60:久々にウェルと
湖が見えなくなったところまでつくと、再び草原のような場所に到着した。ウィルとクリスの見立てだと、恐らくかつてこの辺り一帯で火山活動があり、大木は失われたのではないかとのこと。でもその代わりに、エリンジューム、ゲラニウム、オキシペタラム、ベロニカなどの美しい花々が咲いている。
この草原でランチになった。
守護霊獣たちは、広い草原を駆け回り、ウィルのイーグルとアンソニーのモズも、気持ちよさそうに上空を飛んでいる。皆で手分けして火をおこし、パンを焼き、サラミやスモークチーズ、ジャムや蜂蜜をつけてランチを楽しむ。昨晩の夕食会で手に入れた紅茶をいれると、辺りに芳醇な香りが漂う。
「不思議だね。屋敷の部屋で飲むような紅茶を、こんな場所で飲めるなんて」
アンソニーがそう呟く気持ちは、よく分かる。
今飲んでいるこの紅茶は、隣国で販売されているもの。
メリア魔法国でも人気で、王都を中心にお店がある。
ブルンデルクにも1軒だけお店があるが、いつも大人気。
新作が出るとすぐ売り切れになるが、ウィンスレット辺境伯家には、毎月お店から新作と定番の茶葉が届けられる。
今飲んでいるのは、そのお店の定番品。バニラに思わせる、ほんのり甘い味わいが堪らない。この紅茶とマーブルおばさんのお店のキャラメルバームクーヘンが、とてもよくあうのだ。
食後の優雅なひと時を楽しんだ後は、いよいよ宝の在り処に向かって出発だ。アミルによると、あと2時間も歩けばつくはず、らしい。
「いよいよ宝とご対面になる。まあ、宝がそこに本当にあるかは、まだ分からないけど」
昼食後、私はウィルと並んで歩いていた。
ウィルの隣はジェシカ、という気持ちがあった。
そのせいか、ウィルと二人で並んで歩く機会は、少なかった気がする。
「これで宝がなかったら……残念ですが、沢山思い出は作れましたよね。思い出こそが、宝だった、というオチもあるかもしれません」
「ニーナは相変わらず、機転がきくな。うん、そのオチだったら。宝がたとえ見つからなくても、大満足だな」
ウィルと顔をあわせ、笑いあう。
「ところでニーナ。初日に馬車でヴュルテンの町に向かった時、宝の予想をしたよな」
確かに、そんなこともしていた。
あの時、クリスは……。
――「僕はそこには持ち帰ることができる宝はないと思うんだ。何かその場所で楽しめるような……。例えば、その場所から見える夕焼けは絶景。その場所でしか咲かない花があった。つまりはその場に行ったからこそ宝だと分かる。そんなその場所ならではの何かが、ある気がするな」
そう宝を予想し、アミル、ウィル、アンソニーから「男のロマンだ!」と大絶賛されていた。ウィルは隕石と予想していたけど……。あの湖がカルデラ湖だったから、隕石である可能性は低い……のかな?
そんなことを私が思っていると。
「ニーナはあの時、宝は『王冠』であると予想した。王冠なんて、王宮で厳重に管理されているから、その辺にあるわけないのに。……なあ、ニーナ。どうしてあの時、『王冠』だって思ったんだ?」
これは……。まずい!
マジパラのイベントで、王冠探しをしたことがあったから、軽い気持ちで王冠と口にしてしまったが……。
クリスから追及されると思ったが、特にされずにいたので、すっかり忘れていた。まさか今、ここでウィルにこの件について聞かれるとは……。
「えっと……ほら、クリスタルだって、本来王宮にあるはずのものでしょ。それが王宮以外の場所であったわけだから。だ、だから、ね。そんな風に王冠も……」
「そうだな、ニーナ」
納得してもらえた!
「クリスタル。あの件は本当に驚いたよ。クリスの報告では、ニーナには予知夢の力があるのだろう。それでクリスタルの在り処を夢で見たと」
うわーん、納得してもらえていない!
「そ、それは、ほら、子供の頃は不思議な力があったりするって言うわよね!? 妖精は子供の頃だけに見える、みたいな!」
「ニーナ、王冠について何か知っているのか? 予知夢で見たのか?」
「え、あ、それは……」
困った!
久々にウィルとゆっくり話せたけど、王冠の件が~~(汗
続きは明日の11時台に「クリスとニーナは一心同体だろう?」を公開します!
 

























































