40:またもクリスがとんでもないことを
ウィルは自身の髪をかきあげ、状況把握に努めている。
「それは分かる。一体いつの間に……、そうか。二人とも、ここで休憩するとなった時に、防御魔法を展開したんだな。しかも呪文を頭の中で詠唱して。そしてアミルの防御魔法は、防御より攻撃型。それに気づいたクリスは、アミルの防御魔法を解術した上で、転移魔法を……いや、でも転移魔法をどうやって!? 襲撃者がどのルートを通るか予想していたのか? まさか、そんな……」
ウィルはそのまま考え込んでしまう。
代わりアミルがクリスに尋ねる。
「オレがニーナに使った転移魔法は、プラジュを媒介にした。でも今回は……ウィルが頭を抱えるのは当然だ。どうやった?」
「僕はそう簡単に、手の内を明かすつもりはない。だが、アミル。君はさっき、自国の大魔術師が、大地のエネルギーを魔力に変換できないと教えてくれた。だから特別に教えよう」
クリスの言葉にアミルは「しまった」と舌を出すが、あまり気にしていないようだ。むしろウィルが、今の言葉に反応している。知りたくてたまらないという表情をしていた。
「僕達の休憩している場所を中心に、大地のエネルギーを媒介にした、転移魔法を発動させた」
「はああああああ!? な、それはつまり……大地のエネルギーを半分魔力変換し、半分はそのままにして、変換した魔力を、転移魔法に割り当てたということだよな!? そしてそれをすべて制御していた、だと!?」
アミルは目を丸くし、驚愕しているが……。
ジェシカ、アンソニー、そして私は沈黙するしかない。
つまり、何を言っているか理解できない。
「僕の理解とジェシカ、アンソニー、ニーナのために説明すると……。大地のエネルギーは白い球体と考えるといい。この球体の半分を魔力に変換した。つまり、白い球体の半分はクリスの魔力に、ライラック色に変わった。この魔力を使い、白い部分、まだ変換されていない大地のエネルギーに対し、転移魔法に必要な円陣を出現させた。そしてこの円陣に襲撃者が触れた瞬間、転移魔法を発動させ、ここへ転移させた……のだと思う。球体一つでは無理だ。大地のエネルギーは、オリーブの実ぐらいのサイズで、沢山存在しているはずだ。それに対し、すべて……なるほど。アミルが驚愕するはずだ。というか、こんな方法、普通は思いつかないぞ。思いついても、やらない……いや、まず僕達じゃできない」
ウィルの説明で、何となくではあるが、襲撃者に転移魔法をどうやって使ったかは……分かったような気がする。でもハッキリ理解したことがある。それは、クリスがとんでもないことをやった、ということだ。
「お、おいっ、お前たち!」
襲撃者の声に振り返ると、6人はすでに肩まで地面に沈んでいる。これでは逃亡は無理だ。
さらにアミルにより魔力を剥奪されている。もはや打つ手なしの状態だろう。
「お前たち、だと!? それはこっちのセリフだ!」
「アミル!」
一瞬、アミルのルビー色の瞳が燃えるように光った。
でもウィルの一喝で、すぐに落ち着きを取り戻す。
「アミル、襲撃者が誰を狙ったのか、聞く必要がある。もう魔力もなく拘束されている。これ以上は、何もしなくていい」
ウィルに言われると、アミルは「ちぇっ」とむくれるが、おとなしく引き下がる。
「さて。ここには二人の王族と、王宮に仕える人間、辺境伯家の後継ぎ、二人の令嬢がいるのだが。誰を狙ったのかな?」
クリスが落ち着いた声で尋ねると。
「答えるつもりはない」
6人のリーダー格らしい髭の男が、即答した。
「どうしてかな。この状況下で答えないのは。依頼主がよっぽどの人物なのかな?」
クリスの問いかけに、髭男は無言だ。
「では君たちのことを教えてもらえないかい? 君たち6人は、メリア魔法国の人間か?」
「そうだ」
「違うね」
「はあ!?」
クリスは襲撃者から目をはなし、ウィルとアミルを見た。
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突っ走りがちなアミル。
冷静なクリス。
分析するウィル。
この3人で、襲撃者を追い詰める!
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