18:初めてのケーキ作り
日曜日。
ついにアミルの、誕生日パーティー当日だ。
午前中はとにかく料理とケーキの準備。
ジェシカも私も髪はお団子にし、装飾の少ないワンピースに白いエプロンという姿だ。
一方のクリス、アンソニー、アミルの三人は、白の上下のコック服にコック帽と、もうシェフにしか見えない。ウィルは、召使いを含めた全員を束ねる司令塔だから、白シャツに黒のズボンという姿で、集まった全員に、指示を出す。
「では11時までに、可能な限り料理を作り終える。その後は、クリス、アンソニー、アミル、ジェシカ、ニーナは着替えをして、11時50分にエントランスに集合だ。そこで招待客を迎える。料理人のみんなは、継続して料理の仕上げを頼む。時間になったらホールに料理を運んで欲しい。では始めよう」
ウィルが手を叩き、皆、一斉に動き出す。
この時ばかりは邪魔になってしまうと、守護霊獣たちは部屋で留守番だ。
「さあ、ニーナ。頑張りましょう。今日はバースディーケーキを、6つ作るから」
ジェシカの言葉に、思わずゴクリと唾を飲み込む。
正直、お菓子作りの経験なんて……ない。
というか、そもそも料理の経験だってないのだ。
あ、でも調理実習や飯盒炊飯の経験ならある!
……いや、それを経験値にいれてはダメだろう。
つまりはそんな感じなので。
いきなりバースディーケーキ6個には、緊張する。
「まずは土台となるスポンジケーキを作りましょう。オーブンを温めて、型にシートを敷いて、後はお湯を用意して」
言われるまま、オーブンに火を入れ、お湯を沸かす。さらに型にシートを敷く。
お湯が沸くと、バターを湯煎で溶かすように言われる。
それを終えると。
「ニーナ、ここからはまぜる作業よ。まずはボウルに卵とお砂糖を入れて、湯煎にかけながら、かき混ぜて頂戴」
言われた通り、かき混ぜる。
「ふるいを使って薄力粉をいれていって。今度は木べらを使ってかき混ぜるのよ。しっかりと混ぜてね」
しっかりと、ということなので、気合を入れてかき混ぜる。
前世にはハンドミキサーがあったが、ここには泡だて器しかないので、必死に頑張る。
「これでいいかしら?」
「もう少しね。泡だて器を持ち上げて、垂れた生地が数秒で馴染むぐらいまで、混ぜてほしいわ」
「了解」と返事をし、再びかき混ぜる。隣でジェシカも同じことをしている。
しばらく二人で、無言で混ぜていたが……。
「それでいいわ。そこにさっき溶かしたバターと、バニラエッセンスを加えて」
これでお終いかと思ったら、またかき混ぜる。
「完成よ、ニーナ。型に流し込みましょう」
型に入れた生地をオーブンで焼いている間に、再び生地を作る。
その繰り返しを3回して、スポンジケーキが完成した。
ジェシカの指導が完璧だったので、スポンジケーキはすべてふんわり綺麗に膨らみ、とても美味しそうだ。調理場に、美味しそうな焼き菓子の香りが広がり、クリスやアンソニー、アミルもこちらを見ている。
男性陣は男性陣で、巨大な肉の塊相手に、いろいろ頑張っているようだ。何度かアミルが「魔法を使っていいか?」とクリスに尋ね、クリスが答える前に、ウィルが却下していた。
ちなみにウィルは、小ホールの花の様子を既に確認してくれている。ホールの花は、魔法を使うまでもなく、ほぼすべて綺麗に咲いているという。これでホールの飾りつけは完璧だ。あとは料理とケーキ!
「さあ、ニーナ、今のうちに生クリームを作るわよ」
型から抜いたスポンジケーキを冷ましている間に、生クリームを作ったのだが……。スポンジケーキを作る以上に混ぜる作業が発生し、腕が泣いている。
腕を休める暇もなく、トッピングに使うベリーを洗う。そうしているうちに、スポンジケーキに生クリームを塗ることになる。
ナイフを使い、スポンジケーキに塗るということで、まずはジェシカの手順を見せてもらう。ジェシカが塗った生クリームは、均一でとても綺麗だ。側面も滑らか。この作業をする時のジェシカは、実に手際よく、スムーズだった。真似してやれば、当然同じように私もできるのかと思ったが……。
時間差で「彼女にするなら絶対ジェシカ!」を更新します!


























































