30:地図の信ぴょう性
「え、この五か所の印のうち、実際に宝がありそうなのは、この一か所だけなのか!?」
クリスから、宝の地図の信ぴょう性の考察結果を聞き、アミルが驚いて席を立つ。
その様子を離れた場所で見ていたプラジュが、アミル同様、チラッとクリスを見る。
「残念なことだけど、仕方ないとも思うよ。その地図はとても古い。だから僕らより先に、別の誰かに発見されてしまったということだね。その一か所だけでも、宝が残っている可能性がある。それだけでも奇跡だと僕は思うよ」
そう感想を述べたクリスは、残念だけど仕方なという顔で、再びアミルを見る。クリスの足元の銀狼も、残念そうな顔をアミルに向けている。
「クリスのその見解に、僕も同意だな。どんなに素晴らしい王家の墓を暴いても、既に盗掘されていた、なんてザラだろう。手つかずで残っている宝が、一つだけでもあった。それは本当に奇跡だと思うよ」
ウィルからもそう言われたアミルは……。
「そうか。仕方ないな」と、椅子に腰を下ろす。
私達は夕食を終え、勉強部屋に集結していた。そして明日からの宝探しについて、終業式の後から動いた結果を報告しあっている。そして今、最も重要なこと――宝の地図の信ぴょう性。これについてクリスが報告したところだった。
クリスの報告から分かったこと。
それは地図に記されていたモンスターのような爪痕5か所のうち、4か所には宝はないということだ。様々な文献や古地図を調べたところ、そこが現在水没していたり(湖になっているが、宝があったことを示唆する文献あり)、道路になっていたり(道路工事中に既に宝が発見されと文献に記載あり)と、宝が既に発見されていることが、明らかになったのだ。
「クリストファー様。ちなみにその宝が何だったのかは、文献に書かれていたのですか?」
アンソニーの問いに、クリスは頷く。
頷いたが、宝についてここで明かすつもりはないと、クリスは宣言した。
「宝探しは、発見した時にこそ、喜びがあるだろう? 何があると分かっていて探すより、分からないで見つけて驚き、感動する。それこそが、みんなの求める『男のロマン』なのでは? 文献には、発見された宝について書かれていた。でも僕自身、読まないようにしたよ」
そうクリスに言われると、アンソニーは瞳を輝かせ「なるほど」と頷く。アミルも「確かにその方が、見つけた時の感動はひとしおだ」と納得する。
「僕も宝が何であるかは、見つけてからのお楽しみでいいと思う。僕達が求めるのは、ロマンだ。発見されるのが遺跡であろうと、金貨であろうと。見つけるまでの盛り上がる気持ち、それを感じられることが、大切だと思う」
ウィルは同意を示すと、アンソニーを見る。
「ウィンスレット辺境伯に、宝探しについて話した結果を教えてもらえるか?」
アンソニーが頷き、話題はウィンスレット辺境伯への報告に移る。夕食の前、父親であるウィンスレット辺境伯をつかまえ、宝探しの件を話したと、アンソニーは切り出す。そして……。
「父上に話したところ、『夏休みは毎年、どこにもお前たちを連れて行ってやることができない。でもアンソニーとジェシカは王都へ行ったり、ニーナも含めた三人でブルンデルクで行われる舞踏会に行ったりと、自分達で見聞を広めてきた。今年も好きにするといい。何より、学生生活最後の夏休みだ。後悔がないように過ごすといいだろう』そう言ってくれました」
つまり宝探しの冒険に行くことを、認めてくれたわけだ。
「さらにこうも言われました。『いつだって男は、心の中に宝の地図を持っている。その宝を求め、探しに行く勇気を、忘れてはいけない』って。父上もロマンが分かる人でした」
これにウィルとアミルは「うん、うん」と感慨深く頷いている。
「ただお兄様、注意もいただきましたよね」
ジェシカの言葉に、アンソニーは頷く。
ウィンスレット辺境伯もロマンチストでした~
続きは明日、11時台に『クリスが頑張れる理由』を公開します!
明日はプチサプライズ☆
引き続きよろしくお願い致します。

























































