29:デレる要素しかない!
集中して読んでいた……。た、確かに。そうかもしれない。
「そ、そうなの。思いがけず興味深かったけど、もう十分よ」
私としては最大限のさりげなさで、開いているページに両腕をのせる。
「そう。じゃあ、帰る準備をする?」
私が頷くと、クリスはテーブルの山積みの本を、片付け始めた。
ホッとして本を閉じ、そのまま本を棚に戻しに行く。
2冊の本を元に戻すと、大きく息をはく。
たまたま手に取った本だった。
でもこんな本を読んでいるとクリスが知ったら……。
勘違いしてしまうかもしれない。
浮気とか不倫に興味がある、とか。
他に好きな人がいるから、この手の本が気になる、とか。
クリスに余計な心配をかけたくない。
ひとまずバレないでよかった……。
それにしても。
ダメだと分かっているのに想う気持ちが止まらない、ただそれだけでこんなに人を惹きつけるとは……。まさにロミオとジュリエット効果ね。障害があると燃え上がる恋心。
「ニーナ?」
「!!」
両手いっぱいに本を抱えたクリスに声をかけられ、慌てて駆け寄る。
「私も手伝うわ」
「本当に? 助かるよ、ニーナ」
クリスが本と地図を戻すのを手伝い、閉館時間丁度で古文書図書館を出た。もう今の季節では、日没が夜の9時半ぐらいなので、外はまだまだ明るい。
「ニーナ」
図書館を出て、しばらくするとクリスが立ち止まった。
銀狼も立ち止まっている。
なんだかデジャヴを覚えた。
もしかしてこれは……。
さっきは思いがけず、フィッツ教頭に遭遇してしまった。
でも、今ここには間違いなく、クリスと私の二人だけ。
図書館の司書と職員は、閉館したからといって、すぐに帰れるわけではない。
だから、邪魔は入らない。
つまり……。
クリスは私からのキスを期待している……!
その甘美な事実に、胸が高鳴った。
どうしたってそこには、デレる要素しかない!
でもニヤニヤ顔で、キスはしたくない。
まずは落ち着こう。
盛大に深呼吸していると。
待ちきれなくなったクリスが……。
「もう、我慢できないよ、ニーナ」
あっという間に抱き寄せられ、クリスからキスをされてしまう。
その瞬間、一気に心拍数が上がる。
「今日は夕食の後、明日からの宝探しについて、みんなと話すだろう? 甘えられるのは、今しかないから」
そう言ったクリスは、再びキスをする。
このクリスのキスのタイミング、絶妙過ぎる!
結局、私からキスできないまま、馬車に乗り込むことになった。
クリスは、私からのキスを望んでいる。
絶対に、屋敷に戻るまでに、クリスにキスをしないと……。
そのタイミングを見計らうため、とんでもない集中力を発揮していたのだが。クリスはそれに気づき、優しく私を抱き寄せる。
「ニーナ、無理しなくていいよ。大丈夫」
「クリス……」
「ニーナからキスしてくれたら、勿論嬉しいよ。でも、それで無理はさせたくないからね」
クリスは本当になんて優しいのだろう。
これはちゃんと伝えておかねばならない。
「その、クリス。私……慣れていないから。うまく自分からキスできないの。私からキスをしないから、キスをしたいと思っていない……なんて思わないでね。クリスのことは大好きだから、いつだってキスはしたいわ」
言った瞬間から恥ずかしさがこみ上げ、思わずその胸に抱きついてしまう。
抱きつくのは……人前でなければ、こんなにスムーズにできるのに。
キスって難しいわ……。
「分かっているよ、ニーナ。こうやって抱きついてくれるだけで、十分伝わってくるから」
「クリス……」
嬉しくなって顔を上げると。
クリスは優しくキスをして、私をぎゅっと抱きしめた。
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