルバー色の髪、ライラック色の瞳、白磁のような肌も、セピア色を帯びている。それはまるで絵画の人物みたいだ。思わず指でフレームを作り、クリスの姿をおさめてしまう。
「ニーナ、何をしているの?」
私の動きに気づいたクリスが、不思議そうに私を見る。
「クリスが素敵過ぎて。まるで絵画の人物みたいだから。思わず指で額縁を作ってみたの」
「そうか。僕が絵画に収まったら、ニーナは部屋に飾ってくれる? そうしたらずっとニーナの部屋にいられるね」
確かに!
いや、でも、2次元では抱きしめてもらうことができなくなってしまう!! それだとマジパラをプレイしていた頃と変わらなくなってしまう。断然、三次元がいい。だって私は……。
「クリス、それはダメよ。私はクリスに抱きつきたいし、甘えたいもの!」
私の言葉にクリスは。
瞬時に瞳が甘く輝く。
「おいで、ニーナ」
その瞳で「おいで」なんて言われたら。
もう尻尾をふってすり寄ってしまう。
クリスのそばでは銀狼が、私の代わりで尻尾をふってくれている。
「いつだって僕はニーナを抱きしめるよ」
肩にミルキーがいるのにクリスは器用に私を抱きしめる。
透明感のある清楚な香りがたまらない!!
「ニーナもいいんだよ、いつでも抱きついてくれて」
実は周囲に何組か他のお客さんがいるのだけど。
もうこのラブラブモードを止めることができない!
チラッとこちらを見るお客さんがいた。
でもクリスを見るとポッと頬を赤くして、クリスに見惚れてくれている。もはや映画やドラマのイケメンの俳優さんが、キュンとするシーンを演じている、それを見ている、ぐらいの気持ちになってくれているのかもしれない。
「そうだ、ニーナ。ここではオルゴールを作ることができるんだよ。挑戦してみる?」
「そうなのね! ぜひ挑戦したいわ」
「うん。じゃあ、行こう」
クリスは私の手を取り歩き出す。
ぬいぐるみタイプのオルゴールが展示されているエリアを抜けると、オルゴール自作体験コーナーが現れた。係員にクリスが体験できるか尋ねると、「勿論です! どうぞこちらへ」と笑顔で応じてくれる。
案内された大きなテーブルには椅子がいくつも置かれており、何組かが既に体験中だった。席に座ると早速、係員が説明してくれた。まずは土台となるオルゴールの曲とケースを選ぶという。曲はなんと200種類以上あった。ケースは20種類。
「ニーナ。一つ提案をしていいかな?」
カタログをパラパラとめくりながら、クリスが私に声をかけた。銀狼とミルキーはテーブルの下で丸くなっている。
「どうしたの、クリス?」
「僕はニーナに贈るオルゴールを作る。だからニーナは僕に贈るオルゴールを作るのはどうかな?」
クリスが少し照れたように尋ねる。
その様子に私のハートは古典的だが、ズキューンと貫かれた。
「なんて素敵な提案なの、クリス! 賛成よ。そうしましょう。名案よ」
「本当に? 嬉しいな」
も~~~~~。
クリス、可愛すぎる!
クリスのためならオルゴール、100個でも200個でも作りたくなってしまう。
同時に。
遊び気分から真剣モードに私は切り替わった。本格的にカタログを見て、オルゴールとケースを選ぶことにする。
選んだケースに、ガラス細工、木彫りの置物、ぬいぐるみなどを飾ることができた。となると何を飾るか考えた上で、ケースを選んだ方がよさそうだと判断する。
「クリス。私、飾りのパーツを見てくるわ」
「うん。いってらっしゃい」
こうして。
作業すること30分。
クリスに贈るオルゴールが完成した。
お読みいただき、ありがとうございます!
12時台に「クリス愛が高まり、もう止まらない」を更新します~
サクサク読めるよう、後書きは極力シンプルにしますね!

























































