7:クリスがいればすべてご褒美
動物庭園をじっくり見た後、クリスは街に新しくできたアイスケーキのお店に連れて行ってくれた。街の中心部にある、巨大噴水に面したそのお店は、本当にできたばかりのようだ。
クリスによると、なんと一週間前にオープンしたばかり。
そんなお店の情報を、クリスがちゃんと知っていることに驚いてしまう。しかも私を案内するためにこのお店を見つけてくれたのだと思うと……。自然と頬が緩む。
「さすがにこういうお店は予約ができないからね。ニーナ、行列に並ぶのでもいい?」
もちろんである。
クリスと二人で行列に並ぶ。
なんの文句があるだろう?
手をつなぎ、ラブラブしながら待てるのだ。
これが一人なら苦行だが、クリスがいればすべてご褒美。
完全に押しフィルターが機能しているのかもしれないが、そんなの関係ない。
ということで行列に並び、改めて様子を見ると。
行列に並んでいるのは、制服姿の女子学生が圧倒的に多い。
コンカドール魔術学園の制服を着た女子もいるようだが、他校の制服が目立つ。
つまり99%女子学生の行列に並ぶクリスは……。
ただそれだけでも目立つ。
その上で、この容姿。
ライラック色の瞳に息を飲む女子。サラサラのアイスシルバーの前髪にキュンしている女子。世界が明るくなるような笑顔に見惚れる女子。
多くの女子が、羨望の眼差しで、クリスを見ているのが分かる。
クリスの隣にいる私に対しては「誰?」「彼にとっての何?」「まさか恋人?」という視線がグサグサと刺さる。
クリスの横に立つと、こんな視線にさらされるのね。
顔見知りのクラスメイトの中で、私とクリスは婚約者同士と知られた上で過ごす時間とは、まったく違う。二人きりの放課後制服デート――それは、何も知らない女子からの、攻撃的な視線を受け止めることなのだと、改めて理解する。
本物の悪役令嬢ニーナなら、こんな視線をもろともせず、「フン」と鼻をならして堂々できるのだろうけど……。喪女出身の私としては、この針のむしろみたいな状況には、全く歯が立たない。
「ニーナ、どうしたの? 疲れてしまったかな?」
クリスが心配そうに、私の顔をのぞきこむ。
「そんな。疲れるなんて。せっかくのクリスとの放課後制服初デートだもの。元気いっぱい、大丈夫よ」
なんとか笑顔になろうとする私を見たクリスは。
当たり前のように、自分の胸の中へと抱き寄せる。
その瞬間。
周囲の女生徒が息を飲む気配が伝わってくる。
小さな悲鳴も、いくつか聞こえた。
みんなの前で、恥ずかしい……。
心臓もドキドキするし、全身が震えてしまう。
でも、こうやって抱きしめてくれると……。
なんだか落ち着く。
自分の胸の前で握りしめていた両手をはずし、ゆっくりとクリスの背へと回す。回した手が触れるクリスの背中は、しっかりと筋肉があり、細マッチョだったことを思い出させてくれる。
さらに完全に顔がクリスの胸に触れ、安心感が増していく。
「見て、指輪」「本当だ。左手の薬指」「あの二人婚約しているんだ」
クリスの鼓動と共に、女生徒達の囁きが聞こえてくる。
さらにぎゅっと抱きしめたクリスは、私の頭に顎をのせ「ニーナ、大好きだよ」と甘く囁く。
再び、ため息と小さな悲鳴が聞こえ、やがて……。
「相思相愛か~」「よく見ると、お似合いだね」「うん、いいな、美男美女で」
そんな声が聞こえ、さっきまでの不安が消えて行く。
顔をあげると、クリスがライラック色の瞳を細めて、笑顔になる。
――当たり前のように、自分の胸の中へと抱き寄せる。
――頭に顎をのせ「ニーナ、大好きだよ」と甘く囁く。
この2つのシーンの絵、見たいと思いませんか!?
クリスとニーナ、ラブラブ~(*/▽\*)
明日も11時台に『……クセになるかもしれない。』を公開します!
引き続きよろしくお願い致します。

























































