2:休日遠出デート
翌日。
早速だがオルゴールミュージアムのあるコルンに行くことにした。
朝食の席でコルンへ行くことを伝えると、ウィンスレット辺境伯は「ニーナとクリストファー様の行動力とそのスピードは、ジェシカとアンソニーにも見習わせたい」と目を丸くする。そして「夕食もせっかくだからクリストファー様と楽しんでくるといい」と言ってくれた。
基本的に夕食は屋敷でとるのがデフォルト。つまりは夕食には屋敷に帰ってくるという、暗黙の了解の門限があるわけだが。どうやらそれが免除されたらしいと分かり、思わずドキドキしてしまう。少しだけ、不良少女の気分だ。
何はともあれ、休日遠出デートのために。
目一杯オシャレをする。
まずは動きやすいようにと選んだのは、ワンピースだ。白地にライラック色×チェリーピンク色のチェック柄で、ウエストにはライラック色のリボンベルト。パフスリーブの袖と裾にはライラック色のレースが飾られている。
髪は左側で編み込みにしてゆるふわでまとめ、ライラック色のゴムでシンプルにまとめた。代わりに耳にはクリスがプレゼントしてくれたライラックの花モチーフのイヤリング。
これで白の日傘と白のカバンで完成だ。
「なんだか女学生の休日デートの装いとしてピッタリですね、ニーナさま。私もデートをしたくなってしまいます……」
ケイトは珍しくそんなことを言いながら、部屋を出て行く私を見送ってくれる。ご機嫌でミルキーを肩に乗せ、エントランスに向かうと。
ヤバ~~~~~い!
とっても素敵な装いのクリスがいる!!
まるで。
私の装いにあわせてくれたかのように。
ライラック色×ピンク×白の縦縞シャツに、白のスリムなズボンをはいている。白は膨張色だから、ホント、スリムな男子がはかないと、残念なことになってしまう。でもクリスは着やせする細マッチョだから、白のスリムパンツも難なく着こなしてしまうのだ。
さらに~~~。
前髪の分け目がいつもと違う!!
ただそれだけで、印象がガラリと変わっている! クリスの新たな素敵な一面を見つけた気持ちになり、胸が高鳴る。
「ニーナ、おはよう! 今日のワンピースもとても可愛らしいね。学生らしい初々しい感じがするよ。もっと近くに来て、よく見せて」
クリスは「近くに来て、よく見せて」と言っているのだけど。なぜか両手を広げ、抱きしめる気が満々に見える。そして実際、私が少し早歩きで駆け寄ると。
「ニーナ、可愛い」とぎゅっと抱きしめる。抱きしめた後はおでこやら頬やらへのキスのシャワー。ここはウィンスレット辺境伯家の屋敷のエントランス。一応、今、ここにはクリスと私しかいないのだが。いつ、誰が通りかかるか分からない。そのスリリングな状況から引き起こされるドキドキと、甘々クリスに心臓はもう破裂寸前。
結局。
朝からクリスの溺愛で、私はもう立っていられなくなってしまう。完全に私を骨抜きにしたクリスは、嬉しそうにお姫様抱っこで私を馬車へと運んでいく。そんなクリスの後ろを銀狼が尻尾を振りながらテクテクついてくる。その銀狼の背にミルキーはちょこんとのせてもらっていた。
馬車に着いたら着いたで、今度は唇へのキスの雨が降ってきた。
コルンにはお昼前の到着を予定していて、屋敷からはかなりの距離があるのだが。あっという間についてしまったと思えたのは……クリスの溺愛ぶりのおかげだろう。なにせ途中の休憩で数分離れるだけでもクリスは寂しがり、数分後に再会すると。まるで百年ぶりに出会ったぐらいで喜んでくれるのだから。
大好きなクリスから全身で大好きとアピールされ、一時も離れたくないと抱きしめられたら。それはもう幸せの一言に尽きる。
もう、本当に。
私の頬は緩みっぱなしだった。
◇
11時過ぎにコルンの街へ着くと。
そのままクリスが言っていたチョコレートファクトリーという博物館へまず向かった。博物館に併設されているカフェで、早めの昼食となったのだが。チョコレートファクトリーに併設されているカフェだけある。料理にもチョコレートがふんだんに使われていた。
サラダには砕いたナッツとビターチョコレートとレーズンが、ハンバーグにはワインとカカオを使った甘い香りのする濃厚ソースがたっぷりかかり、食後にはチョコレートを使ったかき氷のようなデザートも出てきて驚いてしまう。
「チョコレート……カカオの成分が高いものには、沢山ポリフェノールが含まれているって、ニーナは知っている?」
食後に紅茶ではなく、チョコレートドリンクが出され、それを飲みながらクリスが話を始めた。
「ええ。ポリフェノールは血圧を下げたり、動脈硬化の予防になるって聞いたことがあるわ」
チラリと視線を移動させると。銀狼とミルキーは、カフェに併設されているテラスの芝生で楽しそうにじゃれあっている。周辺にはウサギや小型犬の守護霊獣もいて、彼らとも楽しそうに交流していた。クリスも私の視線を追い、銀狼やミルキーの姿を見て、愛おしそうに目を細める。
時間差でもう1話公開します!

























































