8:……クセになるかもしれない。
私と目が合ったクリスは笑顔でこんな提案をしてくれた。
「違う種類のアイスケーキを買おう、ニーナ。それで、食べさせあいっこをしよう」
それはなんて甘い提案……!
想像しただけで、目が回りそうになるが、それは周囲の女子達も同じようで。私と同じ想像をした女子が、倒れそうになるお互いを支え合っている。
私も当然その甘い提案にやられ、再びクリスの胸の中に倒れこんだ。
「……うん。食べさせあいっこしたい」
「楽しみだね、ニーナ」
クリスの声は限りなく甘くて。
抱きついた胸からは、透明感のある清楚な香りがしている。
もうこのまま永遠にクリスに抱きしめていて欲しい……そう思っているうちに、順番が回ってきた。
クリスは、チョコレートに3種類のナッツが入っているアイスケーキを、私はストロベリーとラズベリーとブルーベリー入りのプレーンを選んだ。紙皿にのったアイスケーキと木製フォークを手に、噴水のそばへと向かう。
噴水は、周囲ぐるりがベンチになっていた。そのベンチに座り、様々なお店で購入した物を食べている人が沢山いる。もちろんアイスケーキを楽しむ人もいた。
私とクリスも、早速そのベンチに腰をおろす。
噴水の水音が聞こえ、鳩や雀の姿が見えていた。
銀狼はクリスの足元に待機し、ミルキーはポケットを出て、私の肩にのっている。
「ではニーナ、口を開けて」
クリスの前で口を開けるなんて……。
恥ずかしくて、ほんの少ししか開けられない。
それを見越したのか、クリスが私の口元に運ぶフォークには、アイスケーキが可愛らしいサイズで乗っている。この気遣いが……たまらない。
遠慮がちにアイスケーキを食べると……。
!
前世で知っていたアイスケーキと、全然違う。
私が知っているアイスケーキは。
アイスに見立てているケーキ、というかアイスをケーキの形にしただけだから、それなりに固いし、くちどけもゆっくり。
でもこのアイスケーキは。
とても軽い口どけ。
口の中に入れた瞬間に、ふわっととろけていく。
これはまるで……エアインチョコみたいだ。
とっても美味しい!
「もう一口食べる?」
クリスに尋ねられ、首を何度も縦に振る。
微笑んだクリスは、すぐにフォークにアイスケーキをのせる。
今度はさっきより口を開けていたので、少し大きめのアイスケーキが、口の中へ運ばれる。
またもやふわっととろけ、舌の上に残るナッツを噛みしめる。
これはあれだ! セミフレッドみたい。
イタリアの生まれの、生クリームとメレンゲを混ぜ合わせて作る、半解凍のアイスクリームみたいだ。
「クリスも食べてみて。食感がとても新鮮よ」
「うん。食べさせてくれる?」
「もちろんよ」
少し口を開けたクリスを見ると、なんだかドキドキしてしまう。
でもフォークにのっかるアイスケーキを、クリスが口にした瞬間。
その顔には、無邪気な笑みが浮かんだ。
あああ、これはまるで少年クリスだ!
思わず胸がキュンとする。
「本当だね。あっという間に口の中でとろけた。ベリーの味ともよく合うね」
「あ、今度は私もこっちを食べたいわ」
「いいよ。ニーナ、口を開けて」
その後はもう、お互いにアイスケーキを食べさせあい……。
ずっとドキドキして、キュンキュンするの、繰り返しだった。
この食べさせあいっこは……クセになるかもしれない。
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全30話
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えええ、それってどういうことですか!?
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まずは試し読みからでも。
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