43:彼らの身に起きたこと
仲間を従わせたトゥルが、おもむろに口を開いた。
「砂漠の民のアサシン(暗殺者)は、ギリス王国に仕えているわけではない。たまたま本拠地が、ギリス王国の国内にあるだけだ。殺しの依頼は世界中からくるし、それを自由に受けている。自由。そう、我ら砂漠の民のアサシン(暗殺者)は、誰にも縛られるつもりはない」
そこでトゥルは大きくため息をつく。
他の5人も憎々し気な顔をしている。
「私の父、砂漠の民のアサシン(暗殺者)の現頭領と私の息子が、ギリス王国の兵に捕えられた。……卑劣なやり方だ。私の息子を先に捕え、人質にして頭領を抑えた。二人を救うには、第六王子を暗殺しろと求められた」
「お前たち、砂漠の民のアサシン(暗殺者)だろう? たかがギリス王国の兵に屈するのか? とっとそちらを暗殺して、頭領と息子を救い出す方が、速いんじゃないか?」
片足を立てて座るアミルは、膝の上に両手をおき、そこに自身の顎をのせている。そんなアミルをちらっと見たトゥルは、深いため息をもらす。
「無論、そのつもりだった。だが、歯が立たなかった。我らが本拠地を置く町から200キロ以上離れた場所に、頭領と息子が捕えられている箱があった。そばに小さなオアシスがあるが、それ以外は何もない。砂漠のど真ん中にある、あれまさに死の牢獄だ。箱にはとんでもない魔法がかけられている。侵入はできない。転移魔法でも入り込めない。そしてきっと捕らえられている頭領も息子も、箱では魔法を使えない」
トゥルの言葉に、アミル、クリス、ウィル、そして私が反応していた。
砂漠のど真ん中の箱?
魔法がかけられている?
中では魔法が使えない?
それって……。
「アミル、君がいた部屋はどうなっている?」
クリスに問われたアミルは、すぐに答える。
「何もしていない。放置だ。本当はその部屋から通学するつもりだったが、住処を提供してもらえたから。暇な時に見に行くつもりだった。せっかく作ったオアシスもあるし、あれをもう少し発展させようかと思っている」
「アミルとしては、まだあの部屋を自分の部屋と思っているわけだね。でも侵入者がいるのに放置なのかい?」
クリスの問いに、アミルはポリポリと頭を掻く。
事態が分からないトゥルは、さっきから不思議そうにアミルとクリスを見ている。
「そうだな。放置していた。ニーナがいた時は、部屋に注意を払っていたけど、それ以外の時は……。何も気にしていなかった。無頓着だからな、オレ。別に盗まれて困るようなものはなかったし」
「え、ちょっと待って。あの部屋ってそもそも簡単に入れないのでは? 侵入者たちは、とんでもない魔力の持ち主だったってこと?」
私が尋ねると、アミルが軽快に笑いだした。
これにはクリスもウィルも「!?」という顔をしている。トゥルに至っては「??」と目を丸くしている。
「なんだ、みんな分からなかったのか? あの部屋はガチガチに魔法で固められている。だからその魔法を突破するか、解術しないと侵入できないと思ってしまう。魔法を使える人間だったらそう思う。だがな、意外にもあの部屋には、簡単に侵入できるんだよ」
アミルはニヤリと笑う。
その顔を見たクリスが「まさか」という顔をしている。
「おっ、クリスは分かったか?」
「分かったよ。これは……完全に盲点だった。でもとても勉強になったよ、アミル。この失敗は、二度とは繰り返さない」
クリスは悔しそうで、アミルは逆にとても嬉しそうだ。
「なんだかすごく爽快だな。クリスを負かした気分だ」
「アミル! クリスはあなたのヒントでちゃんと分かったわけでしょ、あの部屋に侵入する方法を。クリスは負けたわけじゃないわ! もったいぶらないで、説明してよ」
私のこの言葉は、逆効果だったようだ。
アミルは……。
「なんだか今のニーナ、オレの部屋に初めてきた時を思い出させるな。気の強いニーナも可愛い」
「な、アミル!」
私が顔を赤らめたその時。
クリスが声をあげた。
まさかの事実、発覚!
そして次回、「こんな将来有望な若者がいたとは……」は明日、11時台に公開です!
引き続きよろしくお願いいたします~


























































