20:分かっているけど甘えたい
エントランスに着き、男性陣の素敵な装いに、思わず目が釘付けになる。
まずはウィル。
白シャツにミントグリーンのスーツで、ネクタイとジレはオパールグリーン。もうこれはジェシカと並んだ時に、恋人同士にしか思えない感じだ。
アンソニーは白シャツにセルリアンブルーのスーツに、スカイブルーのタイ、白とスカイブルーの縦ストライプのジレと、清々しい空を思わせるコーディネート。
アミルは本日の主人公に相応しい、瞳の色と同じ、ルビー色のスーツ。白シャツに濃紺のタイ、細かいチェック柄のジレと、とにかくインパクトがある。
そしてクリス。
クリスの髪の色はアイスシルバーなので、どんな色でもあうのだが。今日の淡いオーキッド色のスーツとも、本当によくあっている。ネクタイは紫、ジレは紫とライラック色の縦ストライプ。全体的に品があって、ノーブルな雰囲気で、とっても美しい!!
クリスに目が釘付けになっていると……。
「ニーナ! なんて綺麗なのだろう……」
いつもだったら。
クリスは私の部屋に、エスコートのためにやってくる。だからお互いの姿を事前に確認し、夕食会や晩餐会、舞踏会に行くことができた。でも今回は、この離れのエントランスホールで、初めてお互いの姿を見ることになった。
その結果。
クリスは私のドレス姿に感動し、すぐにこちらへと駆け寄ってきた。ただ、ドレスに着替えた後は「キス禁止」「ハグ禁止」をケイトに散々言われていたので、抱きついたり、キスしたりこそしないのだが。
両手で私の腰を引き寄せ、思いっきり私のことを褒めてくれる。普段、みんなには見せないであろう、甘々なクリスの姿に、ウィル以外はビックリしている。
「クリス、みんな、いるのよ」
小声で伝えると、クリスは「うん……」と、分かっているけど甘えたいと、私を悶絶させるような表情を浮かべる。そんな顔をされると、今度は私がデレ顔になり、みんなの注目を集めてしまうと思ったその時。
「みんな、招待客が来たぞ」
ウィルの言葉に、クリスも私も顔を引き締めた。
◇
誕生日パーティーにやってきたアミルの同級生は、社交界デビューが済んでいる子、済んでいない子、半々ぐらいだった。既にデビューが済んでいる子は、楽団が演奏を始め、一曲目のカドリールが終わると。積極的にダンスを始めた。デビュー前の子は、緊張で固まっていたが……。今日は誕生日パーティーで、舞踏会ではない。だからウィル、アンソニー、クリス、アミル、ジェシカ、私の6人が、ダンスに誘ってあげることにした。
これにはもう、デビュー前の子は大騒ぎだ。
アミルの同級生は、皆、1年生。
ようやくコンカドール魔術学園での学生生活に、慣れてきたところだ。そしてこの学園で、私達6人のことを知らないわけがなく。
ウィルとダンスを始めた女生徒は、その顔を直視できず、何度も顔を上げるよう言われながら、必死にダンスを踊っている。
アンソニーにダンスを誘われた女生徒は、一見すると普通に踊っているように見えるが、緊張で顔面蒼白、視線はどこを見ているか不明な状態。
クリスとダンスをする女生徒は……とても楽しそうだ。クリスはしきりに話しかけ、その話が楽しいのだろう。女生徒は緊張することなく、笑顔でダンスを踊っている。
アミルとダンスする女生徒は……こちらはクラスメイトということで、多少の緊張は見られるし、踊り慣れていない感じはするが。なんとかダンスできている。
ジェシカとダンスする男子生徒は、もう顔が夢見心地。リードすることを忘れ、完全にジェシカにリードされながら、奇跡のような時間に浸っている。
私と踊っている男子生徒は……緊張しているのか、視線を合わさない。少し不貞腐れたような顔で、ぎこちないがちゃんとダンスしている。それに一応、リードもしようと頑張っていた。不器用ながら頑張ろうとするその姿に、心の中で「がんばれ!」とエールを送る。
全員一曲はダンスができたというタイミングで、改めてアミルが挨拶を行った。今日、来てくれたことへの感謝、楽しんで欲しいという気持ち、そして最後にとんでもない宣言をした。
おはようございます!
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
次は11時台に「クリスとピアノ」を公開します♪
引き続きよろしくお願い致します~
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