32:まさかアミルに……
アミルの安全の確保について、ウィルとクリスが検討していると。
「なあ、そんなに悩むなよ。オレがお前たちの安全は保障する。オレは単身、ブルンデルクに来ただろう? 母さんは『自分の身は自分で守りなさい。アミルにはそれだけの魔力があるのだから。それでもしアミルのそばにクリスやウィル、白い軍服の彼、最弱ちゃんがいるなら、アミル、あなたが守るのよ。アミルならできるでしょ』と言って送り出してくれた。そもそも論だけどさ、オレには元々護衛なんていないのだから、悩む必要はない」
アミルはそう言った後、すぐに付け加える。
「母さんは、アンソニーとジェシカのことを知らない。だから触れていなかったけど、当然、オレが守るから。ブルンデルクでオレに住む場所を与え、親切にしてくれていることは、ちゃんと分かっているからさ」
アミルの言葉を聞いたウィルは……。
まるで照れるのを隠すように、髪をかきあげ、クリスを見る。
クリスは笑って頷く。するとウィルはアミルにこう告げた。
「アミル、確かに僕達は、君の母親に貸しがある。だからまあ、有難く、その申し出にのるよ。僕ら全員のことを、宝探しの最中、守ってくれ」
ウィルを見てアミルはニヤリと笑う。そして「任せとけ」と、自身の胸を拳でドンと叩いた。その姿を見ると。
あの砂漠の部屋で起きたことが、嘘のように思える。
まさかアミルに守ってもらうことになるなんて。
何はともあれ、これで安全面もクリアできた。
続けてジェシカが、全員分用意した装備について説明する。さらにウィルが、目的地に向けてのルートを示す。クリスが古文書図書館でメモした宝の在り処を示す詳細の地図も、皆に共有された。
その後もいろいろと話し合い……。
「では出発は明日、朝食の後だ」
ウィルの声を合図に、それぞれの部屋に戻ることになった。
◇
エントランスで離れに戻るクリス達のことを見送った後。
「あら、ニーナ、どこへ行くの?」
スノーボールを抱っこしているジェシカが立ち止まり、私に声をかける。
「実は、小腹が減ってしまったの。寝る前に食べるのは……本当はよくないと分かっているわ。でも何かちょっとつまむものがほしいな……と」
私の発言に、ジェシカとアンソニーは目を丸くしたが。
「ふふ。その気持ち、分からなくもないですわ。今日はみんなでおやつを食べる時間が、なかったですものね。でも甘い物はダメよ、ニーナ」
「そうね、ジェシカ。お菓子は我慢するわ」
そんな会話を交わすと。
階段をのぼる二人とわかれ、私は小走りで厨房に向かう。
とっくに夕食の片付けは終わっており、厨房には誰もいない。
とりあえず中に入り、さてと考える。
クリスは今晩も、メイズからの案件に取り組むはず。
そんなクリスのために……。
夜食を届けようと思ったのですが。
消化によく、程よい満足感があり、さっぱりしているもの……。
ここが前世であれば、お豆腐やお味噌汁を用意しただろう。
でも咄嗟の思い付きで行動しているので、この二つを今から作るのは難しい。なにせ豆腐もお味噌もないのだから、ゼロから作ることになる。
そういえば夜食には、発酵食品が、胃への負担が軽くて向いていたはず。発酵食品……。そこでヨーグルトの存在を思い出す。あとは何かないかと見渡し、バナナを発見。低カロリーだけど甘みもあるバナナは、魔力を使った後に丁度いいだろう。
しばらく思案した結果。
用意したのは、刻んだバナナをいれたヨーグルトだ。
竈で火を焚くと、目を覚ます召使いや調理人もいるだろう。火を使わず用意できるもので、条件を満たすものは……これが最善に思える。
夜食と言えるようなものではないが、これなら太らないだろうし、むしろお通じにも良さそだ。それにちょっと届けるのには、丁度いいと思う。たいした労力はかかっていないから、気軽にどうぞ、という感じで。
トレンチにヨーグルトが入った器とスプーンをのせ、転移魔法を使い、クリスの部屋向かう。
部屋、といってもいきなり部屋の中ではなく。クリスの部屋のドアの前に、転移した。
この後、(*/▽\*)な展開に。
時間差でもう1話公開します~

























































