61:クリスとニーナは一心同体だろう?
もし。
今後クリスに王冠について聞かれたら。
間違いなく予知夢で見たということで、フィアマールという都市にあると答えるだろう。ここで誤魔化しても、意味がない……。
「そう、ね……。予知夢でちょっとだけ、見たの」
「そうなのか! それで、今から行く場所で、王冠が発見されたのか!?」
「そ、それがね。私、寝相が悪くて……。肝心の瞬間に、ベッドから落ちてしまったの」
ウィルは目を丸くして驚く。
それは……そうだろう。伯爵令嬢がベッドから落ちるなんて……。
「……怪我はなかったか?」
そうでした。
マジパラの世界のベッドは、マットレスを含めると、床から80センチぐらいの高さがある。落ちたらとんでもない音がするだろうし、怪我は普通にするだろう。正直、それが分かるから、落ちないように注意している。よって実際には落ちたことはない。嘘って……つくのが難しい……。
「まあ、それは大丈夫よ。それで、王冠が王宮にないと分かって。じゃあ、どこ、となった瞬間に、目覚めることになって……。だからこれから向かう場所にあるかは、確信できないの」
「そうなのか……」
「ね、ねぇ、ウィル。もしかして王冠、行方不明なの?」
ウィルは苦々しい表情になる。
「……ああ、実はそうなんだ。どうも領地視察に行った際に、紛失したらしくてな。まったく、カロランの剣といい、王冠といい……。僕の祖先は、うっかり者が多くて困る」
これには苦笑するしかない。
イベントの度に、王族はうっかり者にされてしまっているのだから……。
「なあ、ニーナ。王冠について、もう一度予知夢を見ることはできないか?」
「ま、まあ、それは試すことはできるわ」
「本当か!! 試してもらえるか!?」
うっ、ウィルまで……!
もしかするとうるうる瞳で見られると、私がノーと答えられないことを、ウィルまで知っている!? しかも、ウィルがこんな顔をするなんて……。ハンサムな上に、愛くるしい表情ができるって、反則ではないですか!?
セス以上のうるうる瞳にやられた私は「分かったわ」と答えていた。
「ねぇ、ウィル。その王冠の捜索の指示も、受けているの?」
「僕が直接受けたわけではないけど、クリスは……多分、受けていると思う。何せクリスはあのクリスタルを、4つ全て揃えて父親に……国王陛下に献上した。これは勿論、公にされていることではない。でも王族と一部の人間の間では、クリスに対する信頼がさらにアップした。王冠の件は、王族のみに伝えられていることだ。王冠はクリスタルのように、隠し通せない。代替わりで必ず使うものだから。仕方なく今は、レプリカを使っている。でもそれはレプリカではなく本物、としており、それがレプリカだと知るのは……王族のみだ。でもクリスはクリスタルを見つけたから、うん、間違いないな。捜索依頼を受けていると思う」
なるほど。
クリスって、大魔法使い見習いなのに。探偵みたいだ。
つまりはきっと、便利屋みたいな?
困った時の大魔法使い頼み……これはマジパラのイベントでは、あるあるだった。
なんだか申し訳ないな、クリスにばかり負担をかけて。
クリスが王命を受けているなら、協力したい。
よし。
「予知夢で王冠の場所を見たら、ウィルに話すわ。ウィルは王冠の場所が分かったら……」
「クリスと探しに行くよ」
「私も行きたい……な」
するとウィルは、吹き出すように笑いだす。
「ニーナは謙虚だな。そこは堂々と、『私も当然、連れて行ってくれるわよね? 私が予知夢で見つけたのだから』って言っていいのに」
それは悪役令嬢ニーナだったら、いかにも言いそうだけど……。
そんな強気発言、私には無理だ。
「もちろん、ニーナも一緒だよ。そもそも僕一人で動くなんて、さすがに父親が……国王陛下が許してくれないよ。クリスがいるから、護衛の騎士もつけずに動くことができている。もう、僕とクリスは運命共同体みたいなものだ。それでクリスとニーナは一心同体だろう? ニーナをおいていくと言えば、クリスは僕の頼みであろうと、絶対に首を縦にふってはくれないと思う。クリスはニーナが大好きだからな」
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
ニーナラブ♡のクリスなのでした~
続きは12時台に公開です!
ブックマーク登録、いいね!、誤字脱字の報告での応援、ありがとうございます!


























































