49:邪魔者乱入!?
森の中を歩くクリスの後を、銀狼が追いかける。ミルキーは銀狼の背中に乗せてもらっていた。
最初は。
背後からギターの音も聞こえるし、ただ並んでクリスとおしゃべりしながら歩いていた。クリスと並んで歩く、といっても森は広い。クリスと私の間には、30センチぐらいの距離があった。
でも気づくとその距離が縮まっていて。クリスの手と私の手が触れたその瞬間。
ギターの音はもう聞こえていなかった。だから。
クリスの手が自然と私の手を包み込み、そのままお互いの指と指を絡め、恋人つなぎで歩き始めた。ただ、手をつなぐという一連の動作に、とんでもないほどドキドキしてしまった。
そのまま手をつなぎ、しばらく歩いたが。
ゆっくり歩く速度を落とすと、やがて立ち止まったクリスは。ふわりと包み込むように私を抱きしめる。
「宝探しの最中は、ニーナに甘えられない。そう思っていたけど……。二人きりになれて、嬉しいな」
それはもちろん、私も同感だった。
昨晩も思いがけずクリスとキスをできた。
そして今、森の中で、まるで二人きりみたいな状態。
これならいいよね。キスをしても。
昨日は短いキスをして、私は爆睡してしまったし。
そう思い、顔をあげ、クリスを見る。
ライラック色の瞳が、優しく私を見ていた。
この瞳を見るだけで、私はもう腰が砕けそうになっている。
こんな風に見つめられたら……。
自然と瞼を閉じてしまう。
クリスの手が頬を包む。
……キスをされる。
その期待で、胸が信じられないぐらい高鳴ったその瞬間。
ドリルのような音が、突然聞こえてくる。
お互いの鼻が、触れそうな距離まで、顔が近づいていた。その状態で、二人同時に目を開けることになり、もう笑うしかない。
「この音、何かしら!?」
ドリルのような音に聞こえたが、まさかドリルのはずがない。
いくらマジパラが西洋風の乙女ゲーであり、史実に忠実ではないとしても、さすがに突然ドリルは登場させないだろう。私の記憶にもマジパラをプレイしていてドリルが出てきたシーンなんて覚えていないし、ないはずだ。
「これは……多分、クマゲラだね」
「クマゲラ……?」
「そう。黒い森でも古木のエリアに多くいたけど、キツツキだよ」
なるほど。
というか、キツツキってあんなすごい音を出しながら木をつついているのか。でも木に穴なんてそう簡単にあくはずがない。この音で納得だ。
!!
再びクリスの手が頬を包み込んでいた。
慌てて、目を閉じる。
が!
またもドリル音がする!!
「これはドラミングだね。木に穴をあけるため、高速で木をくちばしでつついている」
苦笑しながらクリスが教えてくれた。
「これは穴があくまで続くのよね?」
「そうだね。一度ドラミングすると、少し休憩をとって、もう一度、みたいな感じで続くね」
「なるほど」
そうなるとドラミングがあった直後、そこがキスをするチャンスでは!?
とはいえ、そのタイミングを待ってキスをするのは……いかにもな気がする。
でも……。
せっかくクリスと二人きりなのだ。
その時。
再びのドリル音。
その音が止んだ瞬間。
クリスの腕を掴み、背伸びをして。
私からクリスの唇に、キスをしていた。
ただ、自分からクリスの唇にキスをするなんて初めてのこと。ほんの一瞬触れだけで、唇をはなしてしまった。だが、クリスは私の腰を抱き寄せると、もう片方の手で顎を持ち上げ……。
ふわりとクリスの唇が重なる。
温かく優しい潤いのある唇に、瞬時に身も心もとかされた。
唇がはなれ、そのまま抱きしめられた時。
クマゲラのドリル音が、森の中で響いた。
(*/▽\*)
もう1話、12時台に公開します~


























































