3:ドキドキのチョコレート休憩
視線を私に戻すと、クリスは話を再開する。
「そうだね。ポリフェノールにはニーナが言うような効果があると言われている。他にもアンチエイジングや脳を活性化させるとも言われているけど、このポリフェノールはカカオ以外にも赤ワイン、コーヒー、ブルーベリー、りんごなどからも摂取できるよ」
ブルーベリーやりんごからも摂取できるなんて知らなかった!
「でもね、ダントツでポリフェノールが摂取しやすく、含有量が多いのが、チョコレート。中でもダークチョコレートがおススメなんだよ。さっき食べた料理のほとんどにチョコレートが使われていたけど、デザート以外は甘くなかっただろう? それはカカオの含有量が多かったからだ。だから今日の昼食はとても体に良いものだったと思う」
そこでニッコリ笑うクリスは。本当になんでも知っている。好奇心旺盛、なだけじゃないと思う。本当にスゴイ。ほんの一時間前は、馬車であんなに私に甘えていたのに。こうやってチョコレートの知識を披露する時は、とてもキリッとして、カッコいい。甘々も素敵だが、このキリッともたまらない。
「じゃあ、博物館の中も見学しようか、ニーナ」
そうクリスに言われ、早速館内の展示を見始める。
ミルキーは肩に、銀狼はクリスの後をテクテクついてきていた。
カフェがあるのは勿論、チョコレートができるまでの工程も展示されている。当然のように館内には、チョコレートの甘い香りが漂っていた。甘いチョコレートの香りに包まれ、クリスと恋人つなぎで歩くことになった。
正直、展示物は目に入るが、内容はまったく頭に入って来ない。甘い香りとクリスと手をつないでいる今のこの状態に、完全に酔っている。もっとクリスに甘えたい!
一方のクリスは。
大変熱心にチョコレートができるまでの工程について、パネルに書かれている以外の説明を付け加えてくれる。
「チョコレートの原料となるカカオ豆は、まず発酵させ、乾燥させることが必要なんだよ。カカオの豆はカカオポッドと呼ばれる実の中に含まれているけど、白い果肉に包まれている。この果肉を発酵させ、カカオの豆を取り出すことになるんだよ」
「へぇ……」
クリスに甘えたいモードの私は。
返事をしつつも、内容が頭に入って来ない。
それでもいくつもの工程を経て、完成したチョコレートを試食できるコーナーに到着すると。
さっき昼食を食べたが。まだオーソドックスなチョコレートは食べていなかった。だから型抜きされたハート型のチョコレートを受け取ると、テンションが上がる。
「あ、お客様。おめでとうございます!」
試食のチョコレートを受け取ったクリスに、係員が声をかける。どうしたのかと思ったら。本日の百人目の来場者ということで、特別に顔のサイズぐらいあるハート型のチョコレートがプレゼントされた。
「クリス、すごいわ! こんなに大きなチョコレート、初めて見たわ」
「そうだね。早速、食べる? ニーナ」
「え、私も食べていいの?」
「勿論。こんなに大きいのだから。半分こだよ。このまま中庭に出て、チョコレート休憩をしよう」
夏季休暇中だから混雑していると思ったが。
今は正午。カフェが大混雑で、館内は人も少なかった。そして中庭には白い椅子とテーブルがいくつか置かれ、休憩できるようになっているが、ほとんど人はいない。そこに腰かけ、チョコレートを食べることにする。
銀狼とミルキーは中庭の芝の上で追いかけっこをしていた。
「ハートを真ん中で割りたくないから、ここから割ろう」
そんなことを気にするなんて。
クリス、可愛いなぁ。
自分の知らないクリスの新たな一面を発見する度に。
当然だが、胸キュンしてしまう。
「はい、ニーナ、口を開けて」
クリスが食べやすいサイズに割ったチョコレートを私に食べさせてくれる。
パクリと頬張るチョコレートは甘くて美味しい。
クリスに食べさせてもらうことで、甘さが増した気がする。もしかして口の中で推しフィルターが作用している!?
「クリスも、どうぞ」
今度は私がクリスに欠片を口元へと運ぶ。
嬉しそうにその欠片を口にするクリスは……。
もう、見ているとキュンとなってしまう。
チョコレートの食べさせあいっこは楽しくてたまらない。
上質なカカオが使われているからか、甘いのにしつこくなく、食べ飽きないのが不思議。気づけばあんなに大きかったチョコレートも、残り僅かになっていた。
丁度、ハートの頭の部分、アーチ型の部分が、スライスした蒲鉾のような形で残っている。それを見たクリスがとんでもない(いや、とっても素敵な)提案をしてくれた!
「ニーナ、これを半分こしよう」
ナプキンを使い、てっきりこの蒲鉾型の残りのチョコレートを半分に割るのかと思ったら。
「ニーナ、口を開けて。そのまま噛んだら待っていて」
半分に割ることのない残りのチョコレートを、私の口に運んだものの、そのまま歯で噛んだまま、食べずに待つように言った。
何をするのかしら?
そう思ったら。
私が口で齧った状態のチョコレートの端を、クリスが食べ始めた。
こ、これって……!
大学の時の飲み会で、スティック状のチョコレートのついた焼き菓子を、男女双方が両側から食べて行く、あの罰ゲームみたいだ。
わ、わ、わ……!
クリスの顔がどんどん私の顔に迫ってくる……!
もう心臓がとんでもないほどバクバクしていた。
クリスってば、こんな、こんな……。
周囲をチラッと見るが、幸い(?)なのか誰もいない。
そう思った瞬間。
クリスの唇が触れたと思ったら……。
「ニーナの唇はとっても甘いね。その唇も食べてしまいたくなるな……」
甘々な囁きが聞こえ、本当に甘い甘いキスをクリスとしていた。
Episode4、早起き朝更新をお読みいただき、ありがとうございます!
特大サプライズは蕗野冬先生の表紙でしたが、いかがでしたか~?
ニーナ&クリスのこの姿を思い浮かべながら、Episode4をお楽しみください!
このEpisode4ですが
→止まらない溺愛ルート
→ニーナ最大のピンチ
→複数の人物たちの思わぬ活躍
こんな感じでかなりスリリングにお楽しみいただけます。
1話辺りのボリュームも増量&均一にし
更新頻度もアップします!
お昼(11時~13時)に2話
夕方(16時~18時)に1話
夜(22時~24時)に1話
毎日4話更新していきます。
続きがその日のうちに読める!
読みごたえも抜群!
ということで読者様の満足度向上に努めます。
それではEpisode4、エピローグまでお楽しみください!

























































