16:おいで、ニーナ
すべて順調に見えるが……。
今、力を抜けば、すぐに腰が砕ける。
クリスはダージリンローズを喜び、大変優美な笑みを浮かべ、私を見ていた。その笑顔の美しさ、ライラック色の瞳から感じられる熱い想い。それを私は今、全身で受け止めている。
一見優雅、でも水面下で必死な白鳥同様、クリスの笑みと視線を受け流していたが……。
ソファに腰を下ろした瞬間、全身の力が抜け、背もたれに身を預けた。今日もよく頑張った、私。あの笑顔と眼差しに、腰を抜かさなかった自分を褒めてあげたい。
「おいで、ニーナ」
早速クリスが、私を抱き寄せる。
既に骨抜きにされ、ふにゃふにゃの私は、抱き寄せられると、そのままクリスに体を預けてしまう。
バラの香りもいいのですが。
クリスから香る、透明感のある清楚な香りもまた、たまらないのです……。
好物です。大好きです。
クリスがプレゼントしてくれたブーケの花を、ふんふんと鼻を近づけ、香りを楽しんでいたミルキーのように。私はその腕の中で、クリスの香りを楽しんでいた。
すると。
クリスはまるで私を猫のように撫でてくれる。
あー、クリスの飼い猫になれたら、溺愛されるかなぁ。
「ニーナは時々、猫みたいになるね。可愛いよ。でも……」
そう言ってクリスは、ダージリンローズをひと口飲むと。
「猫だったらこんなことはできないかな……」
紅茶で潤った唇で額にキスをされると、なんだかいつもより、興奮してしまう。さらにふわっとバラの香りも広がる。思わずクリスのライラック色のシャツを、ぎゅっと握りしめると。
「ニーナ」
熱い吐息と共に、ぎゅっと抱きしめられる。
さっきブーケがあって、ぎゅっとできなかったから。
その分のぎゅっが、今、反映されているみたい。
いつもより力強く、抱きしめられている……。
「ところでニーナ、明日のアミルの誕生日プレゼント、ウィル達は何を買ってきたんだい?」
「!!」
例の「男のロマン」と、そのロマンを探求した結果、天体望遠鏡、宝の地図、羅針盤、そしてギターが誕生日プレゼントに選ばれたことを話した。この話を聞いたクリスの一言目は……。
「なるほど」
え!?
もしかしてクリスも、中二病の「男のロマン」派!?
「その天体望遠鏡は、僕も欲しいな。星の運行は、地上に満ちるエネルギーに影響も与えるからね」
「え、どういうこと?」
「厳密には星と月と太陽、そのすべてが地上のエネルギーに影響を与えている。僕は必要に応じて、地上にあるエネルギーを魔力に変換している。でも雨や曇りの日中そして夜では、変換効率がとても悪くなる。その一方で、満月の時は変換効率がとてもよくなり、晴れの日中は、最高の変換効率になるんだよ。天体の観測は、これまで肉眼でやってきたけど……。そうだな。王宮の執務室には、天体望遠鏡を取り入れよう」
なんだ。そういうことか。
「男のロマン」に反応したわけではないと分かり、なんだかホッとする。
「でも宝の地図と羅針盤というのは……。ニーナに初めて会った時ぐらいの僕だったら、喜んで飛びついていたね。何せ自分でも宝の地図を作っていたぐらいだから。四聖獣のクリスタル探し=宝探し=宝の地図、みたいな感じでね」
まあ、その年齢なら、アリでしょう。
何せクリスは実際、冒険者のように旅もしていたのだから。
「それとギターか……。ギターなんて、弾いたことがないな。ギター……いいかもしれないね」
(*/▽\*)
続きは明日、11時台に「ニーナの笑顔が、僕のご褒美」を公開します!
プチサプライズありです☆
引き続きよろしくお願い致します。


























































