14:ブルンデルクの三大貴公子に異変!?
「随分大きい箱だけど、どんなプレゼントを購入したの?」
ジェシカが抱える花束も、かなり巨大だったが(まあ、5人の気持ちを込めた結果なのだろう)、それ以上にギフトの箱は大きかった。どれぐらい巨大かというと……。多分、私一人が入ることができるぐらいのサイズだ。当然、この部屋まで、アンソニーとウィルの二人がかりで運んでいる。
「ニーナ、この箱の中には、男のロマンが詰まっている」
箱を自身の部屋に置き、額の汗をぬぐうウィルが、なんともロマンチストな言葉を口にする。思わず笑ってしまうと。
「ニーナ、これは本当だよ。天体望遠鏡という夜空の星や惑星を見るためのとても高度なアイテム。ブルンデルクにある宝の位置を示した地図。黄金製の羅針盤。そして男のロマンを語る上で欠かせない、ギター。この4点が入っている」
アンソニーが真顔で説明するので、私はジェシカを見る。どうしてアミルのプレゼントが「男のロマン」になったの?と問うように。するとジェシカは……。
「ニーナ。私に16歳になる男子のプレゼント選びなんて無理よ。だから私は、花屋でこの花束の注文をしていたの。その間にウィリアム様とお兄様は、アミル様のプレゼントを買いに行ってくださったの」
なるほど。女子の意見が一切入らないと、こうなるのか。
真意は……このプレゼントを選んだ男子二人に聞くしかないだろう。
「アンソニー、ウィル、どうして天体望遠鏡、宝の地図、羅針盤、ギターになったの?」
「僕とウィリアム様は、魔術アイテム専門店『witchcraft』に足を運んだ。ニーナも知っているだろう?」
アンソニーに問われたそのお店。それはもちろん知っている。だが、あのお店で扱うのは、魔術書や魔法の授業で扱うようなアイテムだ。百歩譲って、天体望遠鏡、羅針盤は……あったとしよう。だが、ギターなんて、ましてや宝の地図なんて、扱っていないと思うのだが……。
「アミルはまだ1年生で、魔法について勉強する必要がある。だから魔法に役立つものをプレゼントにと思い、『witchcraft』に行ったんだ」
アンソニーが言うその方向性は、間違っていないと思う。確かにアミルは、魔力は強いが、覚えている魔法は限定されている。だから解術は苦手。これからもっと魔法を覚える必要があるのは、事実だ。その方向性でプレゼント選びをすれば、魔術書や授業で使う鉱石や植物を購入すると思うのだが……。
「ニーナ、『男のロマン』をアミルに贈ることになったきっかけは、僕にある。『witchcraft』の店主は、僕の身分が分かると、地下にある部屋に連れて行ってくれた。そこは、『男のロマン』溢れる、特別な客だけを通す部屋だった」
ウィルが、アンソニーに負けないぐらいの真面目顔で答えている。答えているが、さっぱり理解できない。でもウィルはとてもうっとりした顔をしている。さらにアンソニーもウィルに同意を示し……。
「あれはまさに、子供の頃に憧れた、秘密基地そのものでした。あそこに置かれているアイテムの数々は……僕も欲しいと思いましたよ」
うっとりした顔で、アンソニーまでそんなことを言い出しているが。秘密基地。この言葉でなんとなく、二人がいわんとすることは伝わってくる。でもそこにある物は、確かに子供の頃には宝物に見えるかもしれない。でも大人になったら……。宝物とは程遠い物に、思えるのだけど……。
「アンソニー、僕もそう思うよ。あそこで君が見つけた宝の地図。あれがすべてのスタートだ。まさかブルンデルクに宝が眠っているなんて。しかも店主曰く、この地図を描いたのは、とんでもなくハンサムで、しかもまだ若く、それでいて強い魔力の持ち主だったっていうじゃないか。まさにアミルを思わせる。運命だよ。男のロマンだ」
まさかウィルは……18歳にて、中二病を患っている……?
「それを言うならウィリアム様ですよ。あの宝の地図に共鳴できたのですから。そしてすぐにあの羅針盤を見つけました。あの宝の地図と羅針盤が並べられた時、男のロマンの完成形を見ました」
アンソニーまで、中二病みたいなことを言っている。一体全体、ブルンデルクの三大貴公子の二人は、どうしてしまったというの!?
「だがアンソニー、あの天体望遠鏡をすすめてくれた店主も、なかなかのものと思わないか?」
「ええ。あれには感心しました。『男のロマンは三つの世界にある。空、海、陸、その三つだ』という店主の言葉。あれは名言ですよね」
アンソニー、それは迷言では……とツッコミたくなるが、とりあえず黙って聞くことにする。ジェシカを見ると、私と同意見のようで、ただニコニコとウィルとアンソニーを見ている。
「まさに神髄をついた言葉だと思ったよ。本当は、天体望遠鏡、宝の地図、羅針盤でよかったのだが……」
「ウィリアム様、あのギターは間違っていませんよ。僕もあのギターはあってよかったと思います。天体望遠鏡で星空を眺めた後、焚火で沸かしたお湯で熱いコーヒーを飲む。そのコーヒーを飲みながら、ギターを奏でる。アミル様のそんな姿が想像できます」
……。全く持ってして想像できない。
アミルと言えば、アラビアンナイトなイメージ。楽器ならばギターではなく、ウードではないの? 琵琶みたいな撥弦楽器。オリエンタルムード満点な音色を奏でてくれる。これを弾くアミルなら想像できるのに。
本当にいろいろツッコミたくなる。
でもプレゼントを選びはウィル、アンソニー、ジェシカに一任したのだ。購入した後に、ツッコミをいれても意味がないだろう。ただ気になるのは……。アミルがこのウィルとアンソニーの中二病みたいな『男のロマン』にどう反応するか、だ。でもこればっかりは、明日、プレゼントしてみないと分からない。
そう、もうこれで前段の準備は整った。
後は明日、日曜日の朝、早起きして料理とバースディーケーキを作ればよかった。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
中二病に男のロマン。男子はいくつになっても子供なところがあるようです。
この後12時台に『もどかしそうな表情』を公開します~
クリスがなんだか焦れているようです(*/▽\*)

























































