46:推しフィルターが発動しそう
デザートを楽しんだ後は、星空を眺め、コーヒーを飲みながら、しばらく穏やかな時間をみんなで過ごした。だが突然、アミルがとんでもない音色のギターを奏で、青ざめたウィルとアンソニーが懸命に弾き方の指導を始める。二人ともギターの経験はないはずなのに。アミルにギターを贈った責任感からか、ギターの弾き方について勉強していたようだ。楽譜の読み方から指導を始めている。
そんな感じで寛ぎのひと時を終えると、後片付けをして、もう寝るだけとなった。
テントは3つ用意されており、アミルとアンソニー、ウィルとクリス、ジェシカと私ということで、それぞれのテントの中で着替えをして、休むことに。ウィルがしっかり防御魔法を展開してくれているので、安心して休んでいいと言われている。その安心感となんだかんだで相当歩いたので、横になるとすぐに睡魔が襲ってきた。
本当はジェシカと恋バナでもしたかったが。二人とも瞼が重く、それどころではない。すでにスノーボールとミルキーからは、心地よい寝息も聞こえている。あっという間に眠りに落ちた。
目が覚めたのは偶然だった。
疲れて眠ると、途中で起きることなんてほとんどないのに。
ふと、目覚めてしまった。
目覚めて、テントの外に何か気配を感じ、そしてまだ焚火が燃えていることに気づいた。
ジェシカと私が最初にテントに入ったが、最後に寝る人が、焚火は消すと言っていたと思うのだが。もしやまだ起きている人がいる……? 気になってしまい、ジェシカとスノーボールとミルキーを起こさないように注意しながら、テントの外へ出た。寝間着にストールを羽織り、焚火の方を見ると。
これは……!
まるで星が大地に降ってきたようだった。
焚火の明かりは弱く、薄暗い中、キラキラと輝く何かが浮遊している。
「集積魔法発動 光度と魔力を抑え、瓶の中へ収集」
クリスの声と共に、キラキラ輝く何かが、ガラス瓶のような容器の中に、どんどん吸い込まれていく。大地から星が消え、焚火の明かりが戻った。
「……ニーナ?」
クリスが振りかえった。
すぐにそばに駆け寄り、隣に腰を下ろした。
「もしかして、大魔法使いメイズ様の案件?」
「これは違う。メイズ様の案件はさっき終わったから、これは僕の研究だよ」
「星を研究していたの……?」
するとクリスがくすりと笑い、瓶を見せてくれた。
瓶の中には、小さな粒が沢山入っている。
さっきより輝きがぐっと弱まった、でも星の欠片のように思える粒だ。
「これは空からのエネルギーを、魔力に変換させ、それを結晶化したもの。僕はこれを魔力として取り込める。僕以外の人がこれを魔力として取り込むことができないか、それを研究しているんだ。誰もが回復の魔法を使えるわけではないからね。魔力を使い過ぎた人には回復を。魔力が弱い人には、一時的な強化のサポートにならないかな、って」
「……大魔法使いになると、そんなことまでしないといけないの?」
「これは単純に僕の趣味みたいなものだよ。僕は魔力が強いから、それをみんなのために役立てることができたらと思って」
クリスはすごい。
趣味だと言ってやっていることなのに。
それは自分のためではなく、誰かのために役立つこと。
みんなのために役立つことを、自発的にできるクリスを、心から尊敬してしまう。
「自然界のエネルギーは街より、こういった場所の方が、濃度が高い。つまり魔力の質もいい。せっかくこんなところまで来たからね。収集させてもらったわけだ」
そう言って笑うクリスの笑顔は。
さっき星にみえた魔力の結晶みたいに、キラキラ輝いて見える。
ヤバイなぁ。
みんなと一緒の宝探しの最中に、推しフィルターが発動しそうだ。
「クリスは立派ね。昔の私みたいに、魔力が弱い人をサポートするため。そして魔力を回復させたい人を助けるために、趣味で研究するなんて。その志がすごいと思うわ。尊敬しちゃう」
「ニーナにそう言ってもらえると、嬉しいな」
クリスが私のことを抱き寄せた。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
魔法を使っている時のクリスも素敵♡
続きは12時台に公開ですー。甘々警報!

























































