23:推しフィルターが異常起動
月曜日。
今日は終業式。
キリッと制服を着こなし、凛としたいところなのだが。
「ニーナさま、シャンとしてください。伯爵令嬢とは思えない顔に、なっていますよ!」
朝からケイトにそう指摘されるぐらい。
私の顔は、デレ顔になっていた。
でも、仕方がないのです!
あのアミルの誕生日パーティーで。
バースディーケーキをクリスと食べさせあいっこをしてから、私とのクリスの間には、ず~~~~~っと、甘い時間が流れていたのだから。
ケーキを食べた後。
しばらくダンスタイムが続いた。
ずっと招待客の相手をしていたので、クリスとはダンスをしていなかった。
だから。
休憩をしながら3曲。
クリスとダンスを楽しんだ。
そしてパーティーは、ギリス王国から届いたお祝いメッセージを紹介し、終了した。
パーティーの後は、お見送りだ。
出口でお土産兼お返しを、招待客へ、渡す。
皆、笑顔でエントランスへ向かい、馬車に乗り込み帰って行く。
料理の片付けは、召使いのみんながやってくれていた。でもホールの片づけは、6人でやる必要があったし、アミルの部屋に、沢山のプレゼントを運ぶ必要もある。
ただ、どれもドレスでする作業ではない。だから一旦ワンピースに着替え、男性陣もシャツにズボンというラフな姿で集合し、後片付けを始めた。
この片づけは、守護霊獣たちも手伝ってくれた。ウィルのイーグルは、器用にバルーンを花瓶からはずし、アンソニーのモズも、バルーンをくわえ、回収してくれる。プラジュと銀狼、そしてスノーボールも、ブーケを次々と片付けてくれた。ミルキーは……みんなを応援してくれている。
やることは満載だったが……。
その作業の最中、クリスがずっとそばにいてくれた。目が合うとあのライラック色の美しい瞳で微笑み、私の心をとかしてくれる。何か運んでいれば手伝ってくれたし、背が届かないものをとってくれたり。まだ綺麗な花を、私の髪に飾ってくれたり。
抱きしめたり、キスをしたりするわけではない。ただ、片づけを一緒にしているだけなのに。まるで抱きしめられ、キスをされているかのように、ずっとドキドキして、キュンキュンしていた。
間違いない。推しフィルターが異常起動していたのだろう。
片づけが終わると、アミルがプレゼントを開けるということで、みんなを部屋に呼んだ。クラスメイトからのプレゼントは、実にバラエティ豊か。1万ピースのパズルとか、ボトルシップ制作キット、アミルの瞳であるルビー色に染色されたオーストリッチの羽ペン。女性からは、手作りの焼き菓子のプレゼントが多い。
すべてを開封する前に、夕食の時間になり、その後は……。
私の部屋で、クリスと過ごす、甘々タイム。
推しフィルターの異常起動は、継続していた。よってクリスの一挙手一投足が、すべて素敵に思えてしまい、大変だった。しかも私がそんな状態とは知らないクリスは、こんな質問を私にした。
「そう言えば、僕のピアノの演奏は楽しめた、ニーナ?」
クリスは……軽い気持ちで尋ねたと思う。
でも推しフィルターが異常起動中の私は……。
いかにピアノを弾くクリスが素晴らしかったかを、細部に渡り、念入りに語った。まさかこんなに熱弁をふるうと思っていなかったクリスは……。
「ニ、ニーナ、そんなに細かいところまで……。すごいね。その観察眼は……」
さすがにコメントに窮していたが、その窮する姿さえ、輝いて見える。熱い視線をクリスに注いでいると……。
「今日のニーナはなんだか……。そうやって見つめられると、落ち着かないな」
クリスの頬が赤くなるのを見ると……。
もう夜でカーテンは閉じられていたのに。
クリスの周辺には光が舞い、キラキラと輝いている。
そんな風に見えていた。
照れる推しは、大好物。眼福です。
さらにクリスを見つめると、耐えきれなくなったようだ。
そのまま抱き寄せられた。
「ああ、ニーナ。僕の心臓が、もうもたないよ」
掠れた声でクリスは囁き……。
時間になるまでずっと、私を抱きしめ、溺愛してくれた。
そんな状態で、眠りについたのだから……。
朝からデレ顔でも、仕方ないのである。
そう開きなおったものの。
これからみんなと一緒に学校へ向かうわけで……。
いつまでもデレ顔でいるわけにはいかない。
顔を洗い、制服に着替えながら、少しずつ気持ちを、登校モードへと切り替えて行く。
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