27: 瞬殺!破壊力のある一言
さらに、さらに。
避暑に来る貴族は、沢山の荷物を携えて、ブルンデルクに来るわけではない。必要なものは、現地調達。だから夏の間は、ブルンデルクの街のお店は、どこも連日フィーバ。それに加え、有名なドレスのお店、宝飾品店、日傘や帽子のお店なども、夏限定でブルンデルクに姉妹店をオープンさせる。
こうなるともう、夏の間、ブルンデルクに引きこもることになっても、なんら問題がないのだ。むしろ、遠路はるばる王都へ行かなくても、王都の食、文化を楽しめてしまう!
とはいえ、友人同士で「夏はどうされましたか?」「ええ、王都に一カ月ほど、滞在いたしましたわ」とか「タリア国を旅していましたの」という会話を繰り広げるのも、一種のステータス。ゆえに終業式と同時に、生徒はあっという間に学校から帰ってしまう。でもそのおかげで、クリスと私は堂々と手をつなぎ、古文書図書館まで行けるわけなのだけど。
「ねえ、ニーナ」
クリスが歩みを止め、私を見る。
止まったクリスにあわせ、銀狼も歩みを止めた。
古文書図書館の建物はもう見えており、右手には庭園があり、そこには赤、ピンク、白のダイアンサスが風に揺れていた。左手には水連が咲く池が、見えている。
急に立ち止まった理由が分からず、私はクリスに「どうしたの?」と尋ねた。
「もうみんな家に帰ってしまったよね。だから、いい?」
何がいいのか分からず、首を傾げると。
「可愛いね、ニーナ」
「!!」
クリスのライラック色の瞳が、甘く煌めいている。
これはもしかして……と思った時には抱き寄せられ、キスをされていた。
その瞬間。
気持ちが昂り、全身が喜びで震える。
こんなシチュエーション、前世から憧れていました!
本当は。
誰もいない放課後の校舎内でも、キスをしたい。
でも学校の敷地内で、こんな風にキスされるのは、漫画やアニメでもお馴染み! だが実体験は、もちろんこれが初めて! もうたまらない!! キュンキュンしてしまう~~~!
キスは終わっているのに、嬉しさでクリスに抱きついてしまった。クリスは驚きつつ、ちゃんと応えてくれて、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「ニーナも、キスしたかったの?」
クリスが耳元で甘く囁く。
恥ずかしいと思うが、どうせ誰もいないのだ。
思いっきり、甘えてしまおう!
「うん……」
すると。
「キスして、ニーナ」
えええええ!
くらっとして力が抜けてしまう。
クリスは、それは想定済みとばかりに、脱力する私の体を支える。
しばらくは腑抜けになってしまい、何もできない。
一方のクリスは、嬉しそうに私を抱き寄せている。
まさか、まさか、まさか。
クリス、そんな、私……!
あの、大魔法使いクリストファーが、キス待ちをしてくれている!?
これにはもう、感極まる。
どうしたって頬は緩むし、まともではいられない。
それなのに。
「ニーナ、もう待てないよ」
あああああ!
そ、そんな。
待てない、だなんて。
破壊力のある一言に、瞬殺される。
さっきキスをされた比ではない勢いで、心臓もバクバクしている。全身の血流が急激によくなり、緊張感が一気に高まる。
クリスの顔を見上げると。
既にクリスは目を閉じている。
思わずゴクリと喉が鳴る。
こ、ここは……据え膳食わぬは女の恥……。
そんな言葉ないけど、今はその覚悟。
決心すると、クリスの腕を掴み、少し背伸びをして……。
「ごきげんよう、大魔法使い見習いのリーヴスくん、そしてノヴァ伯爵家令嬢」
クリスと私は凍り付く。
フ、フィッツ教頭!
フィッツ教頭は、どうやら古文書図書館から出てきたようだ。フィッツ教頭は授業を教えていないが、確か昔は古代魔法で教鞭をとっていたと聞いたことがある。何か調べ物でもしていたのだろうか。
それよりも何よりも。
ま、まさか、私からキスをしようとする瞬間を見られるとは……。
一気に頭に血がのぼる。
だがクリスは、落ち着いた声で応じている。
「ごきげんよう、フィッツ教頭」
私も慌てて、「ごきげんよう、フィッツ教頭」とスカートの裾を掴む。
フィッツ教頭は頷くと、そのまま校舎の方へと戻っていく。
しばらくその姿を見送った後に。
クリスと私は顔を見合わせて笑い、再度恋人つなぎをして、古文書図書館へと向かった。
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