17:ニーナの笑顔が、僕のご褒美
その瞬間、私はクリスの手をがしっと掴んでいた。
ウィルは、ギターはちょっと違うかと言っていたのに。
まさかそのギターに、クリスが反応するなんて。
クリスとギター。
あわないわけではない。
でもクリスが演奏するなら……。
バイオリン。
もうその姿を想像しただけで、悶絶死しそうだ。
ライラック色の瞳を伏せ、流れるように体を揺らしながら、バイオリンを奏でる姿は……。
絵になる。特典映像として入れて欲しい。間違いないです。
でも……。
捨てがいたのはピアノだ。
クリスの細く長い美しい指が、鍵盤から紡ぎだすメロディーは……。
時に深淵で、時に情熱的で……。
あああああ、その姿を想像すると、キュン死しそうだ。
間違いなくこちらも絵になるし、ポスターにして部屋に飾りたい!
「ニーナ、どうしたの?」
「ク、クリス、ギターじゃなきゃダメ? バイオリンかピアノはどうかしら!?」
「バイオリンかピアノか……。でもギターは弾けないから。せっかくならギターをた」
「クリス!!」
興奮気味に名を呼ぶ私に圧倒され、クリスはライラック色の美しい瞳を大きく見開く。その驚いた表情のまま、私を見つめている。そんな表情で固まるクリスも、とんでもなくステキです!
「クリス、もしかしてバイオリンとピアノ、ひ、弾けるのかしら……?」
「まあ、一応一通りは……。そこまで上手いかは分からないけど。王宮ではみんな、練習させられたからね。ウィルもフランシスも、チェスターも」
チェスター……メリア魔法国第二王子のことだ。
いや、それは、今はいい。
それよりも……。
クリスは、バイオリンもピアノも弾けるなんて……!
奇跡!!
絶対に、絶対に、絶対に見たい!
「ニーナ?」
ハッとして我に返る。
つくづく思うのです、私。
目の前に本物のクリスがいるのだ。
運営に、特典映像化やポスター化を願う必要なんてない。
クリスに、直接お願いすればいいだけだ。
それに。
これは婚約者特権だ。
私がお願いすれば。
絶対にクリスは、ノーとは言わないはず!!
「クリスのバイオリンとピアノの演奏、聞いてみたいです……」
まるでおねだりをするセスのように、瞳を潤ませお願いすると。
クリスの頬がうっすらと色づく。
ぐっと自分の方に抱き寄せ、私を抱きしめる。
「もちろんだよ、ニーナ。明日のアミルの誕生日パーティーでは、ダンスも踊れるよう、楽器が用意され、演奏も行われる。ピアノも勿論ある。そこで僕が一曲披露させてもらおう。バイオリンは……僕の体型に合わせたものの方が、演奏しやすいからね。王都から取り寄せるよ。それまで待てるかい、ニーナ」
耳元で甘く囁くクリスに、体が反応してしまう。
心臓がバクバクいいだしている。
全身が熱くなってきた。
頬や耳が熱い……。
そんな体の反応を認識しながら。
うるうる瞳の効果を振り返る。
あのうるうる瞳が、ここまで効果を発揮するなんて。
まさか明日、皆の前でピアノの演奏を披露してくれるなんて!
うるうる瞳の効果は絶大。
今後は、これぞというお願いの時に、このうるうる瞳は使うことにしよう。
それにしても。
わざわざ王都から自分のバイオリンを取り寄せる……。
間違いない。
一応一通りはできる――これは謙遜した言い方だ。
きっとかなり、かなり上手いはず。
明日は誕生日パーティーということで、写真家もいる。
クリスがピアノを演奏する姿は、絶対に撮影してもらおう!
「明日、ピアノの演奏を聴けるだけでも満足よ、クリス。バイオリンは、もちろん王都から届いてからで構わないわ。私のためにわざわざありがとう、クリス」
「そんなことないよ、ニーナ。君が喜んでくれるなら、ピアノもバイオリンも、いくらだって演奏する。だってニーナの笑顔が、僕のご褒美だから……」
あああああ。
クリス、大好き!
もうこんなこと言われたら、どうしていいのか分からない!!
とにかく嬉しいのだと伝えたくて、クリスに思いっきり抱きつくと。
「ニーナ……」とクリスが切なそうにため息をもらす。そして私の気持ちに応えるように、クリスもまた、私を抱きしめる腕に力を込める。
私がデレデレなのは、デフォルト。
でも今は、クリスも私にメロメロだと思う。
だってキスが、いつもの3割増しで、甘い気がするから!
こうして誕生日パーティー前日の夜は、甘々で更けていった。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
もう……♡(*/▽\*)♡
このあと 12時台に もう1話公開します~

























































