67:まさか、クリスの黒歴史!?
誰にも見られていないと安心していると。
「ニーナはみんなに見られるのが、心配なの?」
「え、心配ではなく、その……恥ずかしい」
自分で恥ずかしいと答えておいてなんだが。
本当に、恥ずかしいのだろうか?
私を抱きしめ、額や手の甲にキスをしているのは、あのクリスだ。
魔力の強さのみならず、頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗、性格最高、料理上手、脱いでもスゴイと、非の打ち所がないあのクリス。
クリスに抱きしめられ、額や手の甲にキスをされる。
それは恥ずかしいことなどではなく、むしろ光栄なことなのでは……?
残念そうな顔で、私の手をはなそうとしたクリスの手を、今度は私がつかんでいた。
「クリス、ごめんなさい。今、気づいたわ。私、クリスになら、みんなの前で何をされても恥ずかしくない。だって、本心では嬉しいから……。恥ずかしくなんてない。むしろ光栄だわ」
クリスは驚いた顔をして、そして優しく笑い出す。
私、何か変なことを言ったかしら?
「ニーナ、ありがとう。気持ちはよく分かったよ。これからも僕は……みんなの前で、ニーナへの気持ちが、抑えられないこともあるだろう。でもやり過ぎには注意する。本当に止まらない時は……二人きりの時にね」
秘密めいたウィンクに、腰が抜けた。
でも既に座っている。
だから両手をつきそうになったが、クリスが抱き寄せてくれた。
みんないるけど、力が、力が入らない!!
今のは、今のは、今のは……!
マジパラは、全年齢がプレイできる乙女ゲーです。
クリスの今の表情は……!
ダメ、あんな顔を簡単に見せては。
もう自分が心臓になってしまったかのように、壮大な鼓動を響かせてしまっている。熱いなんてものではない。全身が、燃えている……!!
何度も深呼吸し、気持ちを静めようと努力を重ねた。
その努力の一環として、クリスと会話を続けることを試みる。
「ねえ、クリス。もしかして古文書図書館で地図について調べていた時、宝の地図が示すものが温泉だって、気づいたのでは?」
「ニーナには、バレちゃったかな」
もたれる私を優しく抱き寄せたまま、クリスが少し困ったような顔をする。
そんなクリスの顔も、当然素敵だ。
またも心臓が正しく反応してしまう。
ヤバイ、余計なことをしてしまった……!
でも既に時遅しで、再び心臓がバクバクしはじめ……。
それでもなんとか話すことで、自分を落ち着かせようとする。
「実は、私じゃなくて、ジェシカが最初に気づいたの。あの蒸気と匂いを確認した時の行動で」
「そうか。ジェシカが……。鋭いね、ジェシカは。でも……」
そこで言葉を切ったクリスは、そのライラック色の美しい瞳で私を見る。
何!?という顔でクリスを見ると。
「地図が示す宝が、温泉であると分かっていた……というのもそうだけど、そもそもあの宝の地図のことを、僕は知っていた」
「え、そうなの!? 何か有名な地図だったの?」
「有名? まさか。そんな売り物になっているなんて、思っても見なかったよ」
話がよく分からず、首を傾げてしまう。
クリスはそんな私を見て「可愛い」と言ってくれるので、それはそれで嬉しいのだが。今は好奇心の方が勝っている。
「売り物になるような地図ではないけれど、クリスは知っていたの……?」
「うん。そうなんだ。僕も子供の頃、いろいろと旅をしていただろう。それで子供ながら、一丁前の冒険家を、気取っていた時期があってね。今となっては恥ずかしいことで、痛々しく感じるけど……」
まさか、クリスの黒歴史!?
でも、冒険家を気取るなんて。しかも子供でしょ。
可愛らしいと思うけど。
「ブルンデルクに初めてきたのは12歳。実はニーナにネモフィラの花畑で会う三日前に、ブルンデルクには到着していた。そこで既にフィールドワークを始めていた。現地調査をすると言っても、やみくもに歩くわけではない。様々な魔法を使い、どこにどんなものがあるか、まずは目安をつける。例えば魔力を検知する防御魔法を展開して、何か珍しい反応がないか探す」
そこでクリスが、自身のおでこを私のおでこにピタッとくっつける。
ドクンと心臓が飛び跳ねた。
可愛らしいクリスの黒歴史でした(≧∀≦ゞ
続きとなる『もどかしい……!!』は明日の11時台に公開です。
クリスの溺愛モードが発動~!
明日もプチサプライズです☆


























































