36:そこには何がある?
ウィルの説明の後に話を始めたのはクリスだ。
「ヴュルテンの町は、内陸へ内陸へと開拓を進めた。その一方で近隣の町は、山の方も開拓を進めたようだ。そのせいでそこにいたヤマネコやオオカミは、数を減らしている。近隣でヤマネコやオオカミが減ったことで、ヴュルテンの町の近くにいたヤマネコやオオカミは、活動域を広げることができた。でも広げた活動域で、今度は狩りの対象となってしまった。結局、ヴュルテンの町の近くにいたヤマネコやオオカミも、今となっては数がかなり減っているそうだよ」
そう付け加えるクリスは、ライラック色のシャツに、シルクの薄手のブルーラベンダーのストール、ズボンはシルバーグレーと、実に涼し気な色味の装いだ。
エントランスで会った時、クリスが教えてくれたことがある。それはストールが一枚あると、何かと便利なのだという。急激な気温変化の時には羽織れるし、怪我の処置にも使えるし、物を包むのにも活用できる。そう教えてくれたクリスは。なんとその場で自身と同じ色の、一回り小さなサイズのストールを、魔法で出してくれた。大喜びの私は、そのストールをリボン結びにして、首につけている。
「ヤマネコかぁ。もしも今回遭遇したら、プラジュに合わせてみたいなぁ」
白シャツにルビー色のズボンのアミルがそう言うと、隣で丸くなっていたプラジュが顔をあげ、耳をピクピクさせる。ちなみにプラジュの対面には、クリスの銀狼が丸くなっている。
「ヤマネコに遭遇したら、スノーボールもミルキーもビックリしちゃいそうね」
ジェシカは膝の上にのせているスノーボールを撫でる。
私も膝で丸くなっているミルキーの背を撫で同意する。
「守護霊獣は、通常の野生動物の力関係とは、関係ないんだよ。おそらく怖がることなく、むしろ好奇心から、自分達から近づくかもしれない。そうなると僕達の方が、焦ることになりそうだよ」
アンソニーの言葉に「なるほど~」と私とジェシカは頷く。
スノーボールもミルキーも、それぞれただのウサギとハムスターにしか見えないが。
あくまで霊獣。
もし危害を加えられるようなことがあれば、反撃をするらしいが……。この愛くるしいミルキーが、攻撃的になる姿は見たくない。可能な限りミルキーの安全を確保しようと、心の中で思う。
この会話の後は、地図が示す宝はなんであるか、それを推測することになった。アミルはそこに黄金があるといい、ウィルは実は隕石があると予想し、アンソニーは伝説の騎士の墓があるのではと推理した。意外性のある推測をしたのはクリスだ。
「僕はそこには持ち帰ることができる宝はないと思うんだ。何かその場所で楽しめるような……。例えば、その場所から見える夕焼けは絶景。その場所でしか咲かない花があった。つまりはその場に行ったからこそ宝だと分かる。そんなその場所ならではの何かが、ある気がするな」
これは……ウィル、アンソニー、アミルのハートを鷲掴みにした。クリスのこの発言を聞いた三人は、声を揃えて叫んだ。
「「「それこそ男のロマンだ!」」」
こうなるともう、ジェシカと私は、予想した宝を口にする必要がないと感じてしまう。でもアミルは、何を予想したのかと聞きたがる。そこでジェシカと私は、順番に答える。ジェシカの予想は「宝石」。宝というのだから、宝石という推理は妥当だと思う。そして私の推測は……「王冠」である。
宝と聞いて、なかなか思いつかなかったので、ヒント(?)を利用することにした。
マジパラでは、失われた王冠を探すというイベントがあった。
どうもメリア魔法国の王族は、うっかり者が多いようだ。領地視察に行った際、うっかり王冠をなくしたらしいのだが……。その時、5か所の領地を巡った。そのどこで落としたか覚えていない。ということで周回しながら、必死に王冠を探したわけだ。もしそれが伝説になっていれば、宝として地図に記されていてもおかしくない。そう予想したわけだ。
続きとなる『あわわわわわ。』は明日の朝7時台に公開です。
早起き特典として明日の後書きでちょっとだけ先行情報を紹介します~
それでは引き続きよろしくお願い致します!
【昨日更新した短編について】
皆さん、昨晩更新した短編、お読みになりましたか?
お読みいただいた読者様。
ありがとうございます!
セクシーでワイルドな凄腕暗殺者でイケメンのシナンが活躍する
『異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~』
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