28:背徳の物語に熱中
久々に足を運んだ古文書図書館は、司書や職員以外はおらず、とても静かだった。クリスは古地図から古い文献などいくつもの地図と本をテーブルに並べ、宝の地図の検証を始める。
真剣に地図や本に目を落とすクリスは……。
はい、間違いないです。
超絶にカッコいい。
テーブルに置かれている本や地図を見ているのだから、当然、視線は下を見ている。
そうなると、切れ長のライラック色の瞳は、長い睫毛に隠れてしまう。さらにアイスシルバーのサラサラの前髪が、その睫毛さえ隠すようにしている様は……なんだか雅にさえ感じてしまうのだ。
さらに下を向くことで影ができ、鼻の高さが際立つ。きゅっと結ばれた唇は、綺麗な桜色していて、この唇とさっきキスをしたのかと思うと……。
急激にドクドクと心臓が大きな音を立て始め、落ち着かない。
静かな場所だけに、クリスに聞こえてしまうのではと、焦る。
なんとか静かに立ち上がると、クリスが顔を上げた。
あ……。
この眼差し。
いつ見ても、心がとろけそうになる。
デレ顔になる前になんとか微笑み、そのままトイレへ向かう。
あぶなかった。
クリスは真剣に調べ物をしているのに。
私は緩みきったデレ顔で、さらに涎まで垂れそうになっている。
トイレを出た後は、クリスの邪魔にならないよう、古書をいくつか選び、それに目を通すことにした。ミルキーはおとなしく、私のハンカチにくるまり、眠ってくれている。
手に取った古書には、古代魔法について書かれていた。
古代魔法は、既に失われた魔法について扱うため、授業としては、1年次に習うだけだ。だからさらっと学ぶぐらいだったので、この本に書かれている情報は、なかなか面白かった。
魔法とは違うが、聖なる力というものが昔はあったこと。聖なる力は女性にのみ宿り、彼女達は聖女と呼ばれていたこと。聖女の使う力はとても強力であること。でも聖女がその力を誤って使うと、世の中が乱れることなどだ。ただ、その聖女も既に失われており、失われた神々同様、過去の遺物となっているらしい。
聖女、か。
聖女と言えば、乙女ゲーでもよく登場する設定。でもマジパラに、聖女はいなかった。面白い情報だが、ふうーんで終了で、次の古書に目を通す。
!! こ、これは……。
騎士をモチーフにした古典恋愛物語が紹介されている!
騎士の君主の奥方への焦れるような恋の話とか、不倫関係の人妻と騎士が夫に邪魔される話とか、なんだか大変面白そうなお話が収録されている。この手の話で思い出すのは、前世で読んだ『アーサー王物語』に登場する、ランスロットとグィネヴィアの許されない恋だが。
その話を上回る、とんでもない古典恋愛物語に、思わず目が釘づけるになる。期末考査以来の集中力で読んでいると。
「……ニーナ、ニーナ」
ハッとして顔を上げると、クリスが笑顔でこちらを見ている。道ならぬ恋を真剣に読んでいたことに恥ずかしくなり、顔が熱くなる。
「ど、どうしたの、クリス?」
少し声が裏返ってしまう。
「そろそろ閉館時間だよ。僕の調べ物は終わった。ニーナはどう?」
……!
なんともうそんな時間なのね。
どれだけ背徳の物語に集中しているのだか、私は。
「私も、もう大丈夫よ」
「随分、集中して読んでいたみたいだけど?」
うっ。バレている。
いや、何を読んでいるかは、バレていないはず。
本を閉じたいが、表紙でバレるかもしれない。
か、隠したい……。
でも文字は細かいし、大丈夫。バレていない。
多分……(汗
続きは明日11時台に「デレる要素しかない!」を公開します。
デレデレ……(*/▽\*)
引き続きよろしくお願い致します!

























































