51:ジェシカもお年頃
滝壺の水はとても透明度が高い。
だから水底までハッキリ見えている。
「見て、ジェシカ、小魚がいるわ」
「本当だわ」
暫くは足が届く場所にいたが、ついにその足が届かない場所についた。
私は魔法を使い、平泳ぎで泳ぎ始める。
ジェシカも同じく魔法を使い、平泳ぎで、私の隣を泳いでいる。
「おーい、ジェシカ、ニーナ、なんでそんなところにいるんだ? こっちに来てみろよ」
ウィルに呼ばれ、ジェシカは後ろを振り返るかどうか、躊躇っている。
ジェシカに比べれば。
私の方がまだ、男子の上半身裸に慣れている。
いや、慣れていない。
でも一応、砂漠の民の衣装を着る、アミルやクリスの姿も見ている。だからジェシカに代わり、意を決し、振り返った。
……!
「ジェシカ、大丈夫。みんな滝壺に入っているから、首から上しか見えないわ」
「本当に!?」
私が何度も首を縦にふると、ジェシカは恐る恐るという感じで、後ろ振り返る。そしてその顔は、安堵の表情に変わった。
「ニーナ、こっちにこいよ!」
アミルからも声をかけられた私達は、男性陣の方へ、泳いでいった。
◇
滝壺での水遊びは、水に入る時と出る時で緊張感が漂ったが。水に入っている間は、とても楽しかった。糸のように流れ落ちる滝のそばまで泳いでいったり、水中の魚を見て楽しんだり。透明度が高いので、ヒヤリというかドキリとする場面は何度もあった。だが、なんとかそれは乗り越えた。
水から出る時は、ジェシカと二人、頑張って男性陣を見ないようにする。自分達が出る時は、もう魔法使いまくりだ。あっという間に髪も体も服も乾かす。おかげで何事もない状態に、すぐ戻ることができた。そんな素早い私達に対し、男性陣はおしゃべりをしながら、のんびり着替えを続けている。その様子を背中で感じながら、ジェシカとお互いの髪を結わきあった。
「すぐに出発でもいいけど、30分ぐらい昼寝して、それで例の隕石で出来たというクレーターの湖へ向かおう。今日は湖のほとりでキャンプだ」
ウィルの言葉に従い、タオルを広げ、皆で昼寝をすることになる。
広い場所だったので、距離をとり、それぞれ思い思いの場所で横になっているが。
ジェシカと私は隣同士。
頭の近くにスノーボールとミルキーもいる。
そして皆と距離があるから……。
昼寝どころではなく、おしゃべりタイムとなる。
「ねぇ、ジェシカ。最近、ウィリアム様とホント、二人でいる機会が多いわよね」
「!! そ、そうね。でも、あれよ、ニーナ。二人でいても、他愛ない話ばかりよ」
「そうなのね。まだまだお友達なのかしら」
ジェシカは恥ずかしそうに、顔を赤くする。
「ウィリアム様は王族の方よ。お友達として仲良くしてくださるだけでも、十分幸せですわ。それより、ニーナとクリストファー様は……婚約されているからかしら。とっても熱々に感じるわ。よく二人は見つめ合っていますし、昨晩の焼きマシュマロ……。あれは本当に見ているこちらがドキドキするような、まるで……そう、パンケーキにチョコレートソースと生クリームと蜂蜜を全部のせたぐらい、甘い雰囲気でしたわ。……あああ、ニーナ。うらやましいわ。クリストファー様のような素敵な方と……」
そこでニーナが、碧眼の瞳をキラキラと輝かせて尋ねる。
少し、頬を桜色に染めながら。
「クリストファー様とはもう、その、口づけは……?」
尋ねた直後、ジェシカの顔は全体的にうっすらと赤くなっている。
聞かれた私は、既に顔が真っ赤だ。
「そ、それは……!」
ジェシカは姉妹同然。
子供の頃からなんでも話して育ってきた。
恥ずかしいが、隠すほどのことでもない。
というか、クリスとの恋愛の詳しいことは、まだジェシカにさえ話したことがなかった。
「ええ。実はね……」
クリスが銀狼だったことは、ジェシカも知っている。でも同化魔法の解術条件が、私とのキスだったことは話していない。だからそこは秘密だが、アンジェラとの戦闘の前に、キスをしたことを打ち明けた。
「まあ、そうでしたの!? とてもドラマチックですわ。まるで神話や騎士の物語のよう」
ジェシカはうっとりし、その後……。
キスはどんなものだったのかと、予想外に詳しく聞きたがるので驚いてしまう。でもジェシカも18歳。キスがどんなものか、どんな感じなのか、気になって当然。私はデレ顔にならないよう、注意しながら話して聞かせた。ひとしきりキスの話が終わると、今度はさっきの水浴びの話になる。
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恋バナで盛り上がるジェシカとニーナ。
続きはフライング更新で~!

























































