34:完璧気配り男子
意識が飛びそうな私に、クリスが優しく提案する。
「ニーナ、ごめんよ。紳士のたしなみとして、服はやはり着替えさせてもらうね」
そう言い終える時には。
ナイトガウンから、白シャツにウイスタリア色のジレとズボンという姿に変わっていた。私がナイトガウンに過剰反応していることに気づき、服を着替えてくれた……。そのクリスの気遣いに感謝すると同時に、ただただ恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。穴があれば入りたい――まさにその心境の私にクリスは……。
「ナイトガウン姿を見るのは初めてだったから、驚いて当然だよ。僕だってニーナの寝間着姿を見たら、同じように驚いてしまうからね」
優しく頭を撫でてくれた。
そして今の言葉……。
完璧気配り男子のクリスに、ひたすら感動する。
「それで、このヨーグルトは……もしかして僕に夜食を届けてくれたの? サプライズで」
「クリスが入浴中とは想像してなくて……。突然、その、ごめんなさい」
ふわっと優しい風と共に、クリスに抱きしめられていた。服を着替えても、お風呂上りであることに変わりはなく。いつもとは違う、石鹸の爽やかな香りがした。
「あやまる必要なんてないよ、ニーナ。とっても嬉しい。だって僕を気遣ってくれたのだから」
「クリスは……まだ寝ないのでしょう? 大魔法使い見習いとして、やらなきゃいけないことがあるのよね」
クリスはさらに私をぎゅっと抱きしめる。
普段の服装でも。
抱きしめられたら、信じられないほどドキドキしてしまう。ナイトガウン姿でこんな風に抱きしめられたら……。きっと気絶していただろう。着替えてくれてよかった。
「よく気づいたね、ニーナ。そうだね。大魔法使いメイズ様は、僕の成長のため、課題を与えてくれている。僕も早く一人前の大魔法使いになりたいからね。この課題には、ちゃんと取り組まないと」
クリスは今すぐにでも、大魔法使いになれるぐらい実力があるのに。
ホント、謙虚で真面目だな。
こんな風に抱きしめてくれて。
幸せだし、もっと一緒にいたいけど。
課題に取り組むクリスの邪魔を、するわけにはいかない。
「私もクリスのこと、応援しているわ。……夜食、といっても大したものじゃなくて申し訳ないわ。ただ、これだったら消化にもいいし、疲れも和らぐと思うから……。良かったら食べてみて。それで私は……そろそろ部屋に戻るわね」
クリスの胸の中から、体を動かそうとすると。
「え、ニーナ、もう行ってしまうの?」
「だって、クリス、課題があるでしょ」
「そうだね。でも……」
そう言ったクリスは。
ヨーグルトを食べ終えるまで一緒にいて欲しいと、甘く囁く。ヨーグルトを食べる間なら……と、そのままクリスのそばにいた。クリスは最後の一口を、とても残念そうに食べ終える。そしてもう一度私を抱きしめた。
良かった。ちゃんと食べてもらえた。
安堵した私はトレンチを手に、そのまま自分の転移魔法で部屋に戻るつもりでいた。だがクリスはどうしても私を送ると言ってきかず、結局クリスの転移魔法で、部屋まで送ってもらった。
「本当はキスしたいけど、止まらなくなるから……」
掠れた甘い声で、耳元で囁いたクリスは。
最後に私をぎゅっと強く抱きしめ、部屋へ戻っていった。
キスをされたら……私もきっともっと甘えたくなっていただろう。でもこんな風に抱きしめられたら……。
キスをされるのと変わらないぐらい、ドキドキしていた。
それでもなんとか明日からの宝探しに備え、入浴をして眠りについた。
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(*/▽\*)溺愛ルート
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